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人影
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皆で一か所に集まり夜を明かすと言う私の提案が賛否分かれ言い争いに発展。
ここに来て反対派が優勢に。それにしても絶対に助かるのになぜ反対するのか?
「私はお婆さんに賛成です。鍵をかければ問題ないのだから一緒の必要はない。
それに真犯人があの二人のどちらかならまったくの無意味」
龍牙が反対に回るだけでなく反対の方向に持って行こうとする。
だが三つとも密室だったことを踏まえれば龍牙の主張は意味をなさない。
「俺も反対だ。誰がこんな奴らと過ごせるかよ! 」
奈良が噛みつく。
「探偵さんには悪いですがそれならば私も反対です」
山田さんも反対に回った。
上手く行きそうだったのにやはり一筋縄ではいかないか。
残りはガイドさんと料理人と相棒。
彼らはどう考えているのだろうか?
「私はどちらでも構いませんが一応は女ですから一緒と言うのはちょっと…… 」
料理人が遠慮がちに意見を言う。絶体反対でもなさそうだが翻すとは考えにくい。
「そうですね。探偵さんには申し訳ないですが皆で過ごすのは現実的ではないかと」
頼りのガイドさんにもそっぽを向かれた。
これは誤算。お客のことを考えれば優先順位は安全になるはずなのに。
本来誰であれ三人も殺されればわらを掴む思いで探偵に縋りつくはず。
こんな状況でも素直に聞き入れないとは人の心は本当に複雑だ。
出来たらワガママを言わずに素直に従ってくれないか。
最後に…… ああ聞くまでもないか。
相棒はどっちでも構わないと欠伸をしながら答える。
相棒さえ説得できない不甲斐なさ。もうどうでも良くなってくる。
「分かりました。皆さんがそうおっしゃるなら好きにしてください。
但し命を狙われようと疑いを掛けられようと自己責任ですからね」
いくら探偵とは言えお願いしかできない。強制はできないのだ。
夕食は静かなものだった。
それぞれ好きな缶詰を選びパックご飯を平らげる。
それで腹が膨れなければ栄養補助食にクッキーとチョコでどうにでもなる。
これは昨夜もそうだし昼も食べた。
明日までの辛抱とは言え飽きつつある。
もちろん贅沢言ってられない。生き延びるためだ。
「うまいうまい! 」
相棒が夢中で貪る。
さすがに奴だって飽きたと思うがそんな素振りを一切見せない。
食べ過ぎで腹痛を起こさなければいいが。
「どうぞこちらも」
情けないことに恵んでもらおうとしている。
「ふう。もういいっす」
一人だけ自由でいい。
私なんか昨日から食欲がないのにこいつはいつも通り。やはり肝が据わっている。
見回すと皆食事を終えようとしている。
私語もせずにただ黙々と食べている中で相棒だけが笑っている。かなり異質な存在。
食事を終えると日課の見回りに。
黒木と千田の部屋を行き来する。
「きゃああ! 」
すぐに悲鳴があがる。まさか何かあったのか?
不安な気持ちを抑え悲鳴の聞こえた方へ。
「どうしました? 」
従業員の二人が指さしながら何事か喚いている。
「どうしたんですか? 」
「影が…… 」
震えた声で変な人影を見たと言い張る二人。
「探偵さんお願い! 」
「ちょっと…… 抱き着くのは…… 」
あまりにも強引なやり口。
「お願い! お願い! 離さないで! 」
一度恐怖を感じるとダメらしい。
影が襲ってくると本気で思ってるらしい。
「落ち着いてください。あれはただの影で実態はありません」
いくら違うと言っても聞き入れようとはしない。
一体何がどうなってるのか?
落ち着くまでそばにいてやることにした。
そう狙われてるのは黒木や千田とは限らない。
真犯人の狙いは彼女たちなのかもしれない。
だからあれほど食堂で夜明けまでと言ったのに聞き入れないから怖い目に遭うのだ。
今からでも遅くない。一緒に。
「もう大丈夫ですよ」
冷静に。冷静に。
彼女たちに危害が加わることはないと説得する。
もちろんそんなこと聞くはずもなくいつまで経っても服を引っ張り離そうとしない。
いつになったら解放してくれるのかな? 見回り中なんだけど。
嬉しいような…… やっぱり嬉しいような……
泣く泣く別れて見回りに戻る。
続く
ここに来て反対派が優勢に。それにしても絶対に助かるのになぜ反対するのか?
「私はお婆さんに賛成です。鍵をかければ問題ないのだから一緒の必要はない。
それに真犯人があの二人のどちらかならまったくの無意味」
龍牙が反対に回るだけでなく反対の方向に持って行こうとする。
だが三つとも密室だったことを踏まえれば龍牙の主張は意味をなさない。
「俺も反対だ。誰がこんな奴らと過ごせるかよ! 」
奈良が噛みつく。
「探偵さんには悪いですがそれならば私も反対です」
山田さんも反対に回った。
上手く行きそうだったのにやはり一筋縄ではいかないか。
残りはガイドさんと料理人と相棒。
彼らはどう考えているのだろうか?
「私はどちらでも構いませんが一応は女ですから一緒と言うのはちょっと…… 」
料理人が遠慮がちに意見を言う。絶体反対でもなさそうだが翻すとは考えにくい。
「そうですね。探偵さんには申し訳ないですが皆で過ごすのは現実的ではないかと」
頼りのガイドさんにもそっぽを向かれた。
これは誤算。お客のことを考えれば優先順位は安全になるはずなのに。
本来誰であれ三人も殺されればわらを掴む思いで探偵に縋りつくはず。
こんな状況でも素直に聞き入れないとは人の心は本当に複雑だ。
出来たらワガママを言わずに素直に従ってくれないか。
最後に…… ああ聞くまでもないか。
相棒はどっちでも構わないと欠伸をしながら答える。
相棒さえ説得できない不甲斐なさ。もうどうでも良くなってくる。
「分かりました。皆さんがそうおっしゃるなら好きにしてください。
但し命を狙われようと疑いを掛けられようと自己責任ですからね」
いくら探偵とは言えお願いしかできない。強制はできないのだ。
夕食は静かなものだった。
それぞれ好きな缶詰を選びパックご飯を平らげる。
それで腹が膨れなければ栄養補助食にクッキーとチョコでどうにでもなる。
これは昨夜もそうだし昼も食べた。
明日までの辛抱とは言え飽きつつある。
もちろん贅沢言ってられない。生き延びるためだ。
「うまいうまい! 」
相棒が夢中で貪る。
さすがに奴だって飽きたと思うがそんな素振りを一切見せない。
食べ過ぎで腹痛を起こさなければいいが。
「どうぞこちらも」
情けないことに恵んでもらおうとしている。
「ふう。もういいっす」
一人だけ自由でいい。
私なんか昨日から食欲がないのにこいつはいつも通り。やはり肝が据わっている。
見回すと皆食事を終えようとしている。
私語もせずにただ黙々と食べている中で相棒だけが笑っている。かなり異質な存在。
食事を終えると日課の見回りに。
黒木と千田の部屋を行き来する。
「きゃああ! 」
すぐに悲鳴があがる。まさか何かあったのか?
不安な気持ちを抑え悲鳴の聞こえた方へ。
「どうしました? 」
従業員の二人が指さしながら何事か喚いている。
「どうしたんですか? 」
「影が…… 」
震えた声で変な人影を見たと言い張る二人。
「探偵さんお願い! 」
「ちょっと…… 抱き着くのは…… 」
あまりにも強引なやり口。
「お願い! お願い! 離さないで! 」
一度恐怖を感じるとダメらしい。
影が襲ってくると本気で思ってるらしい。
「落ち着いてください。あれはただの影で実態はありません」
いくら違うと言っても聞き入れようとはしない。
一体何がどうなってるのか?
落ち着くまでそばにいてやることにした。
そう狙われてるのは黒木や千田とは限らない。
真犯人の狙いは彼女たちなのかもしれない。
だからあれほど食堂で夜明けまでと言ったのに聞き入れないから怖い目に遭うのだ。
今からでも遅くない。一緒に。
「もう大丈夫ですよ」
冷静に。冷静に。
彼女たちに危害が加わることはないと説得する。
もちろんそんなこと聞くはずもなくいつまで経っても服を引っ張り離そうとしない。
いつになったら解放してくれるのかな? 見回り中なんだけど。
嬉しいような…… やっぱり嬉しいような……
泣く泣く別れて見回りに戻る。
続く
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