28 / 122
長期戦
しおりを挟む
残るは黒木と従業員の二人。
黒木からはこれ以上聞く必要もないだろうし教えてもくれないだろう。
よしまずは料理人から。
「探偵さん」
一人ずつと言ったのに二人一緒に入って来る。
「たた…… 大変です! 」
血相を変えた料理人と早口で聞き取りずらいガイドさん。
「落ち着いて二人とも。一体どうしたと? 」
「それが迎えのバスが来られないそうです」
時刻は二時半過ぎ。
三十分もすれば迎えが来るはずだった。
だが天候が悪化し昼前からドスグロ山を覆う黒い雲が。
外はまるで夜のように暗く雷雨となっている。
「何だって? 」
緊急事態発生。
「だったら警察のヘリは? 」
「それがまだ天候が安定しないので出せないそうです」
「そんな。もうどっちでもいいから歩いてくれば? 」
実際我々は登って来た。だから不可能ではないはず。
「いえそれが地元の判断では難しいともう少し待つように指示がありました」
大雨の影響で土砂崩れが発生したらしい。
それにより登山道の一部が土砂で埋まり通行止めとなった。
これで下からも上からも救出不可能。
まったく警察は何をやってるんだ。昨日から要請してるのに。
「おかしくないか? まるで何者かの意志が働いてるような絶妙なタイミング」
二人の態度もおかしかった。
じっと二人を見る。
「ごめんなさい! 」
料理人が頭を下げる。
「実はお客様が亡くなったことは伏せて要請したんです。閉じ込められたとだけ」
「おいおい冗談だろ? なぜそんな大事なことを? 」
「オーナーからの指示です。それ以上はちょっと…… 」
やはり従業員の二人は何か隠してるようだ。
「オーナーってまさか? 」
「分かりません。どうしよう…… 」
動揺するガイドに寄り添う料理人。
ここで言うところのオーナーとはこの舞台を用意した真犯人に違いない。
オーナーは悪い噂が立たないように穏便に済ますため指示。そう考えるのが普通。
だが実際は事件の発覚を遅らせることと我々を閉じ込める為だった。
彼女たちから聞いた時にその辺のことをしっかり確認しておくべきだった。
すべてを彼女たちに任せたのが仇となった。
手となり足となり動いてくれる協力者の二人を信用し過ぎてしまった。
彼女らにとってはオーナーの命令が絶対なのは分かり切ったことではないか。
雇い主と探偵では比べるまでもない。
くそ痛恨のミスだ。
一体私は何をやっていた?
「急いでもう一度…… いや私が通報する」
これ以上人任せにはできない。
彼女たちを説得して警察に連絡を取る。
「閉じ込められてるってね。かわいそうに。三日分ぐらいは食糧があるんでしょう。
だったら堪えてくれや。こっちも手が足りんのでな」
呑気な警察。緊張感が感じられない。
「お願いです。早く来てください! 」
「ははは…… よくあることだから我慢してね。うん? 人が死んだ?
しかも殺された? 二人も? 」
慌てた様子。どうやらようやくドスグロ山で何が起きてるか理解したらしい。
「早く来てください。まだ人が殺される恐れがある」
「分かった。待ってろ! 」
天気が回復次第ヘリを送るそうだ。
土砂崩れで道が塞がってるのでヘリ以外は不可能。
外はどんどん雷雲が発達している。
さすがはドスグロ山。これは長期戦を覚悟しておかなければ。
もう一泊することになりそうだ。これは大きな誤算。
ピクニックなら嬉しい誤算。
海外旅行でも大歓迎。
あちらの都合なら金もかからない。補償もあるはずだ。
だがこれはどうだろう?
