なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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救出

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メイド館。
もう少しだと言う時に邪魔が入る。
私の人生そのものね。ふふふ……
決して順風満帆ではなかった。
仕方なく俯きがちに挨拶を交わす。
相手も同じ衣装と言うことはエイドリアスの民。
まあ偶然でしょう。

エイドリアスの民は朝が早い。
どうやら礼拝に向かうところらしい。
そこそこから同じ衣装を着た者が姿を現す。
「ごきげんよう」
なるべく声が分からないように抑えるがそもそも挨拶が間違っていた。
どうにかごまかすもすぐに限界が。これは仕方がないこと。
疑いの目を向けられるが何とか通り過ぎる。
これで終わればいいのですが……

「あら…… 」
すれ違った二人組の一人が立ち止まり振り返る。
「あなたは確かディーテさん」
白装束の女性に正体を見破られる。
せっかくここまで来たと言うのに見つかっては意味がない。
「あの…… 私は…… 」
白装束を取り顔を見せる女性。

「ディーテさん。来てくれたんですね。嬉しい」
どうして正体が見破られたのか? 顔を隠したはずなのに。
とは言え歓迎されてるのは間違いない。 
それともただ単にいい人質を見つけたと思っているのでしょうか?
笑顔が妙に嘘くさい。
「ですから私はそのような者ではなくただのエイドリアスでして…… 」
まさか…… 白装束から覗いた顔には見覚えがある。

「お母様? いえお義母様? 」
「はい、セピユロスの母です」
すれ違ったエイドリアスの民は何とセピユロスの両親だった。
最近会ったばかりだったので覚えていてくれたらしい。
「ディーテさん。まさかセピユロスに会いに来てくれたのですか? 」
二人は私のことを何も知らされていない。あの時はヴィーナの代わりをしただけ。
まさか私がここの屋敷の主人だとは夢にも思わないでしょうね。

「ちょうど良かった。セピユロスさんはどこにいますか? 」
長い挨拶は後回し。セピユロスの行方を探る。
「それは…… 」
言ってはならないときつく注意されているそう。
「お願いです。どうかお教えください! 」
もはや打つ手なし。ただ粘るしか方法がない。

「分かりました。一番奥の部屋にいます。ですが会うことは叶いませんよ」
当然鍵が掛っている。
せっかくなら一緒にとも考えたがもう夜明けが迫っている。
二人と別れて急いでセピユロスの元へ。

「セピユロス! セピユロス! 」
耐えきれずについ叫んでします。
気付かれてはお終いだと言うのに衝動が抑えられない。
ああ! セピユロス。どうかご無事で。
影のメイドから預かった鍵を使う。
ガチャリと音がする。
ついに扉が開く。
固く閉じられた扉の向こうに憔悴しきったセピユロスの姿が見えた。

「セピユロス? 」
「ディーテ? 本当にディーテなのですか? 」
まさか助けにくるとは思ってないのかまだ完全に信用しきっていない。
つい疑問が口に出る。
「セピユロス! さあここから一緒に出ましょう」
「ディーテ。助けに来てくれてありがとう。でも…… 」
そう言うと黙ってしまう。
ここまで来て何を躊躇っているのでしょう?
「ここに来てはいけないディーテ! 私は正当な裁きを受けるつもりです」
気を遣ってくれるのは嬉しい。でも今はそんな戯言を聞いてる時ではない。
一分一秒が分かれ目。早ければ早いほど脱出の可能性があるのに。
どうにか説得する必要がある。
「何を考えてるのセピユロス? 正当な裁きなどあり得ません。
あなたは田舎出身。誰一人相手などしてくれない。一度疑われたら最後。
ボノを見つけない限り潔白は証明できない」

セピユロスはそれでも頑なに動こうとしない。
「私はあなたに迷惑を掛けたくない。出来ればすぐここから立ち去って欲しい」
意見を曲げようとせず私を心配するばかり。
「セピユロス。あなたは何もしてないんでしょう? 」
「はいそれは断言できます」
「だったら一緒に来て! 私があなたの無実を証明してあげる」
強く出てセピユロスの浅はかな考えを改めさせる。
「ディーテ。あなたはそれでいいのですか? 」
セピユロスによる最終確認。
「いいに決まってるでしょう! さあ早く! 」
手を伸ばす。
「分かりました。強引な方だ。もうどうなっても知りませんよ」
セピユロスは私を心配してくれるがそれはもう覚悟の上。

果たして逃げ切れるか? もう間もなく夜明け。
セピユロスの手を掴む。
これで脱出準備完了。

                 続く
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