85 / 125
チャウチャウ変身
しおりを挟む
夜。
今夜も訪問を受ける。
「ディーテ」
優しく微笑みかけると我慢できずにキスを迫る情熱的なセピユロス。
まだ幼く危なっかしいがそこも魅力の一つ。
「どうしたのセピユロス? 」
メイドの手前言い訳を用意しなくてはいけない。
密会をメイドに見られでもしたら今まで積み上げた信頼が崩れ落ち求心力を失う。
そうなれば没落してしまう…… なんてことはないでしょうけど。
「いやその…… 」
冷たい態度に戸惑いを見せるセピユロス。
「そうでしたねセピユロスさん。あなたにはしっかりしてもらわないと困ります。
それから…… 」
「失礼します! ご主人様そちらにチャウチャウが来ていませんか? 」
メイドがノックもせずに入って来た。
こんなこともあるから油断できない。
「セピユロス様…… これは失礼しました」
訝しる様子のメイド。これは気付かれたか?
「ああ気にしないで。今お説教していたところです。
さあセピユロスさん。きちんとヴィーナに伝えるんですよ。
最近あなた方は弛んでいます。いいですね? 」
「ははあ! 有難きお言葉」
セピユロスは演技がオーバーでやり過ぎに見える。
メイドがその様子をチラチラ。
「ではお行きなさい」
セピユロスは言われるまま退出。
これでどうにかごまかせたでしょう。
深夜の密会などと噂されたら堪りませんからね。
「もうまったく最近の方と来たら…… それでチャウチャウがどうしました? 」
「それがまた行方不明でして」
何をそんなに気にしてるのでしょう?
猫は勝手気ままな生き物。人間が支配しようとするのは間違っている。
出来ることと言えば食事を与え可愛がるぐらい。躾けようとしても噛まれるだけ。
いくら国王様のお下がりだとしても猫は猫。
「放っておきなさい。そのうち姿を現すでしょう」
楽観的かもしれないがそんなもの。
「それが…… 」
メイドはなぜか引き下がろうとしない。
「ちょっと待って。いつ頃から居ないのです? 」
「それが昨日から姿を見かけておりません」
「ボノのところに閉じ込められてるかもしれませんね」
冗談ですが果たして通じるかどうか。
「いえ旦那様のところはすでに伺いました」
あらあらもう先回りしたよう。さすがは我がメイド。仕事が早い。
「確かにどうしてしまったのかしらチャウチャウったら」
「はあ…… 」
「大丈夫よ。そのうち姿を見せるから心配しないで」
「ですが…… 明後日には国王様がお越しになられます」
そうだ余計なのが来るんだった。これは急がなくてはなりませんね。
一日かけてチャウチャウを綺麗に。
まず全身を水洗い。
ブラシで毛並みを整える。
国王様が怪我されないように爪を切る。
メイドに定期的に切らせてますがチャウチャウが嫌がって切らせてくれない。
だから今は伸ばし放題。そのせいでボノに群がるメイドたちが犠牲になる。
手や足を引っ掻かれるとそこからばい菌が入るのですぐに手当てが必要。
念のためにお医者様に見せる。
そして治った暁にはこの屋敷から出て行ってもらう。
そのルートを辿ったメイドは意外にも多い。
爪を切ったら今度は服を着せる。
国王様が毛だらけになられては大変。
猫好きの国王様は笑って許してくれますがお付の者にお叱りを受けますからね。
服も最高級の物を用意。
ただすぐに太るものだから着れなくなってしまう。
もったいないのでチャウチャウのお下がりをどうにかしたい。
しかし誰も引き取ってくれずに最終的に捨てることになる。
これでほぼ完成。
後は食事を控えさせる。
だがチャウチャウはもちろん言うことを聞かないので意味ないが。
ブクブクに太った国王様が同じく太ったチャウチャウを抱く姿。
見ているこちらは堪らない。つい笑ってしまう。
国王様は陽気な方だから許してくださるがお付の者の鋭い視線が刺さる。
前回も堪えきれずに笑ってしまいました。
「これは大変。早くチャウチャウを探し出さなくては」
「いえそれは私どもが! 」
「いいえ。私も手伝います! 」
チャウチャウがどこにいるかは大体分かっている。
「ディーテ。私もお手伝いさせてください」
セピユロスも捜索隊に加わってくれた。
夜中のチャウチャウ探しもオツなもの。
さあまずは情報収集から始めましょうか。
続く
今夜も訪問を受ける。
「ディーテ」
優しく微笑みかけると我慢できずにキスを迫る情熱的なセピユロス。
まだ幼く危なっかしいがそこも魅力の一つ。
「どうしたのセピユロス? 」
メイドの手前言い訳を用意しなくてはいけない。
密会をメイドに見られでもしたら今まで積み上げた信頼が崩れ落ち求心力を失う。
そうなれば没落してしまう…… なんてことはないでしょうけど。
「いやその…… 」
冷たい態度に戸惑いを見せるセピユロス。
「そうでしたねセピユロスさん。あなたにはしっかりしてもらわないと困ります。
それから…… 」
「失礼します! ご主人様そちらにチャウチャウが来ていませんか? 」
メイドがノックもせずに入って来た。
こんなこともあるから油断できない。
「セピユロス様…… これは失礼しました」
訝しる様子のメイド。これは気付かれたか?
「ああ気にしないで。今お説教していたところです。
さあセピユロスさん。きちんとヴィーナに伝えるんですよ。
最近あなた方は弛んでいます。いいですね? 」
「ははあ! 有難きお言葉」
セピユロスは演技がオーバーでやり過ぎに見える。
メイドがその様子をチラチラ。
「ではお行きなさい」
セピユロスは言われるまま退出。
これでどうにかごまかせたでしょう。
深夜の密会などと噂されたら堪りませんからね。
「もうまったく最近の方と来たら…… それでチャウチャウがどうしました? 」
「それがまた行方不明でして」
何をそんなに気にしてるのでしょう?
猫は勝手気ままな生き物。人間が支配しようとするのは間違っている。
出来ることと言えば食事を与え可愛がるぐらい。躾けようとしても噛まれるだけ。
いくら国王様のお下がりだとしても猫は猫。
「放っておきなさい。そのうち姿を現すでしょう」
楽観的かもしれないがそんなもの。
「それが…… 」
メイドはなぜか引き下がろうとしない。
「ちょっと待って。いつ頃から居ないのです? 」
「それが昨日から姿を見かけておりません」
「ボノのところに閉じ込められてるかもしれませんね」
冗談ですが果たして通じるかどうか。
「いえ旦那様のところはすでに伺いました」
あらあらもう先回りしたよう。さすがは我がメイド。仕事が早い。
「確かにどうしてしまったのかしらチャウチャウったら」
「はあ…… 」
「大丈夫よ。そのうち姿を見せるから心配しないで」
「ですが…… 明後日には国王様がお越しになられます」
そうだ余計なのが来るんだった。これは急がなくてはなりませんね。
一日かけてチャウチャウを綺麗に。
まず全身を水洗い。
ブラシで毛並みを整える。
国王様が怪我されないように爪を切る。
メイドに定期的に切らせてますがチャウチャウが嫌がって切らせてくれない。
だから今は伸ばし放題。そのせいでボノに群がるメイドたちが犠牲になる。
手や足を引っ掻かれるとそこからばい菌が入るのですぐに手当てが必要。
念のためにお医者様に見せる。
そして治った暁にはこの屋敷から出て行ってもらう。
そのルートを辿ったメイドは意外にも多い。
爪を切ったら今度は服を着せる。
国王様が毛だらけになられては大変。
猫好きの国王様は笑って許してくれますがお付の者にお叱りを受けますからね。
服も最高級の物を用意。
ただすぐに太るものだから着れなくなってしまう。
もったいないのでチャウチャウのお下がりをどうにかしたい。
しかし誰も引き取ってくれずに最終的に捨てることになる。
これでほぼ完成。
後は食事を控えさせる。
だがチャウチャウはもちろん言うことを聞かないので意味ないが。
ブクブクに太った国王様が同じく太ったチャウチャウを抱く姿。
見ているこちらは堪らない。つい笑ってしまう。
国王様は陽気な方だから許してくださるがお付の者の鋭い視線が刺さる。
前回も堪えきれずに笑ってしまいました。
「これは大変。早くチャウチャウを探し出さなくては」
「いえそれは私どもが! 」
「いいえ。私も手伝います! 」
チャウチャウがどこにいるかは大体分かっている。
「ディーテ。私もお手伝いさせてください」
セピユロスも捜索隊に加わってくれた。
夜中のチャウチャウ探しもオツなもの。
さあまずは情報収集から始めましょうか。
続く
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。


〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。


人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる