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愛人疑惑
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鑑定士は自分の仕事をしただけだと潔白を訴える。
この状況でもまだ自分が詐欺集団の一味だと認めない。
「もう冗談でしょう? 」
女が笑いを堪える。
酔っぱらってふざけているようだ。
「鑑定士さんこれもお願い」
「このダイヤは真っ赤な偽物です」
「ふざけるな。それでは俺たちに危害が及ぶ。まさか裏切る気か? 」
興奮気味の人相の悪い男。どうやら彼が皆をまとめるリーダ役らしい。
さっきから女がすり寄るのを煩わしそうにしている。
「いいじゃない。それはそれで」
「いいものか! 俺たちが袋叩きに遭う。下手すれば捕まっちまうんだぞ! 」
男だけが想像力を働かせているせいか興奮状態。
誰彼構わずに突っかかる。
「ええ、それはもちろん。ですがこれも知らなかったことにすればいい。
最悪それで乗り切れます」
鑑定士は冷静だ。自分だけは確実に逃げ切れると思ってるらしい。
「俺は嫌だぜ」
「最悪返金すればいいんですって」
「返金ね。困ったわ」
ちっとも困ってなさそうな女。この状況を一人楽しんでいる。
「ふふふ…… どうしたらいいの? もう本当に困っちゃう! 」
スリルに酔いしれエスカレートしていく。
「それであんたが儲けるんだろ? 」
黙っていた販売員が鑑定士を追及。
「はい鑑定士ですから」
さも当然と言った表情。
「それでお幾らで? 」
「高くはありません。一万円で鑑定します」
「わあ安い! 」
女がふざける。
「おうおう恐ろしいねこの鑑定士さんは。
一万円って言うと残り五十のダイヤを鑑定するとして五十万かい」
販売員が突っかかる。
「それで取り分はどうなるんだ? 」
「ありません。すべて返品ならね。売れてないんですよ」
すべてを懐に入れる算段。
「俺たちが黙ってないぜ」
「構いませんよ。ただ偽物を売りつけた者を信用しますかね。
私は誠実に鑑定しました。何も疚しいところはございません」
鑑定士はどちらでもいいスタンス。
何と悪知恵の働く奴なのか。
「ははは…… 冗談に決まってるだろ? お前もそうだよな? 」
販売員が鑑定士の真意を探る。
「鑑定士ですから」
「おいおい嘘だろ? 」
他の者は気付かれては大失敗に終わる。
これは急いだ方がいいな。
二泊三日の旅。
明日バスが迎えに来る。
それまでは動きが取れない。
もちろん一台車もあるがこれは非常時でしかも山道は危険。
それどころか土砂で道が塞がっており下山は不可能。
明日バスが来れるかも微妙。
なるべく予定通りに事を進めるのが良い。
四人は誓うのだった。
なるべくお互い関わらないと。
仕事が終われば再び祝勝会を開けばいい。
だから今は赤の他人だと。
「しかしよ。何でもっと高いのを売りつけない? 」
販売員は不満そうだ。
「馬鹿ね。大富豪相手じゃないのよ。知識も何もないカモを相手にするの。
大金を持ってる訳ない。だから吹っ掛けても無駄。誰も見向きもしない。
確かに無料バスツアーだから悪いと思って一、二個買うのが日本人と言うものよ。
一番の問題は環境。いかに買い易さを演出するか。要するに雰囲気作りね。
それが上手く行ったから即完売になったんでしょうが」
「でもよ。もう少し頂かないと俺たちの取り分が微々たるものに。
これじゃやってられないよ」
販売員は必死だ。
「ああ、お前借金あるもんな。大手三社から」
「うるせい! 人の個人情報を調べるな! 」
「えっと…… いくらだったかな」
「こら! 」
「もういいでしょう。可哀想よ。ほら今日はこんなものだけど次はもっとたくさん。
第二弾だっていいし急いで次考えればカモが待ってるんだから。前向きにね」
「ちょっと待て。まさか依頼人を無視して新しく始める気か? 」
まとめ役の男が動揺している。
「当然。もう依頼されなくても動ける。こんな旨い商売を独占しないでどうするの」
女はやる気満々。
「まったくお前って奴は…… 」
「それに私にはまだダーリンが待ってるもん」
「勝手にしてくれ。私はどちらでも構わない」
鑑定士は反対しない。
「俺だってそれでいいぜ。ただし儲けは均等だ。それだけは守れよ! 」
販売員が念を押す。
三人が賛成に回る。
「ちょっと待て! お前ら忘れたのか? 」
まとめ役は冷静だ。
「あいつが殺されたんだぜ」
そう今までのはただのお遊び。これからが本題だ。
本題に入る。
続く
この状況でもまだ自分が詐欺集団の一味だと認めない。
「もう冗談でしょう? 」
女が笑いを堪える。
酔っぱらってふざけているようだ。
「鑑定士さんこれもお願い」
「このダイヤは真っ赤な偽物です」
「ふざけるな。それでは俺たちに危害が及ぶ。まさか裏切る気か? 」
興奮気味の人相の悪い男。どうやら彼が皆をまとめるリーダ役らしい。
さっきから女がすり寄るのを煩わしそうにしている。
「いいじゃない。それはそれで」
「いいものか! 俺たちが袋叩きに遭う。下手すれば捕まっちまうんだぞ! 」
男だけが想像力を働かせているせいか興奮状態。
誰彼構わずに突っかかる。
「ええ、それはもちろん。ですがこれも知らなかったことにすればいい。
最悪それで乗り切れます」
鑑定士は冷静だ。自分だけは確実に逃げ切れると思ってるらしい。
「俺は嫌だぜ」
「最悪返金すればいいんですって」
「返金ね。困ったわ」
ちっとも困ってなさそうな女。この状況を一人楽しんでいる。
「ふふふ…… どうしたらいいの? もう本当に困っちゃう! 」
スリルに酔いしれエスカレートしていく。
「それであんたが儲けるんだろ? 」
黙っていた販売員が鑑定士を追及。
「はい鑑定士ですから」
さも当然と言った表情。
「それでお幾らで? 」
「高くはありません。一万円で鑑定します」
「わあ安い! 」
女がふざける。
「おうおう恐ろしいねこの鑑定士さんは。
一万円って言うと残り五十のダイヤを鑑定するとして五十万かい」
販売員が突っかかる。
「それで取り分はどうなるんだ? 」
「ありません。すべて返品ならね。売れてないんですよ」
すべてを懐に入れる算段。
「俺たちが黙ってないぜ」
「構いませんよ。ただ偽物を売りつけた者を信用しますかね。
私は誠実に鑑定しました。何も疚しいところはございません」
鑑定士はどちらでもいいスタンス。
何と悪知恵の働く奴なのか。
「ははは…… 冗談に決まってるだろ? お前もそうだよな? 」
販売員が鑑定士の真意を探る。
「鑑定士ですから」
「おいおい嘘だろ? 」
他の者は気付かれては大失敗に終わる。
これは急いだ方がいいな。
二泊三日の旅。
明日バスが迎えに来る。
それまでは動きが取れない。
もちろん一台車もあるがこれは非常時でしかも山道は危険。
それどころか土砂で道が塞がっており下山は不可能。
明日バスが来れるかも微妙。
なるべく予定通りに事を進めるのが良い。
四人は誓うのだった。
なるべくお互い関わらないと。
仕事が終われば再び祝勝会を開けばいい。
だから今は赤の他人だと。
「しかしよ。何でもっと高いのを売りつけない? 」
販売員は不満そうだ。
「馬鹿ね。大富豪相手じゃないのよ。知識も何もないカモを相手にするの。
大金を持ってる訳ない。だから吹っ掛けても無駄。誰も見向きもしない。
確かに無料バスツアーだから悪いと思って一、二個買うのが日本人と言うものよ。
一番の問題は環境。いかに買い易さを演出するか。要するに雰囲気作りね。
それが上手く行ったから即完売になったんでしょうが」
「でもよ。もう少し頂かないと俺たちの取り分が微々たるものに。
これじゃやってられないよ」
販売員は必死だ。
「ああ、お前借金あるもんな。大手三社から」
「うるせい! 人の個人情報を調べるな! 」
「えっと…… いくらだったかな」
「こら! 」
「もういいでしょう。可哀想よ。ほら今日はこんなものだけど次はもっとたくさん。
第二弾だっていいし急いで次考えればカモが待ってるんだから。前向きにね」
「ちょっと待て。まさか依頼人を無視して新しく始める気か? 」
まとめ役の男が動揺している。
「当然。もう依頼されなくても動ける。こんな旨い商売を独占しないでどうするの」
女はやる気満々。
「まったくお前って奴は…… 」
「それに私にはまだダーリンが待ってるもん」
「勝手にしてくれ。私はどちらでも構わない」
鑑定士は反対しない。
「俺だってそれでいいぜ。ただし儲けは均等だ。それだけは守れよ! 」
販売員が念を押す。
三人が賛成に回る。
「ちょっと待て! お前ら忘れたのか? 」
まとめ役は冷静だ。
「あいつが殺されたんだぜ」
そう今までのはただのお遊び。これからが本題だ。
本題に入る。
続く
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