なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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求婚

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「結婚して欲しい! 」
ストレートなセピユロス。
ついに求婚される。
ああ、いつの間にか体が酷く熱を帯びている。
これはセピユロスの私への強すぎる愛の印?
それとも狂おしい程のセピユロスへの想い?
もうどちらだって構わない。
熱い熱い想いが体内を巡る。
セピユロス! セピユロス!
何て熱いのでしょう?
一体この世界は何?
まるで夢のよう。

これで彼が本気だと言うことが分かった。
それ以上に決して踏み入れてはならない領域に到達したことになる。
そう二人の関係は決して許されない。
仮にボノが許そうがヴィーナが認めようが関係ない。
誰にも祝福されることはないだろう。
本来ただ愛を確かめ合うだけで我慢すべきだった。
密会を重ねるだけで良かったのに。
でも…… 二人は次の段階に。
もし本当の祝福を受けようとするならどれだけの試練を乗り越えることになるのか。
少なくても国王からの承認を得るのが絶対条件。
これさえあれば逆に二人は堂々としてられる。
許されない秘密の関係ではなく国王公認の関係に。
誰から噂されることもなく陰口をたたかれることもない。
そのせいで辛い思いをすることもない。

「ちょっと待ってセピユロス。お忘れではありませんか?
私にはボノと言う夫が居るのです。残念ですがお受けできません」
冷静に冷静に。セピユロスはまだ若く至らない部分がある。
出来ることと出来ないことの区別がついていない。
「大丈夫。いい考えがあるんだ」
彼は自信たっぷりに言うが果たしてどんな方法があるのでしょう?
「でもセピユロス…… 」
「心配いらないよディーテ」
若干不安ですが任せてみましょう。
これだけはっきり言うのですから自信以上の何かがあるのでしょう。

「ヴィーナは本当に良いの? 別れることになるのよ? 」
彼にヴィーナへの想いを確かめる。
「ヴィーナは確かに素敵な女性でした。しかし一緒に住むのを拒絶した」
両親を大切にするセピユロスにとって同居への反対が我慢できないもの。
決定的な出来事。二人の間に亀裂が入った。
もはややり直すことは不可能だと悟ったようだ。
もちろん私だって出来れば同居したくない。
でも彼が望むならそれは決して絶対ではない。柔軟に対応するつもり。
しかも村の再建までの間。問題ないでしょう。
ヴィーナもその辺はもう少しうまくやるべきでした。
もう今更遅いですが。
「もういいんですヴィーナのことは」
完全にヴィーナから心が離れてしまった。
残念ですが仕方がありません。
どちらかを選ばなければならない決断の時。私を選んでくれた彼に応えてあげたい。

今となってはまだヴィーナと結婚してないだけまだマシ。
私が彼を信じ切れるかにかかっている。
丁度と言ってはおかしいがタイミングよくボノとの離婚話もある。
それを受け入れれば二人には立ちはだかる法的な障害はない。
ヴィーナを説得すればいい。
説得しなくてもヴィーナがセピユロスに嫌気が差せばいい。
今回の両親との同居が原因で二人の仲が冷めればヴィーナも諦めがつくでしょう。
それが一番いい筋書き。もしヴィーナと別れることがあれば晴れて私たちは結婚。
彼が本気ならそれも可能。焦ってはいけない。ゆっくり着実に。
ただヴィーナのことを思うと本当に複雑ですが。

「愛してるんだディーテ! 」
セピユロス。ああセピユロス。
あなたからどれだけその言葉を聞きたかったか。
その言葉を待っていた。
嘘ではないのですね? 信じますよ。疑おうなどとしませんよ。
「あのちょっと…… 」
再び何も言わずに唇を奪おうとするセピユロス。
何て男らしいのかしら。そして何て可愛いのかしら。
もう抵抗できない。
すべてを捧げる覚悟が出来た。

「好きだよディーテ」
「もう一度言って」
「ふふふ…… 好きだよディーテ」
「もうセピユロスったら」
「あなたを愛することをお許しください」
「セピユロス…… 誰に許しを請うつもり? 」
「それは…… 分からない」
セピユロスの気持ちはよく分かった。
私は彼の気持ちに応えようと思う。
彼が欲するのならこの身を捧げよう。

「よし歩こうか」
「待って。これ以上勘ぐられたくない。
さあ先に戻って。私はもう少し散歩しますので」
恋人気分で浮かれていてはせっかく今までのことが無駄になってしまう。
「分かったよ。ではまた」
どうにか気付かれずに済んだ。
でもこのまま外で会えばそれだけ見つかる確率は上がる。
今は気を付けるべき時。
セピユロスを思うばかりに周りが見えなくなってしまってはどうしようもない。

                続く
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