補償どころか命の保障もない。
ああやってられない。
登る山を間違えなければこんな大事件に巻き込まれずに済んだのに。
いくら探偵でも依頼料もなしにやる気なんかでない。
せめて事件解決に報奨金でもあればなあ。
たぶん感謝状で済ますんだろうな。
ついにやる気を失った探偵。
ドスグロ山に閉じ込められた者たちの最後の希望は失われる。
もういいんだ。大人しく寝てよ。
部屋に籠りふて寝する。
続く
黒木からはこれ以上聞く必要もないだろうし教えてもくれないだろう。
よしまずは料理人から。
「探偵さん」
一人ずつと言ったのに二人一緒に入って来る。
「たた…… 大変です! 」
血相を変えた料理人と早口で聞き取りずらいガイドさん。
「落ち着いて二人とも。一体どうしたと? 」
「それが迎えのバスが来られないそうです」
時刻は二時半過ぎ。
三十分もすれば迎えが来るはずだった。
だが天候が悪化し昼前からドスグロ山を覆う黒い雲が。
外はまるで夜のように暗く雷雨となっている。
「何だって? 」
緊急事態発生。
「だったら警察のヘリは? 」
「それがまだ天候が安定しないので出せないそうです」
「そんな。もうどっちでもいいから歩いてくれば? 」
実際我々は登って来た。だから不可能ではないはず。
「いえそれが地元の判断では難しいともう少し待つように指示がありました」
大雨の影響で土砂崩れが発生したらしい。
それにより登山道の一部が土砂で埋まり通行止めとなった。
これで下からも上からも救出不可能。
まったく警察は何をやってるんだ。昨日から要請してるのに。
「おかしくないか? まるで何者かの意志が働いてるような絶妙なタイミング」
二人の態度もおかしかった。
じっと二人を見る。
「ごめんなさい! 」
料理人が頭を下げる。
「実はお客様が亡くなったことは伏せて要請したんです。閉じ込められたとだけ」
「おいおい冗談だろ? なぜそんな大事なことを? 」
「オーナーからの指示です。それ以上はちょっと…… 」
やはり従業員の二人は何か隠してるようだ。
「オーナーってまさか? 」
「分かりません。どうしよう…… 」
動揺するガイドに寄り添う料理人。
ここで言うところのオーナーとはこの舞台を用意した真犯人に違いない。
オーナーは悪い噂が立たないように穏便に済ますため指示。そう考えるのが普通。
だが実際は事件の発覚を遅らせることと我々を閉じ込める為だった。
彼女たちから聞いた時にその辺のことをしっかり確認しておくべきだった。
すべてを彼女たちに任せたのが仇となった。
手となり足となり動いてくれる協力者の二人を信用し過ぎてしまった。
彼女らにとってはオーナーの命令が絶対なのは分かり切ったことではないか。
雇い主と探偵では比べるまでもない。
くそ痛恨のミスだ。
一体私は何をやっていた?
「急いでもう一度…… いや私が通報する」
これ以上人任せにはできない。
彼女たちを説得して警察に連絡を取る。
「閉じ込められてるってね。かわいそうに。三日分ぐらいは食糧があるんでしょう。
だったら堪えてくれや。こっちも手が足りんのでな」
呑気な警察。緊張感が感じられない。
「お願いです。早く来てください! 」
「ははは…… よくあることだから我慢してね。うん? 人が死んだ?
しかも殺された? 二人も? 」
慌てた様子。どうやらようやくドスグロ山で何が起きてるか理解したらしい。
「早く来てください。まだ人が殺される恐れがある」
「分かった。待ってろ! 」
天気が回復次第ヘリを送るそうだ。
土砂崩れで道が塞がってるのでヘリ以外は不可能。
外はどんどん雷雲が発達している。
さすがはドスグロ山。これは長期戦を覚悟しておかなければ。
もう一泊することになりそうだ。これは大きな誤算。
ピクニックなら嬉しい誤算。
海外旅行でも大歓迎。
あちらの都合なら金もかからない。補償もあるはずだ。
だがこれはどうだろう?
補償どころか命の保障もない。
ああやってられない。
登る山を間違えなければこんな大事件に巻き込まれずに済んだのに。
いくら探偵でも依頼料もなしにやる気なんかでない。
せめて事件解決に報奨金でもあればなあ。
たぶん感謝状で済ますんだろうな。
ついにやる気を失った探偵。
ドスグロ山に閉じ込められた者たちの最後の希望は失われる。
もういいんだ。大人しく寝てよ。
部屋に籠りふて寝する。
続く
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園最弱のバイト君、突然のハーレム生活!? 〜ハイテンションで逆襲の日々〜
邪冨†社不魅
ミステリー
ワオッ!ワオッ!ワオッ!驚愕の短編集がここに誕生!君はこの不安感を耐えられるか!? 一編一編が、あなたの心の奥底に潜む恐怖を引き出す!ハイテンションな展開に、心臓がバクバク!ドキドキ!ギャアアアア!
おい
お前
これを読んでるお前だよ
なあ
君に頼がある
Twitterをフォローして拡散して印刷して壁に貼ってチラシにして配りまくってくれ
瞳に潜む村
山口テトラ
ミステリー
人口千五百人以下の三角村。
過去に様々な事故、事件が起きた村にはやはり何かしらの祟りという名の呪いは存在するのかも知れない。
この村で起きた奇妙な事件を記憶喪失の青年、桜は遭遇して自分の記憶と対峙するのだった。
彩霞堂
綾瀬 りょう
ミステリー
無くした記憶がたどり着く喫茶店「彩霞堂」。
記憶を無くした一人の少女がたどりつき、店主との会話で消し去りたかった記憶を思い出す。
以前ネットにも出していたことがある作品です。
高校時代に描いて、とても思い入れがあります!!
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
三部作予定なので、そこまで書ききれるよう、頑張りたいです!!!!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる