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哀れな犠牲者

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ボノ行方不明。
急展開を迎える。
思いもよらない事態により二人の間にかつてない程の距離ができる。
心理的ではなく物理的に。

翌日。
日の出と共に捜索を開始。
「たぶんこの辺りで」
山の中腹。木々が進路を塞いでいる。
「気付いた時にはどこにも。一時間は探し回ったのですが叫んでも返事がなく。
ボノはこの辺りに詳しいと言ってましたので心配ないかと思い一人下山。
どうにか日が暮れる前に戻って来た次第です」

よくあることと執事が友人の体験談を語って見せる。
「獲物を発見するとどうしても周りが見えなくなり猟銃を持って追いかけてしまう。
その時仲間が別の獲物に目が行ってしまえばもうバラバラ。
友人ははぐれていつの間にか別々の山にいたと大げさに語っていました。
人は夢中になると周りが分からなくなるものです」
そんな執事は狩猟は未経験。邪魔になってはとボノに同行するのもお断りしている。
まあ執事の仕事でもないですからね。それにボノの執事でもない。
あなたは私の執事でしょう? ご主人様に仕えず旦那様に尻尾を振ってどうするの?
こんな風にボノに近いから信用できないのよね。
しかも隠してるとは言えボノとの関係にも薄々は気づいてるはず。
もちろん執事の人柄はよく存じてますので私を裏切る真似はしないと信じてますが。
ただ噂の出所でないとは言えません。

「さあ早く旦那様を! 」
今回のボノ失踪に多少の責任を感じているようでいつも以上に熱くなっている。
息子の件もあり空回りしている。大丈夫でしょうか?
誰も執事の彼に意見が言えない。
主人である私もセピユロスとのこともありどうしても強く言えない。
「皆さん手分けして探してください」
私に代わり執事が音頭を取る。

さあ捜索開始。
セピユロスの言を信じて出来るだけ広範囲を見て回る。
「どうです? 」
「いえ。まだ見つかりません」
セピユロスに頼み馬を飛ばしてもらったがやはり誰もいなかったと。
散らばったメイドたちも戻ってきたがやはり収穫なし。
どこかに避難でもしたのでしょうか?
辺りを探し回ったが結果は散々。小屋の一つも見つからずにただ歩き回っただけ。

「ご主人様。あれは何でしょう? 」
随行メイドが木の影に隠れた物体を発見。
きゃああ!
うわああ!
「駄目だディーテ! 見てはなりません! 」
セピユロスが止めに入るが一歩遅い。
「まさかこれ…… 」
哀れなボノの成れの果て? 何てことでしょう……
「これは…… 」
驚きを隠せない。

「いえ旦那様ではありません。彼はお付きの者。状態から言って殺害されたかと」
執事が断定する。
銃殺されたとのこと。何て恐ろしいのでしょう?
だからあれほどハンティングは止めるように忠告したのに。
最悪の事態になってしまった。
犯人は絞られる。
今行方不明のボノかまたは……
これでセピユロスへの疑いが高まった。
猟銃を片手に様子を見守るセピユロス。
もし仮に彼が犯人だとしてもここで無理に取り押さえれば犠牲が出る。
慎重に様子を見守る。
執事が目配らせするので首を振る。
「ボノは一体どこへ? 」
ボノの消息は未だに掴めていない。
「それは聞くのがよろしいかと」
執事の鋭い視線がセピユロスに。
これは最悪の事態。

「ははは…… まさか皆さんは私をお疑いで? ディーテも何か言ってください」
セピユロス絶体絶命のピンチ。
ここで下手に庇い立てすれば求心力を失う。
「よろしいですねセピユロス様? 」
この状況では仕方がない。彼を捕えなければ誰も納得しない。
大丈夫。まだ何とかなります。ボノさえ見つかればね。
セピユロスは逃げることもなく捕えられてしまう。

「ちょっと待って。これは何かの勘違いです。ディーテ! 」
セピユロスの必死の訴えが虚しく掻き消される。
「ご主人様。本当によろしいですね? 」
執事は本気らしい。
「分かりました。残念ですが一番疑わしいのはセピユロスさん」
認めざるを得ない。
昨日一緒に行動を共にした彼が一番怪しいのは明らかだ。
主人として否定できない。
せめてもの抵抗として疑いがあると言う表現を使う。
セピユロスは怪しいがまだ疑わしいだけ。
とにかくボノを見つけるのが最優先。
セピユロスについては執事に任せることにした。

「さあもう一度」
捜索を再開。
果たしてボノは生きているのでしょうか?
ボノが無事に戻ることを心から願っている。
メイドたちの為にもセピユロスの為にもヴィーナの為にも。

               続く
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