ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

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助手の冒険

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解決編突入。

薄曇り山。
現在、車で下山中。
「本当に助かりました。拗れる前に解決しまして」
当主を守ることは出来なかった。ただ速攻で事件解決できたのは運が良かったかな。
「お役に立つことが出来ずに申し訳ありません」
「いえいえ。それでご依頼料の件ですが…… 」
「はい分かっております。当主の旦那様が亡くなってしまった以上受け取れません。
そう言う契約となってましたのでどうぞお気遣いなく」
本来だったら交通費ぐらい請求してもいいのだが…… ついでに食費も。 
セコイことをすれば先生の顔に泥を塗ることになる。それだけは避けなくては。
日頃からそう言うことには口うるさく言ってくる人だったからな。
自分のことを棚に上げてよく言えたものだけどね。

それにしても先生たち今どこにいるんだろう? いつもこうだから困るんだよな。
二人もいてなぜ現場に辿り着けない?
あの時も…… 出会った時も前回もそうだった。
いや、まともに辿り着いたことは一度もないでしょう?
いつも僕が尻拭い。
体調不良だの風邪だの難事件だのと理由をつけてどうにか依頼人を納得させたっけ。
今回も結局姿を見せなかったし。本当に困るんだよな。
代わりにこの素人の助手が謎を解かなくてはいけない。無理がある。
そんな理不尽あり得るのか?  
一度だって推理を聞いたことがない。
一度だって依頼人の元へたどり着いたことがない。
こんな探偵いるものか。もはや探偵ではない。
ただのちょっとやばい人だ。

探偵の能力は上がっても先生が来なければ依頼人から信用を失う。
ほとんど何も教えられてないのに現場に放り出されるスパルタ式。孤独で大変。
しかも大事件だと逃げる訳にも行かない。依頼人も無理難題を押し付けるし。
今回は事件も単純で勝手に解決してただ代理してれば良かったから楽だったけどね。
先生は良い経験になるから我慢だと言う始末。
僕はあくまで助手で先生の代理でしかない。いや先生が来るまでのつなぎのはず。
本当にこれでいいのかな? 

「ではこれで失礼します」
下山して依頼人と別れる。
依頼人は親切にも駅まで送ると言ってくれたが丁重にお断りした。
たぶん先生たちがまだその辺を彷徨ってるはずだから。
見つけ出して一緒に帰らないと一生戻ってこない気がする。
いや待てよ…… 警察の話では事件に巻き込まれたとか。
大丈夫かな? 自業自得とは言え心配になる。
明後日探偵なんてふざけたこと言ってるから酷い目に遭うんだよ。
明後日探偵、華麗に散る。

断わったはいいがこの後どうしようかな。
ゆっくり観光でもするか。確か温泉があったよね。
今日はゆっくり一泊するのが良い。
先生たちには悪いけど先に体を休めるとしますか。
ではお先にお疲れ様でした。

あれここどこだっけ? そう言えば圏外なんだよね。
まあいいか。道を歩けばその内誰かと遭遇するでしょう。
気楽に行こう。どうせ仕事は終わって暇なんだから。
元々仕事は僅かで年中暇だけれど。それは僕のせいじゃない。

村に繋がるであろう下り道を歩くこと三十分。
ついに最初の村民と出会う。
まあこれがいわゆる第一村人って奴だ。
探偵小説の題名にもなったっけ。
第一村人はどうやらこの村のお爺さんのようだ。

「おーい! おーい! 」
「おお小僧か。どうした母ちゃんとはぐれたか? 」
あまりにも失礼でふざけたことを抜かす。
まさかお爺さんは僕を認識できない?
「あの…… 」
「うん何じゃ小僧? 」
「いえその…… 」
「はっきりせい! 相手してやりたいが儂とて忙しいのじゃ。
これからな馬鹿どもの世話をしなければならんからな」
興奮した様子のお爺さん。何をそんなに怒ることがあるのだろう。

「どちらへ行かれるんですか? 」
「小僧には関係ない。ほら早く母ちゃんところに行きな」
良い人だか悪い人だか判断がつかない。口が悪い人なのは間違いない。
ただそれ以前に人の話を聞く気がまったくなさそう。
危険な第一村人を発見してしまった。
会ったことを後悔するレベル。
ここは礼を言って次の人を探すことにしよう。

               続く
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