75 / 122
恨み
しおりを挟む
食堂はかつてないほどの熱気に包まれている。
黒木が詐欺グループの首謀者だと告白したにも関わらず撤回する暴挙。
招待客のほとんどが犯罪被害者の会のメンバーで彼を目の敵にしている。
恨みを持った複数の被害者相手に黒木は一人で戦わなければならない。
自業自得とは言え大変不利で危険な状況。
これ以上黒木を追及すれば暴発しかねない。
そもそも連続殺人が起きてる現場。皆冷静でなどいられない。
仲間を失った今の黒木に立ち向かえるだけの力が残されているだろうか?
探偵である我々はただじっと様子を見守るしかない。
今回のことで黒木が袋叩きに遭おうがどうなろうが口を出さないつもりだ。
「あんたはどうだい? 」
小駒さんは黒木の隣にいる山田さんに話しかける。
「申し訳ありません。ただの観光客ですからどうもその辺のことは詳しくなくて」
恐縮するばかりではっきりしない。
山田さんは唯一の部外者と言うことになってるがそれも本人の証言のみ。
殺されたのが詐欺グループなら犯罪被害の関係者と不用意に名乗れば疑われるだけ。
私が山田さんの立場なら敢えて告白しないだろう。
「もう他人の振りするのは止めた。副会長はこの人知ってるの? 」
龍牙に振る。小駒さんは取り繕うのは面倒とばかりに龍牙と話しだす。
「いえたぶん会にはいなかったかと思います」
龍牙によれば山田さんはメンバーではないとのこと。
「そんなことはどっちでもいいよ。怪しいのはこいつだ! 」
黒木犯人説を支持する。
「婆さんだと思って優しくしてやったら舐めやがって! 」
沸々と燃え上がる炎。ついに限界を超えた本物の黒木。
彼が暴れては誰も止めることは出来ない。
「うるさいよ! お前がやったんだ! 」
もう後には引けなくなったのか小駒さんは喧嘩腰。
火に油を注ぐスタイル。私には決して真似できない。
冷静にと山田さんとガイドさんが呼びかけるが意味をなさない。
私は最後まで見守ることに。
もちろん最悪の展開になる前にどうにか止めるつもりだが。
あーあせっかくの話し合いの場がまったく……
小駒さんに後を任せたのに自分から黒木を挑発するんだから。
「ではそろそろ立場を鮮明にしてもらいましょうか」
相棒が笑顔で迫る。
「はあ何を言ってるんだこのでくの坊は? 」
「お婆さんそれ以上の侮辱は許しませんよ」
いつものほほんとしてる相棒が真剣な表情で小駒さんに注意を与える。
やはり相棒はいつもと違う。まるで探偵のようだ。
この絶望的な雰囲気が人々を狂気に駆り立てて相棒さえも狂わせているのだろうか?
「立場ってのは何だい兄ちゃん? 」
黒木が薄ら笑いを浮かべる。
「その…… 僕はこれ以上無理」
勝手にバトンを渡される。
「そうするとお前は何か知ってるな? 」
相棒に迫る。
「ごめん。日記の最初だけだよ」
言い訳をするが私に言っても仕方がない。
「ちょっとあんたまさか人の部屋に入って漁ったね? 」
勘のいい小駒さんの追及に相棒も防戦一方。
「だから最初だけだって。とっても言えないけどね」
相棒はどうにか踏みとどまった。
もし小駒さんが犯人或いは共犯者でなかった場合はただの盗み読み。
プライバシーの侵害になる。それどころか窃盗罪にまでなる。
「いいよ別に。財産の半分を取られた恨みを書き連ねただけだからね。
私は何も悪いことしちゃいない。やったのはこいつさ! 」
再び黒木を指さす。
もうその目はただの恨みなどではなく怨念が宿っている。
「お前らに騙され奪われた者の恨みを晴らしてやる! 」
そう言うと黒木を目がけて光るものを投げつける。
「うわああ! 何だこの婆さん? 」
大慌ての黒木は相棒の後に回り込み頭を抱え震えてる。
まさかそんな情けない奴なのか?
光るものを取り上げるとそれは何とナイフではなくスプーンだった。
キッチンから拝借したのだろう。
「いいかい。こんなものじゃないよ。私たちの恨みはでっかいんだからね! 」
「まあまあ」
興奮状態の小駒さんを宥める。
「うるさい若造が! こいつを捕まえな! 」
無茶ばかり言う。
相棒がかき回したせいで最悪な雰囲気に。
さあこれからどうしようかな?
