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おもてなし
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「失礼します」
ヴィーナが姿を見せた。
「おお、ヴィーナではないか。また大きくなって。何年振りかしれぬ」
国王様のもう一つの目的。ヴィーナとの再会。
実は国王様はヴィーナの名づけの親。
名前を頂戴するのはめったにないこと。
たまたまお越しになった時に生まれたばかりのヴィーナを見て名づけの親に。
あの頃はまだ影の薄い国王様で威厳はないに等しかった。
生まれたばかりの忙しくて不安な時にのこのこやって来た空気の読めない国王様。
こちらは疲れ切っているのに笑って歓迎しなくてはならない。苦い思い出。
あの当時はボノも優しかったしお母様もいたのでどうにでもなりましたが。
名前だって決めてあったのに酔った勢いでつけるものですからまったく。
国王様の手前受け入れざるを得なかった。本当に苦い思い出。
あの時の記憶が蘇ってくる。ああ、本当に困ったお方。
それからは毎年ヴィーナの顔を見に来られたっけ。
ヴィーナも懐いていたのでいいんですが。ただ勝手にお菓子を寄越すから苦労した。
とは言えいつも国王様にはヴィーナを大変をかわいがってもらっていた。
「国王様。お久しぶりでございます」
「ヴィーナよ。国王様などではなくバキーと呼んでくれ」
バキーは小さい頃にヴィーナが勝手につけたあだ名。
由来を聞いたら国王様はお怒りになるだろうな。
メイドの誰かが口が悪いものだから馬鹿国王と陰で呼んでいた。
それをヴィーナが聞いてしまいそのまま言いそうになったのでバキーに直す。
それ以降国王様はバキーと呼ばれるようになった。
「バキー。私もう子供じゃない」
「ははは…… いいではないか。さあ一緒に遊ぼう」
ヴィーナは遊んでられる状況ではない。
ボノは行方不明。お供が銃殺されてるところから決して楽観視できない。
セピユロスもボノ殺しの疑いで捕えられている。
私は彼女の精神状態も考えてお供の件は知らせないことにした。
すべてが解決してから話すことに。
だからなぜセピユロスが捕えられているのかも理解できてない。
こうして国王様との楽しい一時は過ぎて行く。
国王様の為に盛大な晩餐会を開催する。
この日の為にマグロを仕入れていた。
セピユロスが釣り上げたサーモンも燻しお皿に乗せる。
それから海の幸をふんだんに使った一品。
新鮮なイカを一杯。
イカ尽くしも用意した。
ただどこでも供されるだろうから趣向を変えて刺激的なものにする。
イカには海の神アニーサが宿っている。
アニーサの言い伝えはいくらか。その一つに心の綺麗な者には悪さしないがある。
ただ心が穢れていると腹痛や下痢、嘔吐などの症状が現れると言われている。
国王様は間違えなく綺麗な心の持ち主。症状が現れることはないでしょう。
それから山の幸も楽しんでもらおう。
赤緑黄色の鮮やかなキノコを使ったキノコ汁。
国王様だけに特別に作らせた一品となっている。
それからエイドリアスの郷土料理の虫の姿焼きとドライバグ。
味見は遠慮しましたがかなり刺激的だとか。
さあこれで国王様をおもてなし出来る。
受け取って欲しい。
お食事はすべて国王様の為に作られた。
「国王様こちらもどうぞ」
アニーサ尽くしを勧める。
「いや何か動いてる気がしてのう不気味なんじゃが」
「気のせいでございます。それでしたらこのドライバグなどはいかがですか? 」
「うぐぐ…… 喰わんといかんか? 」
明らかに嫌な顔をする国王様。
「一口でもお召し上がりください」
「おええ…… とても食えたものではないわ」
「そうおっしゃらずに。これなどいかがですか? 」
毒…… ではなくキノコ汁を押し付ける。
「美味ではあるが痺れる。うむこれが新世界? 」
もはや国王様は我を失っている。
仕上げにデザート。
「アップルパイでございます」
「おう熱々じゃな。うん? こんな味であったかな? 」
「はい肥満気味の国王様の体を気遣いまして砂糖の代わりに塩を使いました」
「うむ。通りで甘くない訳じゃな」
もう呆れ気味の国王様。
これくらい刺激的な歓迎であれば国王様の記憶に残るでしょう。
「では儂はそろそろ寝るとしよう」
「まだお残しになられてますが」
「ひえええ! 」
逃げるようにお部屋に戻られた。
晩餐会はお開き。
果たして心からのおもてなしは国王様に届いたでしょうか?
満足したのならよろしいのですが。
続く
ヴィーナが姿を見せた。
「おお、ヴィーナではないか。また大きくなって。何年振りかしれぬ」
国王様のもう一つの目的。ヴィーナとの再会。
実は国王様はヴィーナの名づけの親。
名前を頂戴するのはめったにないこと。
たまたまお越しになった時に生まれたばかりのヴィーナを見て名づけの親に。
あの頃はまだ影の薄い国王様で威厳はないに等しかった。
生まれたばかりの忙しくて不安な時にのこのこやって来た空気の読めない国王様。
こちらは疲れ切っているのに笑って歓迎しなくてはならない。苦い思い出。
あの当時はボノも優しかったしお母様もいたのでどうにでもなりましたが。
名前だって決めてあったのに酔った勢いでつけるものですからまったく。
国王様の手前受け入れざるを得なかった。本当に苦い思い出。
あの時の記憶が蘇ってくる。ああ、本当に困ったお方。
それからは毎年ヴィーナの顔を見に来られたっけ。
ヴィーナも懐いていたのでいいんですが。ただ勝手にお菓子を寄越すから苦労した。
とは言えいつも国王様にはヴィーナを大変をかわいがってもらっていた。
「国王様。お久しぶりでございます」
「ヴィーナよ。国王様などではなくバキーと呼んでくれ」
バキーは小さい頃にヴィーナが勝手につけたあだ名。
由来を聞いたら国王様はお怒りになるだろうな。
メイドの誰かが口が悪いものだから馬鹿国王と陰で呼んでいた。
それをヴィーナが聞いてしまいそのまま言いそうになったのでバキーに直す。
それ以降国王様はバキーと呼ばれるようになった。
「バキー。私もう子供じゃない」
「ははは…… いいではないか。さあ一緒に遊ぼう」
ヴィーナは遊んでられる状況ではない。
ボノは行方不明。お供が銃殺されてるところから決して楽観視できない。
セピユロスもボノ殺しの疑いで捕えられている。
私は彼女の精神状態も考えてお供の件は知らせないことにした。
すべてが解決してから話すことに。
だからなぜセピユロスが捕えられているのかも理解できてない。
こうして国王様との楽しい一時は過ぎて行く。
国王様の為に盛大な晩餐会を開催する。
この日の為にマグロを仕入れていた。
セピユロスが釣り上げたサーモンも燻しお皿に乗せる。
それから海の幸をふんだんに使った一品。
新鮮なイカを一杯。
イカ尽くしも用意した。
ただどこでも供されるだろうから趣向を変えて刺激的なものにする。
イカには海の神アニーサが宿っている。
アニーサの言い伝えはいくらか。その一つに心の綺麗な者には悪さしないがある。
ただ心が穢れていると腹痛や下痢、嘔吐などの症状が現れると言われている。
国王様は間違えなく綺麗な心の持ち主。症状が現れることはないでしょう。
それから山の幸も楽しんでもらおう。
赤緑黄色の鮮やかなキノコを使ったキノコ汁。
国王様だけに特別に作らせた一品となっている。
それからエイドリアスの郷土料理の虫の姿焼きとドライバグ。
味見は遠慮しましたがかなり刺激的だとか。
さあこれで国王様をおもてなし出来る。
受け取って欲しい。
お食事はすべて国王様の為に作られた。
「国王様こちらもどうぞ」
アニーサ尽くしを勧める。
「いや何か動いてる気がしてのう不気味なんじゃが」
「気のせいでございます。それでしたらこのドライバグなどはいかがですか? 」
「うぐぐ…… 喰わんといかんか? 」
明らかに嫌な顔をする国王様。
「一口でもお召し上がりください」
「おええ…… とても食えたものではないわ」
「そうおっしゃらずに。これなどいかがですか? 」
毒…… ではなくキノコ汁を押し付ける。
「美味ではあるが痺れる。うむこれが新世界? 」
もはや国王様は我を失っている。
仕上げにデザート。
「アップルパイでございます」
「おう熱々じゃな。うん? こんな味であったかな? 」
「はい肥満気味の国王様の体を気遣いまして砂糖の代わりに塩を使いました」
「うむ。通りで甘くない訳じゃな」
もう呆れ気味の国王様。
これくらい刺激的な歓迎であれば国王様の記憶に残るでしょう。
「では儂はそろそろ寝るとしよう」
「まだお残しになられてますが」
「ひえええ! 」
逃げるようにお部屋に戻られた。
晩餐会はお開き。
果たして心からのおもてなしは国王様に届いたでしょうか?
満足したのならよろしいのですが。
続く
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