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戻って来たセピユロス

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セピユロスが戻って来た。なぜかボノの姿が見当たらない。
「あらセピユロスさん一人ですか」
猟銃からは明らかに撃った時にする煙の匂いが。
「はい。実はつい興奮してしまいまして離れ離れになった次第です」
ボノが現在どこにいるのか分からないらしい。
まったくハンティングに夢中になって置いて行く人がありますか?
いくら趣味とは言え熱中し過ぎるのも困りもの。
そもそも私はハンティングは前々から反対していた。
それなのに勝手に出かけてしまうんだから……
あらあら今はそんな時ではない。ボノを探さなくては。

もう日暮れ。どんどん暗くなっていく。
「申し訳ない。本当にはぐれてしまって…… 」
いつものように頭を掻いて下手な言い訳を繰り返す。
「セピユロスさん? 」
「本当に申し訳ありません。一体どこにいったのかまったく。ははは…… 」
ボノがどこに行ったか見当もつかないと。笑いごとではないのですが。

「もうセピユロスさんたっらまったく…… それで楽しめましたか? 」
追及し続けるのも悪いので切り替える。
セピユロスたちは朝早くに出て一日中楽しんだことになる。
国王様歓迎の準備も手伝わずに好き勝手なことばかり。
確かに居ても役に立ったかどうか。邪魔になるよりはよっぽどいいですが。
「はい時間があっと言う間に過ぎる感覚です」
獲物が見当たらない。まさか一匹も仕留められなかったの?
「収穫は? 」
「それが難しくてまだ自分では捕まえられませんでした。
ボノに頼りっきりで情けない限りです」
正直に自分の実力の無さを嘆いたセピユロス。
なかなか真似出来ることではない。
困った…… ボノが戻ってこないと詳しい話が聞けない。

「セピユロスさん。何かありました? 」
念のために聞いてみる。
トラブルがあっても不思議はない。
だがセピユロスは首を振る。
ただの思い過ごしだったらしい。
まあいいでしょう。ボノが戻るのを待ちましょう。
本当に戻って来るなら。
今現在ボノが動けるなら。

「お呼びですかご主人様? 」
「ふふふ…… 絶妙なタイミングね」
「お褒めに与り光栄ですご主人様」
影のメイドが姿を見せる。
「まさかボノが? 」
「それはまだ何とも。ただ最近旦那様の動きが活発に。関係がないとは言えません」
影のメイドにはボノの様子を探ってもらっている。
「申し訳ありません。これ以上はちょっと…… 
近づき過ぎて気付かれては元も子もありませんから」
「今ボノがどこにいるか分からないの? 」
「いえ、セピユロス様とお出かけになったので問題ないかと…… 」
「ありがとう。引き続きボノの情報と行方を探って」
影のメイドもボノの行方を失った。ボノ捜索は難航を極めそうだ。

結局戻って来ることはなかった。
ボノの消息が分からない。今までこんなことは…… 一体どこにいると言うの?
仕方なく尋問することに。

セピユロスを部屋に通す。
「ディーテ! 」
挨拶もすっ飛ばしていきなり抱き着いて来る獣のようなセピユロス。
嬉しいけれど今はそんな時ではない。
「ふざけないでセピユロス! ボノをどこへ隠したの? 」
怒りを露わにする。
「ははは…… 何を言ってるんですか? 」
相変わらずマイペースのセピユロス。今は本当にそんな時ではない。
「ボノがまだ帰ってこない? どう言うことですか? 」
ボノと一緒にいたのはセピユロスだけ。
疑われて当然。ただ危機感がセピユロスには見られない。
今ボノだけでなくセピユロスのことまで。不安で胸が張りさけそう。

「どうしましたディーテ? ボノならきっと大丈夫ですよ」
呑気に笑うどこか間の抜けた感じのセピユロス。
「いい加減にして! ボノを。私のボノを返して! 」
溢れる感情。何だかよく分からない。
私はボノを疎ましく思っていた。
セピユロスとの仲が深まれば深まるほどボノを疎ましく思った。
あんなメイドに手を出すような女好きのボノが居なくなったらどれだけいいか。
でも実際居なくなると不思議なもので追い求めてしまう。
かつて私を愛した者。私が愛した者。

ボノを失う訳にはいかない。
それは夫としてでもなくヴィーナの父親としてでもない。
ボノはこの屋敷に居なければならない存在。
そうこの屋敷の主人としてボノを求めている。
いくら離婚話が出ているとはいえ見捨てはしない。
それが屋敷の主人として当然の行為。
私はご主人様なのだから。


                 続く
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