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タイムリミット

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ドンドン
ドンドン
別れてすぐに引き返す。隠し通路の存在の確認するのを忘れていた。
もう鍵を閉めやがった。ものぐさの癖にそう言うところは細かい。
誰も襲いはしないさ。恨みを買った覚えでもあるのか?

「どうしたの? 鍵を閉めるのは常識でしょう? 」
相棒の口からそんな言葉が出るなんて。
「ははは…… 確認したいことがあってさ。急いでるんだ」
「それならガイドさんのマスターキーを使えばいいだろ? 」
「ああそうでしたね。私もすっかり忘れてましたよ探偵さん」
「そっか忘れてた…… 」
ガイドさんと顔を見合わせる。
そう確かに入るには中の者に開けてもらうか鍵を使うか。
またはガイドさんにマスターキーで開けてもらうの三択。
もしかしたら他にも方法はあるかもしれないが。

部屋の奥まで行くのが面倒なので相棒に確認してもらうことにした。
ここからでは良く見えないが確かブタの絵が飾ってあるはずだ。
遺体にばかり目が行き上はあまり見てなかったが。
「なあちょっとそのブタのところに立ってくれないか」
「これってブタなの? てっきり猪かと思ったよ」
「どっちでもいいから頼む」
相棒は欠伸をしながら歩いて行く。

「それで? 」
「絵の下の方に何かないか? 」
「ううん? ああ突起物みたいのがある」
「押してみてくれ」
「ヘイヘイ」
「どうだ? 」
「うん。動きそうなんだけど…… ダメだ動かない! 」
念の為引いてもらったがやはり動かないと。
どうやら鍵でロックされてるらしい。
とは言え隣に繋がる扉が存在することが確認された。

「もういい。それより凶器はやっぱり壺か? 」
「まったくもう何だそれ? 当たり前だろ」
「壺はまさかここの? 」
「ううん。たぶん犯人によって持ち運ばれたものだと思う。
断定はできないけど千田が壺の返却を断ったからね。
まあ当然だよ。犯人の為に凶器を置いておくほど間抜けじゃないさ」
相棒の話を信じるなら凶器はどこからか持ち運ばれたことになる。
大胆な犯人だ。いくら真夜中でもリスクが大きすぎる。

「ああ黒木は気にせずに壺を受け取ったよ。すべてあのお婆さんからの情報ね」
いつの間に小駒さんと仲良くなったのだろう。
私さえ掴んでない情報をいとも簡単に。
「そう言うのは逐一報告しろってば」
「だから今したよ」
それでは遅いんだけどな。
もうちょっとやることがあると言う相棒を残し食堂に。

各自で昼を済ます。
今日中に来ることになっている警察。
出来るだけ必要な情報を集めて引き継ぎをしたい。
だがいつになったら来るのやら。あまり当てにはできない。
「ああ探偵さん! 」
料理人が血相を変えてやってくる。
「どうしました? 」
「朗報です。間もなく土砂が完全に取り除かれるとのこと。
あと二時間もすれば救助が来るそうです」
大慌てで皆に知らせに行く。

これでいい。だがタイムリミットは二時間。
それまでに事件の真相を解き明かし真犯人を捕まえる。
そうすれば県警から感謝状だけでなく金一封がもらえるかもしれない。

「ああ助けが来るんだってね? 」
お婆さんが姿を見せた。
他の者は部屋に閉じこもったまま。
もう警察が来るまで籠城する方が安全と踏んだようだ。
昼間は狙われることはないだろうが念のため。
そして恐らく犯人はもう犯行を重ねることはない。
何となくだがそんな気がする。

「お婆さんお話があります」
「うんどうしたんだい? 」
お婆さんは動じない。
そうは言ったもののどう切り出したらいいものか。
「あなたには動機がありますよね」
「まだ疑ってるのかい。いくら犯人に仕立て上げようとしても無駄さ。
この小駒さんを舐めるんじゃないよ! 犯人なものか! 」
興奮した小駒さんを宥めるのは骨が折れそうだ。

「犯人とまでは言ってませんよ。ただ真犯人をご存じなんじゃないかと思いまして。
協力していただけませんか? 」
「私が? 買い被り過ぎさ。老い先短いただの老人さ。
そんな老人を捕まえて何をしようってんだい? 」
決して折れない鋼の精神。
「お願いします。ご協力お願いします」
「うるさい分かったよ。少しだけだからね」
ついに重い口を開く。

                   続く
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