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おかしな点

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確認すべき点。一つ目は遺体の位置。
二つ目は…… 鍵の有無と密室状況。

「不審な点は無かったんだよな? 」
念の為に相棒から確認を取る。
「うん。明らかな撲殺体。あるとすればなぜベットで殺されてないのかぐらい」
「そうだがどこで殺そうと関係ないだろ? 些細なことさ」
「そうかな…… もしトリックを使い気付かれず侵入できたらそのまま…… 
被害者の雑見はベットで殺されてるんじゃないかな」
相棒の鋭い指摘。閃いたらしい。
「なあそうだろおっさん? 」
目を覚ますことのない遺体に話しかける相棒。まさか狂ったか?

私もこれだけ長い間閉鎖された空間に閉じ込められる体験は初めて。
と言ってもただ下山できないだけなのだが。
相棒じゃないがどこか壊れても何ら不思議ではない。
それはガイドさんしかり被害者の会のメンバーしかり。黒木だってそうだ。
龍牙などは元から狂っていたような気もする。

「悪ふざけは良いから。続けろ! 」
つい相棒に強く当たってしまう。動じる彼ではないがやはり悪い気がする。
「やっぱりベットではないのがおかしい! おかし過ぎる! 異常だ! 」
細かいことに拘る。どうやら納得が行かないらしい。
そう言われると自分でもそんな気がしてくるから不思議だ。

「おかしいって何が? 」
「仮に犯人が来たことに気付いてもベットの近くで亡くなってなければおかしい。
被害者を追い詰めるのは難しくないのに遺体はどれもドアを開けてすぐのところ」
相棒は犯人だけでなく被害者もあまりにも不自然だと主張してる。
「いや遺体は単純に真犯人によって放置されたのかもしれないだろ」
遺体はほぼ同じ場所。
明らかに犯人が意図してやっているのだからあまり意味のない指摘。
「馬鹿だな。殺害現場はここだよ。引きずられた痕もないし血痕だってここだけ」
断定する。

「いやそれはお前の見立てで。警察が詳しく調べればもしかしたら」
「それは確かにそうだけどさ。どの部屋も同じ作り。広さも変わらない。
遺体はベットかその周り。窓際か机。フローリングあるいは畳」
殺害場所は限られていると主張。
「ちょっと待て! 血痕が無いからって何も殺害場所がこの部屋とは限らないだろ」
そう遺体があるからつい現場もここだと思うのが素人。
現場はまったくの別の場所の可能性もある。

「いやそれはないよ」
相棒は首を振る。
「どうして? 」
「第一の事件ならそれもあり得たかもしれないよ。でもそれ以降は有り得ないんだ」
自信満々の相棒。もう少し分かりやすく頼む。
「どうして? 別にどこだって…… 」
「分からないかな。少なくても昨日、今日会った赤の他人だよ。
本気で気が許せると思うの? 」
「俺はもちろん。きれいな人なら」
「それは僕も。でも僕たちは部外者。迷い込んだただのよそ者なんだ」
そこまで言うことないけどな。
「恨まれることも恨むこともない。だから堂々としてられるよね。
でも被害者は少なくても殺されるほどの何かを持っているでしょう。
それが恨みなのか情報なのかお金なのかはよく分からないけどさ。
被害者には殺されるだけのものがあった。しかも自覚してるんだよ。
そんな被害者が殺人事件が起こった日の夜遅くに無警戒に着いて行くかな」
確かに心理的にはあり得ないか。でもその可能性を排除するのは早すぎる気がする。

「それにさ。真犯人側にも何のメリットもないし物凄い面倒だと思わない? 」
「面倒? 」
「うん。殺害現場に呼び出し部屋に運んだらどれだけの手間が掛ると思う? 」
確かに…… 最終的には遺体を運ばなければならない。
真犯人には二度手間でしかない。
「絶対とは言わないけどさそんな面倒なことするなら現場でいいでしょう? 」
くそ…… 何も言い返せない。相棒の言う通りだ。

「待ってくれ! 脅されたってのはどうだ? 」
「だから…… その時殺害した方が早いでしょう」
まるで子供に言い聞かせるように丁寧だがその分気に喰わない。
いくら相棒とは言え探偵の私を舐めてるのか?

「結論。遺体は少なくても第二の殺人からは動かされてなく部屋で殺された」
相棒の鋭い指摘。ついに目覚めたか。
事件が立て続けに起き覚醒せざるを得なくなった。
真犯人にとって誤算だったのは我々が探偵だったこと。
必要以上に警戒していたのだろう。
そしてもっと誤算なのは相棒を本気にさせてしまったこと。
何年かに一度の覚醒。やる気が出て来たこと。
今までは何に対しても無気力だった相棒が目を輝かせている。
まあ私も長い付き合いなので本気の相棒を横で観察することもあった。

これで立ち位置が変わった。
今までは私が動いて相棒が嫌々だった。
これからは相棒の力を最大限引き出し事件解決に向かう。

               続く
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