8 / 122
悲鳴
しおりを挟む
二日目。
ついに始まる。骨肉の相続争いが……
きゃああ。
女性の悲鳴と共に朝を迎える。
「どうしました? 」
目の前には女性の姿が。しかもなぜか下着姿なのだ。まったくの謎。
「どうしたじゃありませんよ。なぜあなた方がここに居るんですか? 」
冷静な対応を見せる女性。そう言えば彼女は確かここのメイドだったような……
「それは…… 私にもちょっと…… 」
どうやら大事件とはいかないらしい。
惜しい。せっかく力を発揮するチャンスだったのに。
いやいや…… 何事も起きないのが一番。難事件が発生したら目も当てられない。
それに当主が殺されては元も子もない。
「もう早く出て行ってください」
どうやら酔ってお隣の部屋へ迷い込んだようだ。
決してわざとではないのに信じてくれない。信じて欲しいな。
部屋に迷い込んだだけでなくベットの中へまで潜り込んでいた。
これでは弁明もできない。痴漢で捕まっても文句は言えない。
いくら酔っていたとしても言い訳にならない。
ただ気になるのはなぜ我々が彼女たちの部屋へお邪魔できたかの一点。
謎は深まるばかりだ。
連れはびくともせずまだベットで夢の中。
私一人で戦うのはあまりに分が悪い。
ここは土下座でも何でもして沈静化を図るのがいい。
どうせ待っても悪化するだけかもしれないし。まあそれはそれ。
目の前には下着姿の女性二人。
私の為に脱いでくれたのではない。
だとすれば一晩中その格好でいたことになる。
暑いからな。それも頷ける。
ジロジロ見るあまり二人は服を着てしまう。
うん。これで少しはまともに会話できるだろう。
「あのお間違いになってますよ。隣の部屋ですよ」
嫌味のようにしつこい。分かってるって。
昨日は酷く酔っており連れにすべて任せて部屋に入った。
だからこれは不可抗力。言い訳に過ぎないのは重々承知の上。
さあ戻るとするか。
青磁の壺が目に止まる。
うーん。どうやら値の張る物のようだ。
後は絵画が一枚。
不気味な青の世界。
これはシュールレアリズムか。
うん。まあこんな物だろう。
「忘れ物! 」
連れが叩き起こされ我々は仕方なく退場するのであった。
本来の部屋に戻る。
ここにも壺が一つ。
今度は白い壺だ。
湖の写真。
それとベットとテレビにトイレ。
窓には絶景が。
ドスグロ山の景色が一望できる。
オーシャンビューならぬマウンテンビュー。
凄い眺めだ。
「おいそろそろ支度をしろ」
寝不足らしくまたベットに横になってる困った奴。
あと一時間もすれば始まるはず。
「さあそろそろ行くぞ」
うんと答えるのみ。
まったく無口で愛想が悪いから困るぜ。
だいたい任せたのに一つもできないってどういうことだよ?
何も話さないから不審がられるし。大丈夫だと言ったくせに部屋を間違える。
それにしてもなぜ俺たちは隣の部屋に侵入できた?
まさか間違えたのはあっちで…… いや有り得ないか。
執念で開けたのか?
まあいいか。細かいことは後回しだ。
午前十時となった。
下に降りる。
どうやら全員揃ったらしい。
さあ始まるぞ。
後は弁護士が読み上げればいいが……
どうも様子がおかしいんだよな。
どこにもバッチを着けたものがいない。
これはどう言うことだ?
弁護士は遅れているとでも言うのか?
仕方がない確認をしよう。
「奥さんご心配なく。旦那さんはきっとご無事ですよ」
「奥さん? 誰ですか? 」
真顔で返される。
「ですからあなたが奥さんですよね」
随分若作りしてるが間違いない。旦那さんの莫大な財産を狙っているうちの一人だ。
これはもはや弁護士も取り込まれているやもしれない。
「いい加減にしてください! 」
なぜか奥さんではなくメイドが怒り出す。
「せっかく昨日助けてあげたのに恩を仇で返すつもりですか? 」
うん? 何を言ってるんだこのメイドは。
メイド頭にでも昇格して浮かれているのか?
