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別れ
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翌日。
お姉様は午後に屋敷を後にする。
「済まなかったねアーフリー。何もしてやれなくて。
もう行ってしまうのかい? 残念だよ本当に。また今度」
別れを惜しむボノ。何て白々しいのでしょう?
これでコロッと騙されるお姉様。
昨日のことがなかったかのよう。
いいんです。これでいい。別れ際ぐらい格好よく。
「アーフリー! アーフリー! 」
ヴィーナは本当に泣いてるじゃない。
純粋なヴィーナ。
そこまで別れを惜しまずとも会おうと思えばいつでも。
私たちと違って都会に住んでいるのだから会いに行きなさい。
セピユロスの時と同様激しく落ち込んでいるヴィーナ。
これは重症か? まるで依存してるかのように。精神状態が気になる。
セピユロスに続きお姉様にまで旅立たれた。
大きな屋敷に取り残された格好。
まあいつものことなんですけどね。
「ちょっと」
メイドにヴィーナを部屋に連れて行くよう命じる。
「分かりましたご主人様」
場違いなほどに元気なキャルム。
彼女なら大丈夫。昔からのお友達。
ヴィーナを元気づけてくれるでしょう。
部屋に戻る。
ふう疲れた。何かしたのでもないのに体が疲れてしまう。
もう私も……
おっと私まで落ち込んでどうするの?
どうヴィーナを元気づけるか。それだけを考える。
セピユロスが戻ってくればすべて解決。
肝心の彼だが…… 実家が火事に巻き込まれ見通しが立たない状況。
ヴィーナには可哀想だけど何日掛かるやら?
そう言えばヴィーナは明言しなかったがまさかあちらの家で暮らすなんてことは?
だとすればそのまま二人きりで都会に暮らすのでしょう。私は許してませんが。
もちろん家から一切の援助はしていない。
ここ五年近くはお姉様が支援していたと聞く。それも結婚するまででしょう。
その後は二人でやって行くことになるが本当に大丈夫?
今のヴィーナではとてもやっていけそうにない。
セピユロスに何かあったらどうするつもり?
彼の実家で問題が起きてもいけない。もうすでに大惨事になってますが……
考え過ぎかな。なるようにしかならないのだから。
ドンドン
ドンドン
乱暴に戸を叩く者。
いつも注意してるのに。新人メイドでしょうね。
「ご主人様。セピユロス様が明日戻られるそうです」
息を切らし飛び込んできた執事。
嬉しくて慌てた様子。
執事もヴィーナを心配していたのだろう。
「それでヴィーナ様にお知らせする前にご主人様にと。つい焦ってしまいました」
言い訳せずとも。いつもなら叱責してるところだがめでたいのだからよい。
「ありがとう。ただヴィーナは疲れているようなのでそっとしておきましょう。
どうか彼のことは明日まで秘密にしてあげてね」
一応はヴィーナを慮ってのこと。
ただ何を誤解したのか歯切れの悪い執事。
「しかし…… ヴィーナ様は…… 」
執事の気持ちも分かる。でも今無理に叩き起こす必要がない。
明日できればセピユロスが帰って来てから驚かすのが良い。
そうすれば一層二人の絆は強まる。
下手なちょっかいも邪な心が湧くこともないでしょう。
特にセピユロスが自覚を持てば二人は必ず幸せになれる。
「いいですか。明日までできれば帰還するまで黙っていて欲しい。これは命令です」
強く牽制。執事は従うしかない。
「それで他には? 」
話を終わらせるには丁度いい。
「いえお伝えすることは特に…… 」
「そうだ。息子さんの件はどうなりました」
脅すつもりで聞いたのではなくただ純粋にその後が気になった。
執事も息子も私の忠実な僕。私は彼らの責任者。
気に掛けるのは当然。
「お恥ずかしい。わが愚息がご主人様の手を煩わす事態になるとは。
本当に恥ずかしく情けない限りです」
頭を掻く執事。
そんなことはどうでもいい。掟を破った二人がどうなったかが気になる。
ただ心配していると言うよりもゴシップとして。
私にも大いに関係すること。見逃せない。
続く
お姉様は午後に屋敷を後にする。
「済まなかったねアーフリー。何もしてやれなくて。
もう行ってしまうのかい? 残念だよ本当に。また今度」
別れを惜しむボノ。何て白々しいのでしょう?
これでコロッと騙されるお姉様。
昨日のことがなかったかのよう。
いいんです。これでいい。別れ際ぐらい格好よく。
「アーフリー! アーフリー! 」
ヴィーナは本当に泣いてるじゃない。
純粋なヴィーナ。
そこまで別れを惜しまずとも会おうと思えばいつでも。
私たちと違って都会に住んでいるのだから会いに行きなさい。
セピユロスの時と同様激しく落ち込んでいるヴィーナ。
これは重症か? まるで依存してるかのように。精神状態が気になる。
セピユロスに続きお姉様にまで旅立たれた。
大きな屋敷に取り残された格好。
まあいつものことなんですけどね。
「ちょっと」
メイドにヴィーナを部屋に連れて行くよう命じる。
「分かりましたご主人様」
場違いなほどに元気なキャルム。
彼女なら大丈夫。昔からのお友達。
ヴィーナを元気づけてくれるでしょう。
部屋に戻る。
ふう疲れた。何かしたのでもないのに体が疲れてしまう。
もう私も……
おっと私まで落ち込んでどうするの?
どうヴィーナを元気づけるか。それだけを考える。
セピユロスが戻ってくればすべて解決。
肝心の彼だが…… 実家が火事に巻き込まれ見通しが立たない状況。
ヴィーナには可哀想だけど何日掛かるやら?
そう言えばヴィーナは明言しなかったがまさかあちらの家で暮らすなんてことは?
だとすればそのまま二人きりで都会に暮らすのでしょう。私は許してませんが。
もちろん家から一切の援助はしていない。
ここ五年近くはお姉様が支援していたと聞く。それも結婚するまででしょう。
その後は二人でやって行くことになるが本当に大丈夫?
今のヴィーナではとてもやっていけそうにない。
セピユロスに何かあったらどうするつもり?
彼の実家で問題が起きてもいけない。もうすでに大惨事になってますが……
考え過ぎかな。なるようにしかならないのだから。
ドンドン
ドンドン
乱暴に戸を叩く者。
いつも注意してるのに。新人メイドでしょうね。
「ご主人様。セピユロス様が明日戻られるそうです」
息を切らし飛び込んできた執事。
嬉しくて慌てた様子。
執事もヴィーナを心配していたのだろう。
「それでヴィーナ様にお知らせする前にご主人様にと。つい焦ってしまいました」
言い訳せずとも。いつもなら叱責してるところだがめでたいのだからよい。
「ありがとう。ただヴィーナは疲れているようなのでそっとしておきましょう。
どうか彼のことは明日まで秘密にしてあげてね」
一応はヴィーナを慮ってのこと。
ただ何を誤解したのか歯切れの悪い執事。
「しかし…… ヴィーナ様は…… 」
執事の気持ちも分かる。でも今無理に叩き起こす必要がない。
明日できればセピユロスが帰って来てから驚かすのが良い。
そうすれば一層二人の絆は強まる。
下手なちょっかいも邪な心が湧くこともないでしょう。
特にセピユロスが自覚を持てば二人は必ず幸せになれる。
「いいですか。明日までできれば帰還するまで黙っていて欲しい。これは命令です」
強く牽制。執事は従うしかない。
「それで他には? 」
話を終わらせるには丁度いい。
「いえお伝えすることは特に…… 」
「そうだ。息子さんの件はどうなりました」
脅すつもりで聞いたのではなくただ純粋にその後が気になった。
執事も息子も私の忠実な僕。私は彼らの責任者。
気に掛けるのは当然。
「お恥ずかしい。わが愚息がご主人様の手を煩わす事態になるとは。
本当に恥ずかしく情けない限りです」
頭を掻く執事。
そんなことはどうでもいい。掟を破った二人がどうなったかが気になる。
ただ心配していると言うよりもゴシップとして。
私にも大いに関係すること。見逃せない。
続く
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