101 / 122
お楽しみ
しおりを挟む
真犯人を目の前にして罪の擦り付け合いが始まる。
すべての可能性を潰す過程で第一発見者のガイドさんに注目が集まる。
彼女の疑いを晴らそうとするも上手く行かずに失敗。逆に明後日な方向へ。
このままでは再び疑いの目が彼女に向けられることに。
黒木は唯一公正で公平なガイドさんを追い詰める。
「おいおい! よく考えてみろお前ら。第一発見者だぜ?
疑うのが当然だろ? 婆さんだってそう思うよな? 」
「ふん! 誰があんたに同意してやるものか! ふざけるんじゃないよ! 」
小駒さんの怒りは相当なもの。すべての元凶である黒木に味方するはずもない。
それは誰しも分かってること。黒木本人を除いては。
「おいお前ら…… 知らねえぞ。どうなっても知らねえからな! 」
黒木の指摘はもっともだが逆にだからこそ無関係だとも言える。
「黒木さん落ち着いて。もし彼女が本当に共犯者ならば第一発見者にはしません。
真犯人も馬鹿ではない。彼女から漏れる恐れもありますからね」
「逆にそう思わせるのが狙いだとも考えられるだろ探偵さんよ? 」
深読みの黒木はガイドさんに異常に固執している。
「それに料理人の田中さんも同様に犯人にも共犯にもなり得ません」
「なぜだ? 」
しつこい。自分にばかり疑いの目が向くものだから誰かに擦り付けたいんだろうが。
「根本的にあり得ないんですよ」
「根本的にだと? 」
「はい。アリバイもありますし共犯にするつもりなら関係者を選ばない。
あれだけ動機のある者を招待したんです。
もし私ならその辺の無関係な者に依頼すると思います。
心理的にもあり得ない。共犯者にするほどのメリットがない」
彼女の元恋人は黒木たちの詐欺によって自ら命を落とした。
そのことを知る真犯人なら共犯者にはしないはず。
「いやメリットならマスターキーがあるじゃねえか! 」
「ですからそんなものはあらかじめ作っておけばいいだけ。
ただこれではトリックでも何でもないですけどね。
真犯人はそんなつまらないトリックを使ったのではありません。
では再び第一の事件に戻ります」
一旦ここで切り見回す。
「海老沢氏殺害は真犯人を招いたが為に殺されたのではありません。
寝ているところを襲われ逃げ惑う中で殺害された。
その際使用したのは二号室の鍵。一号室の鍵にもなっていますからね。
殺害可能なのは二号室の山田さん。
それから密会の約束を取り付けたミサさん。
黒木さんも知り得たでしょうね。
その他の龍牙さんも奈良さんも小駒さんもマジシャンも盗み聞きすれば可能。
ただミサさんが山田さんを誘惑したのもほぼ偶然。二人が意気投合した結果。
コントロール出来るはずがないんです。
出来るとすればそれはミサさんと深い中で詐欺仲間の黒木さんのみ。
ミサさんを脅迫でもしてない限り不可能。
部屋割りも適当でミサさんも制御不能では観客は指を咥えて見てるしかない。
ですが演者の方はいくらでも……
おっと第一の事件はここまでにしておきましょう」
お楽しみは最後までとっておこう。
第二の事件に移る。
全員三号室へ集まるように指示。のろのろと隣の隣の部屋へ。
「ええ第二の事件は三日目の早朝。被害者はミサさん。
恐らく夜遅くに殺害されたのでしょう。それでは詳しくお願いします」
もう一度ガイドさんに発見までの経緯を語ってもらう。
「お客様より早く起きるよう寝坊しないようにと五時半に目覚ましを。
ですがその日は私よりも先の田中さんの目覚ましで五時に。
起きてすぐに田中さんは皆さんの朝食作りに。
目覚ましで私も一緒に起きることに。
田中さんはキッチンへ。私は見回りに。そこで発見したのが例のメモ。
食堂のテーブルの上にミサさんからのメモが」
「ちょっと待って。本当にミサさんからだったんですか? 」
「はい。走り書きのメモは彼女の席に。
メモには起こすようにと時刻が記されていました。
ミサさんからのご要望に応え三〇三号室へ。
そこで彼女の遺体を発見。悲鳴を。
悲鳴で皆さんが駆けつけた次第です」
ガイドさんによる振り返り。
これからも分かるようにバスガイドさんたちには時間的に犯行は不可能。
被害者はすでに冷たくなっていた。
もし二人が共謀しているとしても第一の事件が犯行不可能。
連続殺人である以上二人は真犯人にはなり得ない。
続く
すべての可能性を潰す過程で第一発見者のガイドさんに注目が集まる。
彼女の疑いを晴らそうとするも上手く行かずに失敗。逆に明後日な方向へ。
このままでは再び疑いの目が彼女に向けられることに。
黒木は唯一公正で公平なガイドさんを追い詰める。
「おいおい! よく考えてみろお前ら。第一発見者だぜ?
疑うのが当然だろ? 婆さんだってそう思うよな? 」
「ふん! 誰があんたに同意してやるものか! ふざけるんじゃないよ! 」
小駒さんの怒りは相当なもの。すべての元凶である黒木に味方するはずもない。
それは誰しも分かってること。黒木本人を除いては。
「おいお前ら…… 知らねえぞ。どうなっても知らねえからな! 」
黒木の指摘はもっともだが逆にだからこそ無関係だとも言える。
「黒木さん落ち着いて。もし彼女が本当に共犯者ならば第一発見者にはしません。
真犯人も馬鹿ではない。彼女から漏れる恐れもありますからね」
「逆にそう思わせるのが狙いだとも考えられるだろ探偵さんよ? 」
深読みの黒木はガイドさんに異常に固執している。
「それに料理人の田中さんも同様に犯人にも共犯にもなり得ません」
「なぜだ? 」
しつこい。自分にばかり疑いの目が向くものだから誰かに擦り付けたいんだろうが。
「根本的にあり得ないんですよ」
「根本的にだと? 」
「はい。アリバイもありますし共犯にするつもりなら関係者を選ばない。
あれだけ動機のある者を招待したんです。
もし私ならその辺の無関係な者に依頼すると思います。
心理的にもあり得ない。共犯者にするほどのメリットがない」
彼女の元恋人は黒木たちの詐欺によって自ら命を落とした。
そのことを知る真犯人なら共犯者にはしないはず。
「いやメリットならマスターキーがあるじゃねえか! 」
「ですからそんなものはあらかじめ作っておけばいいだけ。
ただこれではトリックでも何でもないですけどね。
真犯人はそんなつまらないトリックを使ったのではありません。
では再び第一の事件に戻ります」
一旦ここで切り見回す。
「海老沢氏殺害は真犯人を招いたが為に殺されたのではありません。
寝ているところを襲われ逃げ惑う中で殺害された。
その際使用したのは二号室の鍵。一号室の鍵にもなっていますからね。
殺害可能なのは二号室の山田さん。
それから密会の約束を取り付けたミサさん。
黒木さんも知り得たでしょうね。
その他の龍牙さんも奈良さんも小駒さんもマジシャンも盗み聞きすれば可能。
ただミサさんが山田さんを誘惑したのもほぼ偶然。二人が意気投合した結果。
コントロール出来るはずがないんです。
出来るとすればそれはミサさんと深い中で詐欺仲間の黒木さんのみ。
ミサさんを脅迫でもしてない限り不可能。
部屋割りも適当でミサさんも制御不能では観客は指を咥えて見てるしかない。
ですが演者の方はいくらでも……
おっと第一の事件はここまでにしておきましょう」
お楽しみは最後までとっておこう。
第二の事件に移る。
全員三号室へ集まるように指示。のろのろと隣の隣の部屋へ。
「ええ第二の事件は三日目の早朝。被害者はミサさん。
恐らく夜遅くに殺害されたのでしょう。それでは詳しくお願いします」
もう一度ガイドさんに発見までの経緯を語ってもらう。
「お客様より早く起きるよう寝坊しないようにと五時半に目覚ましを。
ですがその日は私よりも先の田中さんの目覚ましで五時に。
起きてすぐに田中さんは皆さんの朝食作りに。
目覚ましで私も一緒に起きることに。
田中さんはキッチンへ。私は見回りに。そこで発見したのが例のメモ。
食堂のテーブルの上にミサさんからのメモが」
「ちょっと待って。本当にミサさんからだったんですか? 」
「はい。走り書きのメモは彼女の席に。
メモには起こすようにと時刻が記されていました。
ミサさんからのご要望に応え三〇三号室へ。
そこで彼女の遺体を発見。悲鳴を。
悲鳴で皆さんが駆けつけた次第です」
ガイドさんによる振り返り。
これからも分かるようにバスガイドさんたちには時間的に犯行は不可能。
被害者はすでに冷たくなっていた。
もし二人が共謀しているとしても第一の事件が犯行不可能。
連続殺人である以上二人は真犯人にはなり得ない。
続く
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