まあいい。多少変だが続ける。
「弁護士の先生がまだ来ておりません。しかしもう約束の十時。
僭越ながら私が代わりに今あなた方が置かれている状況を説明します。
脅迫状が届いております。
誰ですか? 少年誌の切り抜きで脅迫状を書いたおバカさんは。
そうあなたですね。次男の次郎さん」
「はああ? 」
まだシラを切ろうとしている。何てふてぶてしいのか。
「そう。あなたはまだ実行してない。脅迫に留まってます。
正直に話し自首することを勧めます」
私の言葉に心を動かされたのか? 単に欠伸が出たのかは定かではないが涙が光る。
「余興はそれくらいで」
メイドが間に入る。
何と失礼な。探偵を馬鹿にして良いことは一つもない。
「失敬な。では本日の主役であるご当主をお呼びください」
困惑した表情の奥さん。まさかもう殺害してしまったのか?
「もう一体何なの? 」
メイドが代わりに呼びに行く。
まったく最近のメイドは口の利き方も知らないようだ。
私は非公式とは言え招待を受けた身。実際は依頼人の代理をしているに過ぎないが。
とにかく落ち着こう。
続く
ついに始まる。骨肉の相続争いが……
きゃああ。
女性の悲鳴と共に朝を迎える。
「どうしました? 」
目の前には女性の姿が。しかもなぜか下着姿なのだ。まったくの謎。
「どうしたじゃありませんよ。なぜあなた方がここに居るんですか? 」
冷静な対応を見せる女性。そう言えば彼女は確かここのメイドだったような……
「それは…… 私にもちょっと…… 」
どうやら大事件とはいかないらしい。
惜しい。せっかく力を発揮するチャンスだったのに。
いやいや…… 何事も起きないのが一番。難事件が発生したら目も当てられない。
それに当主が殺されては元も子もない。
「もう早く出て行ってください」
どうやら酔ってお隣の部屋へ迷い込んだようだ。
決してわざとではないのに信じてくれない。信じて欲しいな。
部屋に迷い込んだだけでなくベットの中へまで潜り込んでいた。
これでは弁明もできない。痴漢で捕まっても文句は言えない。
いくら酔っていたとしても言い訳にならない。
ただ気になるのはなぜ我々が彼女たちの部屋へお邪魔できたかの一点。
謎は深まるばかりだ。
連れはびくともせずまだベットで夢の中。
私一人で戦うのはあまりに分が悪い。
ここは土下座でも何でもして沈静化を図るのがいい。
どうせ待っても悪化するだけかもしれないし。まあそれはそれ。
目の前には下着姿の女性二人。
私の為に脱いでくれたのではない。
だとすれば一晩中その格好でいたことになる。
暑いからな。それも頷ける。
ジロジロ見るあまり二人は服を着てしまう。
うん。これで少しはまともに会話できるだろう。
「あのお間違いになってますよ。隣の部屋ですよ」
嫌味のようにしつこい。分かってるって。
昨日は酷く酔っており連れにすべて任せて部屋に入った。
だからこれは不可抗力。言い訳に過ぎないのは重々承知の上。
さあ戻るとするか。
青磁の壺が目に止まる。
うーん。どうやら値の張る物のようだ。
後は絵画が一枚。
不気味な青の世界。
これはシュールレアリズムか。
うん。まあこんな物だろう。
「忘れ物! 」
連れが叩き起こされ我々は仕方なく退場するのであった。
本来の部屋に戻る。
ここにも壺が一つ。
今度は白い壺だ。
湖の写真。
それとベットとテレビにトイレ。
窓には絶景が。
ドスグロ山の景色が一望できる。
オーシャンビューならぬマウンテンビュー。
凄い眺めだ。
「おいそろそろ支度をしろ」
寝不足らしくまたベットに横になってる困った奴。
あと一時間もすれば始まるはず。
「さあそろそろ行くぞ」
うんと答えるのみ。
まったく無口で愛想が悪いから困るぜ。
だいたい任せたのに一つもできないってどういうことだよ?
何も話さないから不審がられるし。大丈夫だと言ったくせに部屋を間違える。
それにしてもなぜ俺たちは隣の部屋に侵入できた?
まさか間違えたのはあっちで…… いや有り得ないか。
執念で開けたのか?
まあいいか。細かいことは後回しだ。
午前十時となった。
下に降りる。
どうやら全員揃ったらしい。
さあ始まるぞ。
後は弁護士が読み上げればいいが……
どうも様子がおかしいんだよな。
どこにもバッチを着けたものがいない。
これはどう言うことだ?
弁護士は遅れているとでも言うのか?
仕方がない確認をしよう。
「奥さんご心配なく。旦那さんはきっとご無事ですよ」
「奥さん? 誰ですか? 」
真顔で返される。
「ですからあなたが奥さんですよね」
随分若作りしてるが間違いない。旦那さんの莫大な財産を狙っているうちの一人だ。
これはもはや弁護士も取り込まれているやもしれない。
「いい加減にしてください! 」
なぜか奥さんではなくメイドが怒り出す。
「せっかく昨日助けてあげたのに恩を仇で返すつもりですか? 」
うん? 何を言ってるんだこのメイドは。
メイド頭にでも昇格して浮かれているのか?
まあいい。多少変だが続ける。
「弁護士の先生がまだ来ておりません。しかしもう約束の十時。
僭越ながら私が代わりに今あなた方が置かれている状況を説明します。
脅迫状が届いております。
誰ですか? 少年誌の切り抜きで脅迫状を書いたおバカさんは。
そうあなたですね。次男の次郎さん」
「はああ? 」
まだシラを切ろうとしている。何てふてぶてしいのか。
「そう。あなたはまだ実行してない。脅迫に留まってます。
正直に話し自首することを勧めます」
私の言葉に心を動かされたのか? 単に欠伸が出たのかは定かではないが涙が光る。
「余興はそれくらいで」
メイドが間に入る。
何と失礼な。探偵を馬鹿にして良いことは一つもない。
「失敬な。では本日の主役であるご当主をお呼びください」
困惑した表情の奥さん。まさかもう殺害してしまったのか?
「もう一体何なの? 」
メイドが代わりに呼びに行く。
まったく最近のメイドは口の利き方も知らないようだ。
私は非公式とは言え招待を受けた身。実際は依頼人の代理をしているに過ぎないが。
とにかく落ち着こう。
続く
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ファクト ~真実~
華ノ月
ミステリー
主人公、水無月 奏(みなづき かなで)はひょんな事件から警察の特殊捜査官に任命される。
そして、同じ特殊捜査班である、透(とおる)、紅蓮(ぐれん)、槙(しん)、そして、室長の冴子(さえこ)と共に、事件の「真実」を暴き出す。
その事件がなぜ起こったのか?
本当の「悪」は誰なのか?
そして、その事件と別で最終章に繋がるある真実……。
こちらは全部で第七章で構成されています。第七章が最終章となりますので、どうぞ、最後までお読みいただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたしますm(__)m
隅の麗人 Case.1 怠惰な死体
久浄 要
ミステリー
東京は丸の内。
オフィスビルの地階にひっそりと佇む、暖色系の仄かな灯りが点る静かなショットバー『Huster』(ハスター)。
事件記者の東城達也と刑事の西園寺和也は、そこで車椅子を傍らに、いつも同じ席にいる美しくも怪しげな女に出会う。
東京駅の丸の内南口のコインロッカーに遺棄された黒いキャリーバッグ。そこに入っていたのは世にも奇妙な謎の死体。
死体に呼応するかのように東京、神奈川、埼玉、千葉の民家からは男女二人の異様なバラバラ死体が次々と発見されていく。
2014年1月。
とある新興宗教団体にまつわる、一都三県に跨がった恐るべき事件の顛末を描く『怠惰な死体』。
難解にしてマニアック。名状しがたい悪夢のような複雑怪奇な事件の謎に、個性豊かな三人の男女が挑む『隅の麗人』シリーズ第1段!
カバーイラスト 歩いちご
※『隅の麗人』をエピソード毎に分割した作品です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
怪奇事件捜査File2 ドッペルゲンガーと謎の電話編
揚惇命
ミステリー
首なしライダー事件を解決して3ヶ月経った夏の暑さの厳しい中、出雲美和の新たな事件が幕を開ける。今度の怪異はドッペルゲンガー、それにえっメリーさん。浮かび上がる死のメッセージの数々、突然出られなくなる温泉宿。外との連絡も途絶え。首なしライダー事件で世話になった鈴宮楓と山南宇宙、閉鎖された温泉宿に取り残された人達と共にこの温泉宿から無事に脱出することはできるのか。怪異ドッペルゲンガーの正体とは。怪異メリーさんとの関係は。謎が謎を呼ぶ。迫り来る死の恐怖の数々に出雲美和は立ち向かうことができるのか。
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
あやかしがくえん
橋真和高
ミステリー
妖怪、妖、幽霊、怪異、魑魅魍魎、悪魔、それらを人は総じて「バケモノ」と呼ぶ。
これはそんなバケモノが跋扈する世界で、悪魔の心臓を身に宿した少年夜神吉良《やがみきら》が様々なバケモノと行き遭う物語だ。
そして。
個性豊かなヒロインたちとミステリーでコメディーなお話だ。
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。
前世の記憶から引き出された真実
ゆきもと けい
ミステリー
前世の記憶があるという少年。事故で亡くなったという前世の記憶。それは本当なのか、確認する為に旅行に出た親子だが、その真実を知った時、本当の恐怖が始まることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる