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もう一人の裏切者
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どうしても執事を首謀者にしたいセピユロスを説得。
「彼とはよく話し合いました。息子の件も不問に付しました。
彼が私を裏切る理由がないじゃない」
「でもディーテ…… 」
エクスプレスは間もなくロック駅に。
駅からは馬車でお屋敷に。
追手を放ったとは言えさすがに私たちが戻って来るとは夢にも思わないでしょう。
その隙をついて屋敷に戻る作戦。
ですがその前に寄るところがあります。
ロック村のブラックウッド家にお邪魔することに。
「執事は決して裏切るような人間ではありません。そう断言できます」
「ご主人様。それは甘いお考えかと。息子さんの件は私も存じております。
彼は自分の弱みをご主人様に握られたと考えたのかもしれません。
これ以上勝手な真似をせずご主人様に忠誠を誓えとそう捉えたのかもしれません」
「そんなまさか…… 冗談でしょう? 」
「いえセピユロス様の指摘は決して間違いではありません。
執事は確かに不審な行動を取っていました。裏切るとまでは想像しませんでしたが」
影のメイドも執事を疑っていた。
そう言われると思い当たる節が。最近の執事の心変わりとボノへの傾倒。
あんなに尽してくれたのにいつの間にかボノ派に。
「ボノはどう? 」
どうせ庇うんでしょうね。仲間意識からお互い庇い合う。決して悪いことではない。
二人が信頼関係で結ばれているなら当然のこと。
「ちょっと待ってくれ。執事で話が盛り上がってるところ悪いが俺には何のことか」
この期に及んで執事との関係を否定するボノ。
だったらマーガレットとの仲も否定しなさいよね。
本当に女好きの困った方。これが我が夫とは嫌になります。
「どう勘違いしたか知らないが私と執事にそんな深い関係があるはずないだろ?
執事って言っても君の執事なんだから…… 知るか!
確かにセピユロス君が来るまではたまに狩猟に同行してもらったこともあったよ。
でも彼はどちらかと言うと口下手だから静かにしてる。
私はお付の者と談笑することがほとんど。
彼には悪いなとは思ったがやはり信頼のおける者と一緒の方が落ちつくしね。
別に執事が悪いとか嫌いだと言ってるんじゃないんだ。
ただ彼から尊敬されるようなことはしてない。ほとんど話したこともないんだ。
それが彼のスタイルだと思って気にしてなかったが今思えばおかしいところも」
ボノは執事の裏の顔もなぜボノに傾倒したのかもまったく覚えがないそうだ。
やはり口が堅いですね。認めさせるには一筋縄では行きそうにない。
それとも本当のこと? 今までが今までだからどっちなのか判断がつかない。
「ボノ…… 」
「何だよその人を疑う目は? 知らないと言ったら知らないんだ! 」
「執事は旦那様、旦那様ってよく言ってましたよ」
「それは私にも…… 何かの間違いだよきっと」
ボノは覚えがないと否定する。
ここは影のメイドの意見を……
「私にも分かりかねます」
だったらセピユロスの直感で。執事の裏の顔を暴いたように……
セピユロスは何も発さない。もう本当にだらしがないんだから。
「ちょっと待って…… だったらなぜ執事はボノの味方をするの? 」
結局その疑問に行きつく。
ボノの支配下にあるのではなくそう思い込まされていただけ。
それは執事の突然の心変わりとボノへの傾倒。
誰に? 何の為に?
恐らく執事自身が。一連の陰謀の布石として。
影のメイドが言うには執事は息子の件を知るご主人様の私を疎ましく思っていた。
その心の隙に入り込んだのはボノではなく別の誰かと言うことになる。
だとすれば執事を唆したはボノ以外の何者か。
「ほらやっぱり執事が怪しい」
セピユロスが勝ち誇る。
「私もセピユロス様と同意見です。少々恥ずかしいですが」
「それはどういう意味ですか? 」
影のメイドにまで馬鹿にされ始めたセピユロス。
キラキラ輝いていた元のセピユロスに戻って欲しい。
影のメイドも執事を訝しんでいる。もはや確信に変わったでしょうね。
ボノも続く。
「やっぱり執事が裏切者さ」
こうして推測の域を出ないものの全容解明にまた一歩前進。
すべては執事に収束する。
ただ本当の裏切者はここにいるボノなんですけどね。
嵐が収まるまでボロの家で身を隠していたボノを決して忘れてはならない。
ボノが失踪事件を起こさなければ今回の一連の騒動も起きなかったはず。
そうすれば未だに平和な毎日が続いていたでしょう。
許さらざる者。それは執事でもマーガレットでもなく我が夫、ボノなのです。
不快な音と共にエクスプレスの速度が下がる。
ついに目的地のロック駅に到着。
「さあ皆さん参りましょうか」
「おう! 」
「はい、ご主人様」
ついに物語は最終局面へ。
最終回(前編)へ続く
「彼とはよく話し合いました。息子の件も不問に付しました。
彼が私を裏切る理由がないじゃない」
「でもディーテ…… 」
エクスプレスは間もなくロック駅に。
駅からは馬車でお屋敷に。
追手を放ったとは言えさすがに私たちが戻って来るとは夢にも思わないでしょう。
その隙をついて屋敷に戻る作戦。
ですがその前に寄るところがあります。
ロック村のブラックウッド家にお邪魔することに。
「執事は決して裏切るような人間ではありません。そう断言できます」
「ご主人様。それは甘いお考えかと。息子さんの件は私も存じております。
彼は自分の弱みをご主人様に握られたと考えたのかもしれません。
これ以上勝手な真似をせずご主人様に忠誠を誓えとそう捉えたのかもしれません」
「そんなまさか…… 冗談でしょう? 」
「いえセピユロス様の指摘は決して間違いではありません。
執事は確かに不審な行動を取っていました。裏切るとまでは想像しませんでしたが」
影のメイドも執事を疑っていた。
そう言われると思い当たる節が。最近の執事の心変わりとボノへの傾倒。
あんなに尽してくれたのにいつの間にかボノ派に。
「ボノはどう? 」
どうせ庇うんでしょうね。仲間意識からお互い庇い合う。決して悪いことではない。
二人が信頼関係で結ばれているなら当然のこと。
「ちょっと待ってくれ。執事で話が盛り上がってるところ悪いが俺には何のことか」
この期に及んで執事との関係を否定するボノ。
だったらマーガレットとの仲も否定しなさいよね。
本当に女好きの困った方。これが我が夫とは嫌になります。
「どう勘違いしたか知らないが私と執事にそんな深い関係があるはずないだろ?
執事って言っても君の執事なんだから…… 知るか!
確かにセピユロス君が来るまではたまに狩猟に同行してもらったこともあったよ。
でも彼はどちらかと言うと口下手だから静かにしてる。
私はお付の者と談笑することがほとんど。
彼には悪いなとは思ったがやはり信頼のおける者と一緒の方が落ちつくしね。
別に執事が悪いとか嫌いだと言ってるんじゃないんだ。
ただ彼から尊敬されるようなことはしてない。ほとんど話したこともないんだ。
それが彼のスタイルだと思って気にしてなかったが今思えばおかしいところも」
ボノは執事の裏の顔もなぜボノに傾倒したのかもまったく覚えがないそうだ。
やはり口が堅いですね。認めさせるには一筋縄では行きそうにない。
それとも本当のこと? 今までが今までだからどっちなのか判断がつかない。
「ボノ…… 」
「何だよその人を疑う目は? 知らないと言ったら知らないんだ! 」
「執事は旦那様、旦那様ってよく言ってましたよ」
「それは私にも…… 何かの間違いだよきっと」
ボノは覚えがないと否定する。
ここは影のメイドの意見を……
「私にも分かりかねます」
だったらセピユロスの直感で。執事の裏の顔を暴いたように……
セピユロスは何も発さない。もう本当にだらしがないんだから。
「ちょっと待って…… だったらなぜ執事はボノの味方をするの? 」
結局その疑問に行きつく。
ボノの支配下にあるのではなくそう思い込まされていただけ。
それは執事の突然の心変わりとボノへの傾倒。
誰に? 何の為に?
恐らく執事自身が。一連の陰謀の布石として。
影のメイドが言うには執事は息子の件を知るご主人様の私を疎ましく思っていた。
その心の隙に入り込んだのはボノではなく別の誰かと言うことになる。
だとすれば執事を唆したはボノ以外の何者か。
「ほらやっぱり執事が怪しい」
セピユロスが勝ち誇る。
「私もセピユロス様と同意見です。少々恥ずかしいですが」
「それはどういう意味ですか? 」
影のメイドにまで馬鹿にされ始めたセピユロス。
キラキラ輝いていた元のセピユロスに戻って欲しい。
影のメイドも執事を訝しんでいる。もはや確信に変わったでしょうね。
ボノも続く。
「やっぱり執事が裏切者さ」
こうして推測の域を出ないものの全容解明にまた一歩前進。
すべては執事に収束する。
ただ本当の裏切者はここにいるボノなんですけどね。
嵐が収まるまでボロの家で身を隠していたボノを決して忘れてはならない。
ボノが失踪事件を起こさなければ今回の一連の騒動も起きなかったはず。
そうすれば未だに平和な毎日が続いていたでしょう。
許さらざる者。それは執事でもマーガレットでもなく我が夫、ボノなのです。
不快な音と共にエクスプレスの速度が下がる。
ついに目的地のロック駅に到着。
「さあ皆さん参りましょうか」
「おう! 」
「はい、ご主人様」
ついに物語は最終局面へ。
最終回(前編)へ続く
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