尖閣~防人の末裔たち
篠塚飛樹
ミステリー
元大手新聞社の防衛担当記者だった古川は、ある団体から同行取材の依頼を受ける。行き先は尖閣諸島沖。。。
緊迫の海で彼は何を見るのか。。。
※この作品は、フィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
※無断転載を禁じます。
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。
さんざめく左手 ― よろず屋・月翔 散冴 ―
流々(るる)
ミステリー
【この男の冷たい左手が胸騒ぎを呼び寄せる。アウトローなヒーロー、登場】
どんな依頼でもお受けします。それがあなたにとっての正義なら
企業が表向きには処理できない事案を引き受けるという「よろず屋」月翔 散冴(つきかけ さんざ)。ある依頼をきっかけに大きな渦へと巻き込まれていく。彼にとっての正義とは。
サスペンスあり、ハードボイルドあり、ミステリーありの痛快エンターテイメント!
※さんざめく:さざめく=胸騒ぎがする(精選版 日本国語大辞典より)、の音変化。
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
残響の家
takehiro_music
ミステリー
「見える」力を持つ大学生・水瀬悠斗は、消えない過去の影を抱えていた。ある日、友人たちと共に訪れた廃墟「忘れられた館」が、彼の運命を揺り動かす。
そこは、かつて一家全員が失踪したという、忌まわしい過去を持つ場所。館内に足を踏み入れた悠斗たちは、時を超えた残響に導かれ、隠された真実に近づいていく。
壁の染み、床の軋み、風の囁き… 館は、過去の記憶を語りかける。失踪した家族、秘密の儀式、そして、悠斗の能力に隠された秘密とは?
友人との絆、そして、内なる声に導かれ、悠斗は「忘れられた館」に隠された真実と対峙する。それは、過去を解き放ち、未来を切り開くための、魂の試練となる。
インクの染みのように心に刻まれた過去、そして、微かに聞こえる未来への希望。古びた館を舞台に、時を超えたミステリーが、今、幕を開ける。

マッドハッターの気ままな事件簿~ドSな帽子屋は一人の少女を溺愛する~
狭山ひびき@バカふり160万部突破
ミステリー
★第1話★「フランソワーズちゃんがいないの!」――シルクハットにハムスターと鳩をのせた情報屋ヴィクトールは、国王オルフェリウスに王太后の猫フランソワーズがいなくなったから探せと命じられる。どうやら、行方のわからなくなった猫はほかにもいるようで――。★第2話★溺愛するスノウを連れて、シオンから借りた別荘にやってきたヴィクトール。1ヶ月、スノウと楽しくイチャイチャしてすごす予定だったのに、別荘付近の湖には魔物が出るという噂があってーー。
少しニヒルでドSな帽子屋《マッドハッター》の、いちゃいちゃ×ブラック×ミステリーコメディです。
【作品構成】
★第1話★お猫様はどこに消えた!?
★第2話★湖には魔物がすんでいる!?

捜査一課のアイルトン・セナ
辺理可付加
ミステリー
──アイルトン・セナ──
F1史上最速との呼び声も高いレーサーながら、危険な走法で
「いつか事故るぞ」
と言われ続け、最期はまさにレース中の事故で非業の死を遂げた天才。
そのアイルトン・セナに喩えられるほどのスピード解決。
僅かな違和感から、「こいつだ」と決め打ちかのように行う捜査手法。
それらが「いつか事故るぞ」と思われている様から
『捜査一課のアイルトン・セナ』
の異名を取った女、千中高千穂、階級は警部補。
お供の冴えない小男松実士郎を引き連れて、今日も彼女はあらゆる犯人たちのトリックを看破する。
バディもの倒叙ミステリー、開幕。
※『カクヨム』『小説家になろう』でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる