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矛盾
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どうも理解できずにいる。詳しく説明してもらうしかなさそうだ。
「もちろんセピユロスのこと」
「譲るんでしょう? 」
「ええ。でも一緒に暮らしたい」
矛盾したヴィーナ。
セピユロスを譲りそれでも一緒に暮らしたい。
どう言う心境の変化?
私たちが結ばれたらその娘として一緒に暮らしたいと。
随分勝手なこと。でもそれって理想とも言える。
あとはボノさえどうにかすれば…… ダメ。さすがにこれ以上を望んではいけない。
私たちが不幸になる。湧いた感情は決して清らかなものではない。
セピユロスとの幸せのために犠牲を強いるのは間違っている。
国王様やメイドたちにも迷惑が掛ることにもなる。慎重に慎重に。
「ねえヴィーナ。あなた戻ってくるつもり? 」
「まさか。話聞いていたの? 村の人たちを引き取ってあげて。
私の家でもセピユロスの家でも構わないから二人っきりで静かに暮らしたい。
その為にお母様に頼んでるんでしょう」
どうもかみ合ってない。ヴィーナと私にはとんでもない溝が出来てしまってるよう。
飛び越えることのできない見えない溝が二人を隔てる。
セピユロスを介して縮まったように見えたのは錯覚で実際は広がってしまっている。
もちろんそうなることは百も承知。拗れた関係は修復不可能。
セピユロスとの愛を選択するからにはそれなりの代償と覚悟がいる。
「そんな話してましったっけ? 」
「もうお母様ったらもう! 」
どうやらヴィーナは二人で暮らす為に村の者を押し付けようとしている。
ただそれでは矛盾している。セピユロスの両親はどうするつもり?
「同居するなら戻って来ればいいじゃない」
「だから二人っきりで暮らすんだってば! 何度言えば理解してくれるの? 」
塞ぎ気味だったヴィーナが元気を取り戻すと元の生意気で我がままな娘に。
図々しい限り。ああ嫌になってしまう。
一体何を考えてるのかしら?
「ではセピユロスのご両親は? 」
「好きなところに行かせてあげて欲しい」
うん? やっぱり分からない。
「それで結局何の相談? 」
適当に返事をしていたのではないがどんどん違う方向に。
これ以上混乱させる訳にはいかない。
「だからセピユロス一家とその村人のお世話をお願いしたいの」
「分かりました。それであなたは何を我慢するつもり? 」
「家を分け渡してもいいと思ってる」
二人暮らしをするなら不要。余った家に住まわせるのは覚悟でも何でもない。
我慢する必要さえない。結局何も譲歩してないことになる。
これではまったく話にならない。
「要するに村人の住処を提供してやれと? 」
「うん。そんなところ」
まるで子供。主張するのもお願いするのも構いませんが図々しいとは思わないの?
「あなたの考えは分かった。でもなぜそれを私が? 」
「人助けだと思って協力してください」
これだからヴィーナは甘い。まだ子供だと言うのよ。
怒りを抑えて考えておくとだけ言う。
「お願い。これが私たち二人にとって一番幸せだと思う」
まだ言ってる。困ったヴィーナ。
人助けを人に頼ってどうする気? 助ける気があるのかも疑問ですが。
まさか上手く行ったら自分の手柄だと恩着せがましく言い張るつもり?
どうにかヴィーナの追及を逃れた。
一時はどうなるかと思った。修羅場も覚悟した。
ですがヴィーナが知ってるはずがない。
誰一人気が付きはしない。私とセピユロスとの関係。
セピユロスは私を愛してくれている。私も応える時。
待って…… これはやはり悪くない提案。二人にとってもまたとないチャンス。
セピユロスの都合でもなく私の意図するものでもなくただの偶然。
ヴィーナの思い付き。
これは検討する価値がる。
それどころか幸運の女神が私に微笑んだとも言える。
「ご主人様? どうされました? 」
心配するメイド。
おかしくなったと思われているよう。これは気をつけなくてはいけません。
ほんの少しでも疑われるようなことをすれば二人の関係に気付かれる恐れがある。
「大丈夫。少々疲れましたが問題ありません」
常に冷静に疑われぬように振る舞う。
続く
「もちろんセピユロスのこと」
「譲るんでしょう? 」
「ええ。でも一緒に暮らしたい」
矛盾したヴィーナ。
セピユロスを譲りそれでも一緒に暮らしたい。
どう言う心境の変化?
私たちが結ばれたらその娘として一緒に暮らしたいと。
随分勝手なこと。でもそれって理想とも言える。
あとはボノさえどうにかすれば…… ダメ。さすがにこれ以上を望んではいけない。
私たちが不幸になる。湧いた感情は決して清らかなものではない。
セピユロスとの幸せのために犠牲を強いるのは間違っている。
国王様やメイドたちにも迷惑が掛ることにもなる。慎重に慎重に。
「ねえヴィーナ。あなた戻ってくるつもり? 」
「まさか。話聞いていたの? 村の人たちを引き取ってあげて。
私の家でもセピユロスの家でも構わないから二人っきりで静かに暮らしたい。
その為にお母様に頼んでるんでしょう」
どうもかみ合ってない。ヴィーナと私にはとんでもない溝が出来てしまってるよう。
飛び越えることのできない見えない溝が二人を隔てる。
セピユロスを介して縮まったように見えたのは錯覚で実際は広がってしまっている。
もちろんそうなることは百も承知。拗れた関係は修復不可能。
セピユロスとの愛を選択するからにはそれなりの代償と覚悟がいる。
「そんな話してましったっけ? 」
「もうお母様ったらもう! 」
どうやらヴィーナは二人で暮らす為に村の者を押し付けようとしている。
ただそれでは矛盾している。セピユロスの両親はどうするつもり?
「同居するなら戻って来ればいいじゃない」
「だから二人っきりで暮らすんだってば! 何度言えば理解してくれるの? 」
塞ぎ気味だったヴィーナが元気を取り戻すと元の生意気で我がままな娘に。
図々しい限り。ああ嫌になってしまう。
一体何を考えてるのかしら?
「ではセピユロスのご両親は? 」
「好きなところに行かせてあげて欲しい」
うん? やっぱり分からない。
「それで結局何の相談? 」
適当に返事をしていたのではないがどんどん違う方向に。
これ以上混乱させる訳にはいかない。
「だからセピユロス一家とその村人のお世話をお願いしたいの」
「分かりました。それであなたは何を我慢するつもり? 」
「家を分け渡してもいいと思ってる」
二人暮らしをするなら不要。余った家に住まわせるのは覚悟でも何でもない。
我慢する必要さえない。結局何も譲歩してないことになる。
これではまったく話にならない。
「要するに村人の住処を提供してやれと? 」
「うん。そんなところ」
まるで子供。主張するのもお願いするのも構いませんが図々しいとは思わないの?
「あなたの考えは分かった。でもなぜそれを私が? 」
「人助けだと思って協力してください」
これだからヴィーナは甘い。まだ子供だと言うのよ。
怒りを抑えて考えておくとだけ言う。
「お願い。これが私たち二人にとって一番幸せだと思う」
まだ言ってる。困ったヴィーナ。
人助けを人に頼ってどうする気? 助ける気があるのかも疑問ですが。
まさか上手く行ったら自分の手柄だと恩着せがましく言い張るつもり?
どうにかヴィーナの追及を逃れた。
一時はどうなるかと思った。修羅場も覚悟した。
ですがヴィーナが知ってるはずがない。
誰一人気が付きはしない。私とセピユロスとの関係。
セピユロスは私を愛してくれている。私も応える時。
待って…… これはやはり悪くない提案。二人にとってもまたとないチャンス。
セピユロスの都合でもなく私の意図するものでもなくただの偶然。
ヴィーナの思い付き。
これは検討する価値がる。
それどころか幸運の女神が私に微笑んだとも言える。
「ご主人様? どうされました? 」
心配するメイド。
おかしくなったと思われているよう。これは気をつけなくてはいけません。
ほんの少しでも疑われるようなことをすれば二人の関係に気付かれる恐れがある。
「大丈夫。少々疲れましたが問題ありません」
常に冷静に疑われぬように振る舞う。
続く
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