続く
黒木が詐欺グループの首謀者だと告白したにも関わらず撤回する暴挙。
招待客のほとんどが犯罪被害者の会のメンバーで彼を目の敵にしている。
恨みを持った複数の被害者相手に黒木は一人で戦わなければならない。
自業自得とは言え大変不利で危険な状況。
これ以上黒木を追及すれば暴発しかねない。
そもそも連続殺人が起きてる現場。皆冷静でなどいられない。
仲間を失った今の黒木に立ち向かえるだけの力が残されているだろうか?
探偵である我々はただじっと様子を見守るしかない。
今回のことで黒木が袋叩きに遭おうがどうなろうが口を出さないつもりだ。
「あんたはどうだい? 」
小駒さんは黒木の隣にいる山田さんに話しかける。
「申し訳ありません。ただの観光客ですからどうもその辺のことは詳しくなくて」
恐縮するばかりではっきりしない。
山田さんは唯一の部外者と言うことになってるがそれも本人の証言のみ。
殺されたのが詐欺グループなら犯罪被害の関係者と不用意に名乗れば疑われるだけ。
私が山田さんの立場なら敢えて告白しないだろう。
「もう他人の振りするのは止めた。副会長はこの人知ってるの? 」
龍牙に振る。小駒さんは取り繕うのは面倒とばかりに龍牙と話しだす。
「いえたぶん会にはいなかったかと思います」
龍牙によれば山田さんはメンバーではないとのこと。
「そんなことはどっちでもいいよ。怪しいのはこいつだ! 」
黒木犯人説を支持する。
「婆さんだと思って優しくしてやったら舐めやがって! 」
沸々と燃え上がる炎。ついに限界を超えた本物の黒木。
彼が暴れては誰も止めることは出来ない。
「うるさいよ! お前がやったんだ! 」
もう後には引けなくなったのか小駒さんは喧嘩腰。
火に油を注ぐスタイル。私には決して真似できない。
冷静にと山田さんとガイドさんが呼びかけるが意味をなさない。
私は最後まで見守ることに。
もちろん最悪の展開になる前にどうにか止めるつもりだが。
あーあせっかくの話し合いの場がまったく……
小駒さんに後を任せたのに自分から黒木を挑発するんだから。
「ではそろそろ立場を鮮明にしてもらいましょうか」
相棒が笑顔で迫る。
「はあ何を言ってるんだこのでくの坊は? 」
「お婆さんそれ以上の侮辱は許しませんよ」
いつものほほんとしてる相棒が真剣な表情で小駒さんに注意を与える。
やはり相棒はいつもと違う。まるで探偵のようだ。
この絶望的な雰囲気が人々を狂気に駆り立てて相棒さえも狂わせているのだろうか?
「立場ってのは何だい兄ちゃん? 」
黒木が薄ら笑いを浮かべる。
「その…… 僕はこれ以上無理」
勝手にバトンを渡される。
「そうするとお前は何か知ってるな? 」
相棒に迫る。
「ごめん。日記の最初だけだよ」
言い訳をするが私に言っても仕方がない。
「ちょっとあんたまさか人の部屋に入って漁ったね? 」
勘のいい小駒さんの追及に相棒も防戦一方。
「だから最初だけだって。とっても言えないけどね」
相棒はどうにか踏みとどまった。
もし小駒さんが犯人或いは共犯者でなかった場合はただの盗み読み。
プライバシーの侵害になる。それどころか窃盗罪にまでなる。
「いいよ別に。財産の半分を取られた恨みを書き連ねただけだからね。
私は何も悪いことしちゃいない。やったのはこいつさ! 」
再び黒木を指さす。
もうその目はただの恨みなどではなく怨念が宿っている。
「お前らに騙され奪われた者の恨みを晴らしてやる! 」
そう言うと黒木を目がけて光るものを投げつける。
「うわああ! 何だこの婆さん? 」
大慌ての黒木は相棒の後に回り込み頭を抱え震えてる。
まさかそんな情けない奴なのか?
光るものを取り上げるとそれは何とナイフではなくスプーンだった。
キッチンから拝借したのだろう。
「いいかい。こんなものじゃないよ。私たちの恨みはでっかいんだからね! 」
「まあまあ」
興奮状態の小駒さんを宥める。
「うるさい若造が! こいつを捕まえな! 」
無茶ばかり言う。
相棒がかき回したせいで最悪な雰囲気に。
さあこれからどうしようかな?
続く
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】


幽霊探偵は男の娘⁉︎
本田ゆき
ミステリー
俺は推理漫画が好きなごくごく普通の中学生、神宮翔。
そんな俺の目の前に突然、絶世の美少女が現れた!
しかし少女はもう死んでいる幽霊で実は男だと!?
そんな幽霊なのに全く怖くない男の娘に振り回されながら俺も事件に巻き込まれていく!?
こうなったら華麗に(?)事件を解決してみせよう!
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生。
遠山未歩…和人とゆきの母親。
遠山昇 …和人とゆきの父親。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる