なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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チャウチャウ変身

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夜。
今夜も訪問を受ける。
「ディーテ」
優しく微笑みかけると我慢できずにキスを迫る情熱的なセピユロス。
まだ幼く危なっかしいがそこも魅力の一つ。
「どうしたのセピユロス? 」
メイドの手前言い訳を用意しなくてはいけない。
密会をメイドに見られでもしたら今まで積み上げた信頼が崩れ落ち求心力を失う。
そうなれば没落してしまう…… なんてことはないでしょうけど。
「いやその…… 」
冷たい態度に戸惑いを見せるセピユロス。
「そうでしたねセピユロスさん。あなたにはしっかりしてもらわないと困ります。
それから…… 」
「失礼します! ご主人様そちらにチャウチャウが来ていませんか? 」
メイドがノックもせずに入って来た。
こんなこともあるから油断できない。

「セピユロス様…… これは失礼しました」
訝しる様子のメイド。これは気付かれたか?
「ああ気にしないで。今お説教していたところです。
さあセピユロスさん。きちんとヴィーナに伝えるんですよ。
最近あなた方は弛んでいます。いいですね? 」
「ははあ! 有難きお言葉」
セピユロスは演技がオーバーでやり過ぎに見える。
メイドがその様子をチラチラ。
「ではお行きなさい」
セピユロスは言われるまま退出。
これでどうにかごまかせたでしょう。
深夜の密会などと噂されたら堪りませんからね。

「もうまったく最近の方と来たら…… それでチャウチャウがどうしました? 」
「それがまた行方不明でして」
何をそんなに気にしてるのでしょう?
猫は勝手気ままな生き物。人間が支配しようとするのは間違っている。
出来ることと言えば食事を与え可愛がるぐらい。躾けようとしても噛まれるだけ。
いくら国王様のお下がりだとしても猫は猫。
「放っておきなさい。そのうち姿を現すでしょう」
楽観的かもしれないがそんなもの。
「それが…… 」
メイドはなぜか引き下がろうとしない。

「ちょっと待って。いつ頃から居ないのです? 」
「それが昨日から姿を見かけておりません」
「ボノのところに閉じ込められてるかもしれませんね」
冗談ですが果たして通じるかどうか。
「いえ旦那様のところはすでに伺いました」
あらあらもう先回りしたよう。さすがは我がメイド。仕事が早い。
「確かにどうしてしまったのかしらチャウチャウったら」
「はあ…… 」
「大丈夫よ。そのうち姿を見せるから心配しないで」
「ですが…… 明後日には国王様がお越しになられます」
そうだ余計なのが来るんだった。これは急がなくてはなりませんね。

一日かけてチャウチャウを綺麗に。
まず全身を水洗い。
ブラシで毛並みを整える。
国王様が怪我されないように爪を切る。
メイドに定期的に切らせてますがチャウチャウが嫌がって切らせてくれない。
だから今は伸ばし放題。そのせいでボノに群がるメイドたちが犠牲になる。
手や足を引っ掻かれるとそこからばい菌が入るのですぐに手当てが必要。
念のためにお医者様に見せる。
そして治った暁にはこの屋敷から出て行ってもらう。
そのルートを辿ったメイドは意外にも多い。

爪を切ったら今度は服を着せる。
国王様が毛だらけになられては大変。
猫好きの国王様は笑って許してくれますがお付の者にお叱りを受けますからね。
服も最高級の物を用意。
ただすぐに太るものだから着れなくなってしまう。
もったいないのでチャウチャウのお下がりをどうにかしたい。
しかし誰も引き取ってくれずに最終的に捨てることになる。

これでほぼ完成。
後は食事を控えさせる。
だがチャウチャウはもちろん言うことを聞かないので意味ないが。
ブクブクに太った国王様が同じく太ったチャウチャウを抱く姿。
見ているこちらは堪らない。つい笑ってしまう。
国王様は陽気な方だから許してくださるがお付の者の鋭い視線が刺さる。
前回も堪えきれずに笑ってしまいました。

「これは大変。早くチャウチャウを探し出さなくては」
「いえそれは私どもが! 」
「いいえ。私も手伝います! 」
チャウチャウがどこにいるかは大体分かっている。
「ディーテ。私もお手伝いさせてください」
セピユロスも捜索隊に加わってくれた。
夜中のチャウチャウ探しもオツなもの。
さあまずは情報収集から始めましょうか。

              続く
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