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神に誓って
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「ヴィーナは? 」
「それは聞かないのがマナー」
セピユロスも辛い。少しは人間の心を持っているのだろう。
ヴィーナに悪いと思っている。それは私も同じだからよく分かる。
だったらなぜ私にちょっかいを出すのかしら。
嬉しいけれどやはり理解できない。
「ねえセピユロス。本気なの? 」
二度三度と聞いた。
これからも何度も確認することだろう。
それだけあり得ないこと。
「本気です。神に誓ってあなたを愛しております」
真っ直ぐなセピユロス。
「ああセピユロス。もうダメ」
ついに我慢の限界。一定の距離を取っていたのに自分から寄っていく。
はしたない女だと思うでしょう?
好きなように罵って良い。特にボノにはその資格がある。
ヴィーナも軽蔑の目を向けるはず。
それが当然だし私だって甘んじて受けるつもり。
「セピユロス」
彼の胸の中に飛び込む。
「ディーテ。ああ止まらなくなる前に一言いいかい? 」
格好つけて何か言うつもりだ。
「もう好きにして」
「綺麗だよ」
褒めることを忘れないセピユロス。理想の男性。
若き頃のボノよりも紳士で情熱的だ。
すべてを預ける。
抱きしめ合うこと五分。
意外にも彼の方から離れる。
「どうしたのセピユロス? 」
「これ以上は怪しまれてしまう。ほらヴィーナは嫉妬深いから」
セピユロスを縛ろうとする悪い女。
それがヴィーナ。許せない。
彼女が誰であれどのような関係だろうと私には関係ない。
セピユロスを縛り苦しめる女は許さない。
「そろそろ行かなきゃ」
愛を確かめ合うにとどまった。
もっと具体的な行為はまだ先。
長い長い道のりを乗り越えて到達する終着点。
「また明日」
「ああ。出来れば明日はもっと積極的であって欲しい」
セピユロスの気持ちに応えてやりたいがどうしていいか分からない。
「どう言う意味? 」
「分からない? 」
聞いてるのに答えようとしない子供っぽいところがある。
そこも可愛いのだけど。
ああもうセピユロスの虜になっている。
これが彼の狙いだとしたら私はまんまと引っ掛かったことになる。
情けない話。引っ掛かってみたい。そう思わせるだけの不思議な魅力が彼にはある。
「教えてセピユロス。焦らすなんてあなたらしくない」
「いや大したことじゃない。今度はディーテから来てほしい。それだけなんだ」
要求するのはいい。でも出来ることと出来ないことがある。
密会はただそれだけでリスクがある。
二人が密会しているのがばれたら言い訳も不可能。
ボノはごまかせてもヴィーナは無理。
「私が? 冗談でしょう? 」
一瞬にして醒める。
ああ情熱がなくなっていく。どうしましょう?
「頼むよディーテ。今度はディーテの番」
出来ることなら叶えてあげたい。
でも私には無理。そもそもヴィーナと一緒にいるのにどうやって訪ねてこいと?
ヴィーナが体調を崩していればそれも不可能ではないですが。
見舞いついでにセピユロスのもとに。
だが現実的ではない。見られるリスクは避けるべきだ。
ボノもそう。でもヴィーナが一番堪える。
「分かりました。好きにしなさい」
セピユロスに丸投げ。
「明晩出来たら来てほしい。それが本当の愛なのか確かめるためには必要なこと」
セピユロスもまだ子供ね。もう少し成長してもらえるといい。
「でもどうやって」
「仕方がないなあ。隣の部屋は使われてないと思うから。
日付が変わる頃に来てくれないかディーテ」
ヴィーナが寝てる横で密会しようとは肝が据わっている。
「分かりました。明晩行くと致しましょう」
まあこれくらい問題ない。
ヴィーナが寝た後ゆっくり密会しようと言う魂胆らしい。
これは危険な予感。
どうしてもスリルを求めがち。
いくらでも部屋があると言うのに隣の部屋。
私にはセピユロスの考えてることが分からない。
もっと安全な方法はいくらでもあると言うのに危険極まりない。
こうしてどうにか留まった。
明日がどうなるかは分からない。
まさか早々に気付かれることもあり得る。
明日の心配は明日することにしましょう。
セピユロスと別れて一人っきりになる。
明日か……
もう読書の続きをしてる時ではない。
さあ寝てしまいましょう。
今夜のことは夢だったと考えるのが良い。
ああセピユロス。私を惑わす悪いお方。
続く
「それは聞かないのがマナー」
セピユロスも辛い。少しは人間の心を持っているのだろう。
ヴィーナに悪いと思っている。それは私も同じだからよく分かる。
だったらなぜ私にちょっかいを出すのかしら。
嬉しいけれどやはり理解できない。
「ねえセピユロス。本気なの? 」
二度三度と聞いた。
これからも何度も確認することだろう。
それだけあり得ないこと。
「本気です。神に誓ってあなたを愛しております」
真っ直ぐなセピユロス。
「ああセピユロス。もうダメ」
ついに我慢の限界。一定の距離を取っていたのに自分から寄っていく。
はしたない女だと思うでしょう?
好きなように罵って良い。特にボノにはその資格がある。
ヴィーナも軽蔑の目を向けるはず。
それが当然だし私だって甘んじて受けるつもり。
「セピユロス」
彼の胸の中に飛び込む。
「ディーテ。ああ止まらなくなる前に一言いいかい? 」
格好つけて何か言うつもりだ。
「もう好きにして」
「綺麗だよ」
褒めることを忘れないセピユロス。理想の男性。
若き頃のボノよりも紳士で情熱的だ。
すべてを預ける。
抱きしめ合うこと五分。
意外にも彼の方から離れる。
「どうしたのセピユロス? 」
「これ以上は怪しまれてしまう。ほらヴィーナは嫉妬深いから」
セピユロスを縛ろうとする悪い女。
それがヴィーナ。許せない。
彼女が誰であれどのような関係だろうと私には関係ない。
セピユロスを縛り苦しめる女は許さない。
「そろそろ行かなきゃ」
愛を確かめ合うにとどまった。
もっと具体的な行為はまだ先。
長い長い道のりを乗り越えて到達する終着点。
「また明日」
「ああ。出来れば明日はもっと積極的であって欲しい」
セピユロスの気持ちに応えてやりたいがどうしていいか分からない。
「どう言う意味? 」
「分からない? 」
聞いてるのに答えようとしない子供っぽいところがある。
そこも可愛いのだけど。
ああもうセピユロスの虜になっている。
これが彼の狙いだとしたら私はまんまと引っ掛かったことになる。
情けない話。引っ掛かってみたい。そう思わせるだけの不思議な魅力が彼にはある。
「教えてセピユロス。焦らすなんてあなたらしくない」
「いや大したことじゃない。今度はディーテから来てほしい。それだけなんだ」
要求するのはいい。でも出来ることと出来ないことがある。
密会はただそれだけでリスクがある。
二人が密会しているのがばれたら言い訳も不可能。
ボノはごまかせてもヴィーナは無理。
「私が? 冗談でしょう? 」
一瞬にして醒める。
ああ情熱がなくなっていく。どうしましょう?
「頼むよディーテ。今度はディーテの番」
出来ることなら叶えてあげたい。
でも私には無理。そもそもヴィーナと一緒にいるのにどうやって訪ねてこいと?
ヴィーナが体調を崩していればそれも不可能ではないですが。
見舞いついでにセピユロスのもとに。
だが現実的ではない。見られるリスクは避けるべきだ。
ボノもそう。でもヴィーナが一番堪える。
「分かりました。好きにしなさい」
セピユロスに丸投げ。
「明晩出来たら来てほしい。それが本当の愛なのか確かめるためには必要なこと」
セピユロスもまだ子供ね。もう少し成長してもらえるといい。
「でもどうやって」
「仕方がないなあ。隣の部屋は使われてないと思うから。
日付が変わる頃に来てくれないかディーテ」
ヴィーナが寝てる横で密会しようとは肝が据わっている。
「分かりました。明晩行くと致しましょう」
まあこれくらい問題ない。
ヴィーナが寝た後ゆっくり密会しようと言う魂胆らしい。
これは危険な予感。
どうしてもスリルを求めがち。
いくらでも部屋があると言うのに隣の部屋。
私にはセピユロスの考えてることが分からない。
もっと安全な方法はいくらでもあると言うのに危険極まりない。
こうしてどうにか留まった。
明日がどうなるかは分からない。
まさか早々に気付かれることもあり得る。
明日の心配は明日することにしましょう。
セピユロスと別れて一人っきりになる。
明日か……
もう読書の続きをしてる時ではない。
さあ寝てしまいましょう。
今夜のことは夢だったと考えるのが良い。
ああセピユロス。私を惑わす悪いお方。
続く
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