18 / 122
見回り
しおりを挟む
昨夜はお酒の力と登山に長旅の疲れから相棒と二人で前後不覚に。
もはやどうやって部屋に辿り着いたか覚えてない。
だから繰り返さない為にもお酒は控えた。
相棒にも抑えるように言ったがこの通り。
見てない間にたらふく呑みやがった。
本当にやる気あるのか?
「おい見回りを頼む」
「駄目眠いんだ」
睡眠薬を飲んだかのように眠気がと。あーあまた横になりやがった。
食ったら眠くなる。お酒が入れば余計だ。
「分かったよ。だったら留守番しててくれ。俺が見回りをするから」
相棒がどうにか返事をする。
一人で見回りは危険だ。事件に巻き込まれる恐れがある。
だが一流の探偵がこんなことでびくついてなるものか。
犯人は恐らく鈍器を持っているはずだからさすがに分かるよな。
これがナイフや拳銃だったらひとたまりもないが。
「あら探偵さん。あんたも寝れないのかい」
五号室のお婆さん。
「気を付けてください。殺人鬼がうろついてるんですよ」
「大丈夫。この年になれば怖いものなし。それより今日は本当にお買い得だったね」
ダイヤを五つも買ったらしい。
三十パーセントオフを二個と定価を三つ。
自慢する。
生憎その時は帰ってきたところだったから詳しくは知らない。
勢いで結局一個購入したので気持ちはよく分かる。
「でも比べるとどうも輝きが違うのよね。ほらこれ」
さも不思議と言った感じ。
「いいから早く寝てください! 」
これでも心配してるが伝わってなさそう。
「そんなに邪険に扱わなくてもいいじゃないか。とっておきの情報があるのにさ」
「はい? 何か知ってるんですか? 」
「大したことじゃないの。あの男は私たちを騙していた」
「騙していた? あの海老沢氏が? 」
「他に誰がいるんだい僕? 」
子ども扱いするお婆さん。アメをあげるよと言うので遠慮なく。
「そうするとあなたは動機があることになりますが…… 」
「ええそうなるね。残念だけど」
「私たちと言いましたが他には? 」
首を振るお婆さん。
「仲間を売るような真似が出来るものかい。
それこそお得意の推理で解き明かしてごらんよ」
「望むところです」
つい挑発に乗るが大事件はまだ解決したことがない。
実を言うとまだ一人で解決したことがない。
いつも優秀な助手が先に事件を解決し私たちは置いてけぼりを喰う。
何と言っても明後日探偵なので。
そこら辺はご容赦願いたい。
ここでは警察もいないし素人探偵もいないし高校生探偵も見当たらない。
だから心置きなく捜査に当たる。
警察が来れば一般人が邪魔をするなと言われるのが関の山。
いつもそう言われる前に立ち去ってるので目立ったトラブルはなし。
ただ警察の知り合いもいない。これはどちらかと言うと孤独探偵に近いのかな。
眠れないお婆さんを部屋まで送り見回りに戻る。
今のところ異常は感じられない。
第二の事件は果たして?
廊下を行ったり来たりを繰り返す。
なるべく静かに安眠を妨げないようにする。
まあこれで起きるような敏感な者はいないだろうな。
バタン!
いきなりドアが開く。
302号室の住人は確か山田さんだったかな。お客さんでも?
「おやすみなさい」
女が騒ぐ。
「もう何なのあの男? ちっとも誘いに乗ってこないじゃない」
ブツブツと卑猥なことを言っている。
絡まれては面倒。離れて遠くから様子を窺うだけにする。
女は隣の自分の部屋に消えていった。
それにしても綺麗な人だ。
今朝資産家の奥さんと間違えたっけ。
化粧が濃く若作りをしてるが本当はいくつぐらいなのだろうか?
魔性の女ってとこだな。
そうすると今の独り言から行けば相手はターゲットと言う訳だ。
まあどうでもいいか。勝手にやってください。
タイプじゃないもんな。あのガイドさんぐらい可愛いといいんだけど。
酒に酔ってだらしないのは男女関わりなく嫌な気分にさせられる。
俺たちも昨夜は同じだったので文句は言えないが。
異常は特になし。そろそろ見回りも限界だな。
探偵として出来る限りのことをした。もう今夜は何も起きないさ。
戻るとするか。
「おやすみなさい」
誰に言うでもなく挨拶をする。
続く
もはやどうやって部屋に辿り着いたか覚えてない。
だから繰り返さない為にもお酒は控えた。
相棒にも抑えるように言ったがこの通り。
見てない間にたらふく呑みやがった。
本当にやる気あるのか?
「おい見回りを頼む」
「駄目眠いんだ」
睡眠薬を飲んだかのように眠気がと。あーあまた横になりやがった。
食ったら眠くなる。お酒が入れば余計だ。
「分かったよ。だったら留守番しててくれ。俺が見回りをするから」
相棒がどうにか返事をする。
一人で見回りは危険だ。事件に巻き込まれる恐れがある。
だが一流の探偵がこんなことでびくついてなるものか。
犯人は恐らく鈍器を持っているはずだからさすがに分かるよな。
これがナイフや拳銃だったらひとたまりもないが。
「あら探偵さん。あんたも寝れないのかい」
五号室のお婆さん。
「気を付けてください。殺人鬼がうろついてるんですよ」
「大丈夫。この年になれば怖いものなし。それより今日は本当にお買い得だったね」
ダイヤを五つも買ったらしい。
三十パーセントオフを二個と定価を三つ。
自慢する。
生憎その時は帰ってきたところだったから詳しくは知らない。
勢いで結局一個購入したので気持ちはよく分かる。
「でも比べるとどうも輝きが違うのよね。ほらこれ」
さも不思議と言った感じ。
「いいから早く寝てください! 」
これでも心配してるが伝わってなさそう。
「そんなに邪険に扱わなくてもいいじゃないか。とっておきの情報があるのにさ」
「はい? 何か知ってるんですか? 」
「大したことじゃないの。あの男は私たちを騙していた」
「騙していた? あの海老沢氏が? 」
「他に誰がいるんだい僕? 」
子ども扱いするお婆さん。アメをあげるよと言うので遠慮なく。
「そうするとあなたは動機があることになりますが…… 」
「ええそうなるね。残念だけど」
「私たちと言いましたが他には? 」
首を振るお婆さん。
「仲間を売るような真似が出来るものかい。
それこそお得意の推理で解き明かしてごらんよ」
「望むところです」
つい挑発に乗るが大事件はまだ解決したことがない。
実を言うとまだ一人で解決したことがない。
いつも優秀な助手が先に事件を解決し私たちは置いてけぼりを喰う。
何と言っても明後日探偵なので。
そこら辺はご容赦願いたい。
ここでは警察もいないし素人探偵もいないし高校生探偵も見当たらない。
だから心置きなく捜査に当たる。
警察が来れば一般人が邪魔をするなと言われるのが関の山。
いつもそう言われる前に立ち去ってるので目立ったトラブルはなし。
ただ警察の知り合いもいない。これはどちらかと言うと孤独探偵に近いのかな。
眠れないお婆さんを部屋まで送り見回りに戻る。
今のところ異常は感じられない。
第二の事件は果たして?
廊下を行ったり来たりを繰り返す。
なるべく静かに安眠を妨げないようにする。
まあこれで起きるような敏感な者はいないだろうな。
バタン!
いきなりドアが開く。
302号室の住人は確か山田さんだったかな。お客さんでも?
「おやすみなさい」
女が騒ぐ。
「もう何なのあの男? ちっとも誘いに乗ってこないじゃない」
ブツブツと卑猥なことを言っている。
絡まれては面倒。離れて遠くから様子を窺うだけにする。
女は隣の自分の部屋に消えていった。
それにしても綺麗な人だ。
今朝資産家の奥さんと間違えたっけ。
化粧が濃く若作りをしてるが本当はいくつぐらいなのだろうか?
魔性の女ってとこだな。
そうすると今の独り言から行けば相手はターゲットと言う訳だ。
まあどうでもいいか。勝手にやってください。
タイプじゃないもんな。あのガイドさんぐらい可愛いといいんだけど。
酒に酔ってだらしないのは男女関わりなく嫌な気分にさせられる。
俺たちも昨夜は同じだったので文句は言えないが。
異常は特になし。そろそろ見回りも限界だな。
探偵として出来る限りのことをした。もう今夜は何も起きないさ。
戻るとするか。
「おやすみなさい」
誰に言うでもなく挨拶をする。
続く
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
彩霞堂
綾瀬 りょう
ミステリー
無くした記憶がたどり着く喫茶店「彩霞堂」。
記憶を無くした一人の少女がたどりつき、店主との会話で消し去りたかった記憶を思い出す。
以前ネットにも出していたことがある作品です。
高校時代に描いて、とても思い入れがあります!!
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
三部作予定なので、そこまで書ききれるよう、頑張りたいです!!!!
瞳に潜む村
山口テトラ
ミステリー
人口千五百人以下の三角村。
過去に様々な事故、事件が起きた村にはやはり何かしらの祟りという名の呪いは存在するのかも知れない。
この村で起きた奇妙な事件を記憶喪失の青年、桜は遭遇して自分の記憶と対峙するのだった。
家電ミステリー(イエミス)
ぷりん川ぷり之介
ミステリー
家にある家電をテーマにいろいろな小話を作りました。
イヤミスと間違えて見に来てくれる人がいるかなと思い、家電ミステリー、略して“イエミス”というタイトルをつけました。厳密にいえば、略したら“カミス”なのかもしれませんが大目に見てください。ネタ切れして、今や家電ミステリーですらありませんが、そこも大目に見てください。
あと、ミステリーと書いてますが、ミステリーでもホラーでもなく単なるホラ話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる