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静寂
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秘密の特訓が長引いたせいでお食事の時間に遅れてしまった。
まあ私が上達しないのがいけないんですけどね。
どうしたのでしょうこの静寂は?
静かだわ。静か。でも静か過ぎて寂しい。
お食事は静かにゆっくり過ぎて行く。
いつもムシャムシャ、グビグビの美食家でマイペースなボノの姿がない。
どうしてしまったのだろう? セピユロスも元気がないようだし。
ヴィーナは不気味なほど笑顔ですが元々静か。
話の中心のボノが居ないと盛り上がりに欠ける。
結局ボノは夕食に現れなかった。
メイドの話では今日は戻らないとのこと。
一体どこに行ったのでしょうね。まあどうでもいいですけど……
今年に入って初めてのこと。どうも胸騒ぎがする。
私の監視を潜り抜け何かよからぬことを考えていてもおかしくはない。
別に四六時中監視などしてません。メイドの報告を受けてるだけです。
ボノについてはもう本人の好きなようにさせている。
いちいち口出しするのも面倒ですからね。
どのような御用でお出かけになったか知りませんが明日になれば分かること。
気にする程のことでもない。どうせ女のところでしょう?
でも…… せっかく今後のことを決めようと思っていたのに。
やはり肝心な時にいない。頼りにならないボノ。
ヴィーナの思い通りになってしまう。
ヴィーナは静かだ。
どうせ覆ることはないと考えてるのだろう。
私もセピユロスの家に無理に連れて行かずに我が屋敷に住まわせるのが良いかと。
もちろんご両親と村長らはここで寛がれて構わない。
ですがその他の者はメイドの館かその隣りに。間違ってもここではない。
得体のしれない輩を招き入れるのは賢いとは言えない。
受け入れはしますが疑ってかかるのは当然のこと。
執事の話では明日遅くにやって来るそう。
受け入れも可能だし問題ない。不満が出ることもないはず。
これで肩の荷が下りる。
後は再建するまで見守ってあげましょう。
そんなことばかり考えていたせいかいつの間にかお食事を終える。
せっかくのご馳走だったのに食べた気がしなかった。
ボノが居ないせいかセピユロスも消極的。
両親のこともありまだ落ち込んでいるよう。
元気を出してセピユロス。
夜にはいつものあなたに戻ってるんでしょうね。
私としてもそちらの方がよろしくてよ。
「失礼しました」
執事に薬の件の手配を頼む。
さあそろそろ時間かな。
昨夜大胆にも彼の元へ向かった。
密会を果たした訳だけど思った以上にスリリングだった。
お隣にはヴィーナが居てしかもそのヴィーナが探しにやって来た。
最悪の事態を避けるために隠れる羽目に。
結果的に回避に成功。
危うく鉢合わせするところをどうにか躱す。
今日は約束をしていない。
セピユロスは来るだろうか?
昨日の今日だから警戒が厳しいかもしれない。
そうなっては危険だし第一会ってどうしようとも考えていない。
無理して会わなくてもいい。
密会は心が躍るがさすがに危険すぎる。
疑われてる状況では大人しくしてるのが一番。
現在日付過ぎ。
いつもなら訪ねてくる頃合い。
ああ来てほしい。でも来てほしくない。
セピユロス。私を困らせるあなたが憎い。
待ち焦がれる私をお許しください。
不確かな時こそ燃えてしまう。
お願い来てセピユロス。
コンコン
コンコン
待ちに待った訪問の合図。
この時間に来る非常識な方。
それはセピユロスでしかありえない。
ああどうして来てしまったの?
無理をさせていないかしら。
彼の誠意に応えなくてはいけません。
それがマナー。
ただ私が気付かずに眠ってしまっていたらどうしたでしょう?
一、二度とノックをする。それでも反応がなければ諦めて戻るだろうか?
「お入りください。お待ちしておりました」
セピユロスを招き入れる。
これが正しいことかと問われれば分からない。
ヴィーナを裏切っている。裏切り続けていると激しい罪悪感。
自分がやっていることは一時の過ち。
その過ちに気付いてながらつい流されてしまう。
流されてしまう。甘い誘惑に。
流されてしまう。偽りの優しさに。
どれだけセピユロスを思っていたか。
もう止まらない。
挨拶も早々に抱きしめる。彼もそれに応えるように強く。
なぜこんな風に隠れて会わなければならないのか?
自分の運命を呪った。
続く
まあ私が上達しないのがいけないんですけどね。
どうしたのでしょうこの静寂は?
静かだわ。静か。でも静か過ぎて寂しい。
お食事は静かにゆっくり過ぎて行く。
いつもムシャムシャ、グビグビの美食家でマイペースなボノの姿がない。
どうしてしまったのだろう? セピユロスも元気がないようだし。
ヴィーナは不気味なほど笑顔ですが元々静か。
話の中心のボノが居ないと盛り上がりに欠ける。
結局ボノは夕食に現れなかった。
メイドの話では今日は戻らないとのこと。
一体どこに行ったのでしょうね。まあどうでもいいですけど……
今年に入って初めてのこと。どうも胸騒ぎがする。
私の監視を潜り抜け何かよからぬことを考えていてもおかしくはない。
別に四六時中監視などしてません。メイドの報告を受けてるだけです。
ボノについてはもう本人の好きなようにさせている。
いちいち口出しするのも面倒ですからね。
どのような御用でお出かけになったか知りませんが明日になれば分かること。
気にする程のことでもない。どうせ女のところでしょう?
でも…… せっかく今後のことを決めようと思っていたのに。
やはり肝心な時にいない。頼りにならないボノ。
ヴィーナの思い通りになってしまう。
ヴィーナは静かだ。
どうせ覆ることはないと考えてるのだろう。
私もセピユロスの家に無理に連れて行かずに我が屋敷に住まわせるのが良いかと。
もちろんご両親と村長らはここで寛がれて構わない。
ですがその他の者はメイドの館かその隣りに。間違ってもここではない。
得体のしれない輩を招き入れるのは賢いとは言えない。
受け入れはしますが疑ってかかるのは当然のこと。
執事の話では明日遅くにやって来るそう。
受け入れも可能だし問題ない。不満が出ることもないはず。
これで肩の荷が下りる。
後は再建するまで見守ってあげましょう。
そんなことばかり考えていたせいかいつの間にかお食事を終える。
せっかくのご馳走だったのに食べた気がしなかった。
ボノが居ないせいかセピユロスも消極的。
両親のこともありまだ落ち込んでいるよう。
元気を出してセピユロス。
夜にはいつものあなたに戻ってるんでしょうね。
私としてもそちらの方がよろしくてよ。
「失礼しました」
執事に薬の件の手配を頼む。
さあそろそろ時間かな。
昨夜大胆にも彼の元へ向かった。
密会を果たした訳だけど思った以上にスリリングだった。
お隣にはヴィーナが居てしかもそのヴィーナが探しにやって来た。
最悪の事態を避けるために隠れる羽目に。
結果的に回避に成功。
危うく鉢合わせするところをどうにか躱す。
今日は約束をしていない。
セピユロスは来るだろうか?
昨日の今日だから警戒が厳しいかもしれない。
そうなっては危険だし第一会ってどうしようとも考えていない。
無理して会わなくてもいい。
密会は心が躍るがさすがに危険すぎる。
疑われてる状況では大人しくしてるのが一番。
現在日付過ぎ。
いつもなら訪ねてくる頃合い。
ああ来てほしい。でも来てほしくない。
セピユロス。私を困らせるあなたが憎い。
待ち焦がれる私をお許しください。
不確かな時こそ燃えてしまう。
お願い来てセピユロス。
コンコン
コンコン
待ちに待った訪問の合図。
この時間に来る非常識な方。
それはセピユロスでしかありえない。
ああどうして来てしまったの?
無理をさせていないかしら。
彼の誠意に応えなくてはいけません。
それがマナー。
ただ私が気付かずに眠ってしまっていたらどうしたでしょう?
一、二度とノックをする。それでも反応がなければ諦めて戻るだろうか?
「お入りください。お待ちしておりました」
セピユロスを招き入れる。
これが正しいことかと問われれば分からない。
ヴィーナを裏切っている。裏切り続けていると激しい罪悪感。
自分がやっていることは一時の過ち。
その過ちに気付いてながらつい流されてしまう。
流されてしまう。甘い誘惑に。
流されてしまう。偽りの優しさに。
どれだけセピユロスを思っていたか。
もう止まらない。
挨拶も早々に抱きしめる。彼もそれに応えるように強く。
なぜこんな風に隠れて会わなければならないのか?
自分の運命を呪った。
続く
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