59 / 122
三号室
しおりを挟む
三号室へ。ミサさんの部屋。
遺体はそのまま。
出来ればこれ以上近づきたくはなかった。だが現場百遍とも言うし。
新たな証拠でも見つかるといいのだが。視点を変えれば何か見えてくるかも。
「駄目ですよ。勝手なことをされてはこちらが困ります」
ガイドさんが必死に止めに入る。このツアーのすべてを任されてる責任者。
余計のことをされると後が大変だと言うが別に冷やかしに来たのではない。
探偵として手掛かりを得るためには仕方がない。
「まあまあ。どうです何か違和感はありませんか? 」
第二の事件も彼女が第一発見者。
「さあそう言われましても…… 」
詳しくないのでと断ろうとするガイドさん。
目の前には腐敗が始まっている遺体。
臭いが鼻をつく。
まだ悪臭とまではいかないが独特の臭いがする。
耐えきれずに吐いてしまう者もいると聞く。
私は探偵だから問題ないがガイドさんには辛いはずだ。
さあこれからどうしようか?
さすがに覆いを剥いで遺体を確認するだけの勇気はない。
鈍器で殴られた凄惨な状況。
これは彼女だけでなく私にも悪影響を与えかねない。
ひとまず保留し部屋を見回す。
「カエルだ」
壁には二匹のカエルの絵が飾ってあって何とも不気味。
オーナーの趣味が反映されてるのだろうがはっきり言ってセンスがない。
黄緑色の二匹の巨大なカエルがリアルに描かれてる。
「あのこれくらいで。もう充分でしょう? 」
止めさせようと無理矢理腕を引っ張るガイドさん。
「まさかカエルが苦手? 」
「そんなこと…… でも睨みつけてるようでずっとは見てられないんです」
どうやら生理的に受け付けないらしい。
たかが絵だが嫌なものは嫌だと譲らない。まあ事件もあったしな仕方ないか。
「分かりました。もう出ましょう」
これ以上ここにいれば私だっておかしくなりそうだ。
それは絵だけでなく死体そのもののマイナスオーラ―。
それくらい危険な場所だと認識すべき。探偵の自覚がないと言われても仕方がない。
「ほら早く戻りましょう! 」
強引に連れて行こうとするのでつい抵抗したくなる。
「待って! 何か浮かんだような…… 」
「いいから戻りましょう! これ以上は無意味です」
心の中まで覗けないがとにかく嫌がっているのは確かだ。
「はい。うわああ! 」
「きゃあああ! 」
バランスを崩しカエルの絵に触れてしまう。
そのまま勢いで絵で隠れていた取っ手部分を掴む。ギイイと言う音を立て扉が開く。
扉は隣の四号室へと繋がっていた。
どうやら隠し扉になっていたらしい。
扉を押し隣の部屋に。
わわわ……
突然の出来事に言葉が出ない。彼女も口をモグモグするがもはや聞こえない。
ただ勢いに任せて隣の部屋へ。
「どど…… どう言うことですかこれは? 」
「ご存じなかったと? 」
突然のことについ質問に質問で返してしまう。
「知ってるはずないじゃないですか! このホテルに来たのも初めてで。
こんな仕掛けがあるなんて夢にも思いませんでしたよ」
彼女は困惑した表情を見せる。
とても嘘をついてるようには見えない。どうやら本当らしい。
「本当に凄い仕掛けだ。冷や汗が止らないよ」
四号室は黒木に宛がわれている。
「黒木さん…… 」
ビックリしたであろう黒木を落ち着かせようとするが姿がどこにも見当たらない。
どこへ行ってしまったのだろう?
黒木の側には壁一面にオタマジャクシの絵がある。
うん。可愛らしいほのぼのとした絵。それだけでなく不気味さも備わっている。
やはりこちらにも取っ手があるが見えないように細工がされている。
部屋の構造に詳しいものか我々のようにハプニングか。
あるいは単純に絵に興味があった場合以外気付くことは無いだろう。
絵画はある程度離れて見るようにできている。
近眼が進んだ絵に精通した者でなければこのからくりは見抜けまい。
或いは掃除の時に偶然見つけてしまうぐらいか。
やはりただの旅行客が仕掛けに気付くのは不可能。黒木が気付いていたかは不明。
本人に直接聞く以外手ない。ただ奴のことだから正直に話すかは疑問だが。
それにしても黒木はどこへ行ったのだろう?
続く
遺体はそのまま。
出来ればこれ以上近づきたくはなかった。だが現場百遍とも言うし。
新たな証拠でも見つかるといいのだが。視点を変えれば何か見えてくるかも。
「駄目ですよ。勝手なことをされてはこちらが困ります」
ガイドさんが必死に止めに入る。このツアーのすべてを任されてる責任者。
余計のことをされると後が大変だと言うが別に冷やかしに来たのではない。
探偵として手掛かりを得るためには仕方がない。
「まあまあ。どうです何か違和感はありませんか? 」
第二の事件も彼女が第一発見者。
「さあそう言われましても…… 」
詳しくないのでと断ろうとするガイドさん。
目の前には腐敗が始まっている遺体。
臭いが鼻をつく。
まだ悪臭とまではいかないが独特の臭いがする。
耐えきれずに吐いてしまう者もいると聞く。
私は探偵だから問題ないがガイドさんには辛いはずだ。
さあこれからどうしようか?
さすがに覆いを剥いで遺体を確認するだけの勇気はない。
鈍器で殴られた凄惨な状況。
これは彼女だけでなく私にも悪影響を与えかねない。
ひとまず保留し部屋を見回す。
「カエルだ」
壁には二匹のカエルの絵が飾ってあって何とも不気味。
オーナーの趣味が反映されてるのだろうがはっきり言ってセンスがない。
黄緑色の二匹の巨大なカエルがリアルに描かれてる。
「あのこれくらいで。もう充分でしょう? 」
止めさせようと無理矢理腕を引っ張るガイドさん。
「まさかカエルが苦手? 」
「そんなこと…… でも睨みつけてるようでずっとは見てられないんです」
どうやら生理的に受け付けないらしい。
たかが絵だが嫌なものは嫌だと譲らない。まあ事件もあったしな仕方ないか。
「分かりました。もう出ましょう」
これ以上ここにいれば私だっておかしくなりそうだ。
それは絵だけでなく死体そのもののマイナスオーラ―。
それくらい危険な場所だと認識すべき。探偵の自覚がないと言われても仕方がない。
「ほら早く戻りましょう! 」
強引に連れて行こうとするのでつい抵抗したくなる。
「待って! 何か浮かんだような…… 」
「いいから戻りましょう! これ以上は無意味です」
心の中まで覗けないがとにかく嫌がっているのは確かだ。
「はい。うわああ! 」
「きゃあああ! 」
バランスを崩しカエルの絵に触れてしまう。
そのまま勢いで絵で隠れていた取っ手部分を掴む。ギイイと言う音を立て扉が開く。
扉は隣の四号室へと繋がっていた。
どうやら隠し扉になっていたらしい。
扉を押し隣の部屋に。
わわわ……
突然の出来事に言葉が出ない。彼女も口をモグモグするがもはや聞こえない。
ただ勢いに任せて隣の部屋へ。
「どど…… どう言うことですかこれは? 」
「ご存じなかったと? 」
突然のことについ質問に質問で返してしまう。
「知ってるはずないじゃないですか! このホテルに来たのも初めてで。
こんな仕掛けがあるなんて夢にも思いませんでしたよ」
彼女は困惑した表情を見せる。
とても嘘をついてるようには見えない。どうやら本当らしい。
「本当に凄い仕掛けだ。冷や汗が止らないよ」
四号室は黒木に宛がわれている。
「黒木さん…… 」
ビックリしたであろう黒木を落ち着かせようとするが姿がどこにも見当たらない。
どこへ行ってしまったのだろう?
黒木の側には壁一面にオタマジャクシの絵がある。
うん。可愛らしいほのぼのとした絵。それだけでなく不気味さも備わっている。
やはりこちらにも取っ手があるが見えないように細工がされている。
部屋の構造に詳しいものか我々のようにハプニングか。
あるいは単純に絵に興味があった場合以外気付くことは無いだろう。
絵画はある程度離れて見るようにできている。
近眼が進んだ絵に精通した者でなければこのからくりは見抜けまい。
或いは掃除の時に偶然見つけてしまうぐらいか。
やはりただの旅行客が仕掛けに気付くのは不可能。黒木が気付いていたかは不明。
本人に直接聞く以外手ない。ただ奴のことだから正直に話すかは疑問だが。
それにしても黒木はどこへ行ったのだろう?
続く
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ
ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。
【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】
なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。
【登場人物】
エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。
ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。
マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。
アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。
アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。
クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる