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憔悴
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お茶会を終え今日こそは予定通りにと思った矢先、メイド頭に遭遇。
キャルムはしっかり働いてるか? 至らぬ点は無いかとしつこい。
彼女には任務を与えてる。その関係でヴィーナの元へ。
どうもそのことが耳に入ったようで。追及を受ける。
「ご主人様。キャルムを甘やかさないでください。こちらの立場もお忘れなく」
普段よりもきつい口調。勝手なことをしてと不満を述べる。
そもそもヴィーナ付きに画策したのも気に入らなかったらしい。
「その今はヴィーナのところで…… 」
「聞いております。しかしですねご主人様」
「分かってます。甘やかすなと言いたいのでしょう? ですがこれもヴィーナの為」
「ご主人様」
「お願い。ヴィーナが元気を取り戻すまでだけ」
どうにかメイド頭を説得する。
また予定が狂った。
最近ちょっとしたことで時間を取られる。
そのせいで練習もできない。
これではダメ。日課をこなせずにイライラが募る。
いつ爆発してもおかしくない。もう限界。
日課の練習を何かにつけ休んでいるので罪悪感が。
今日もだと国王様にお見せするまでに完成させられるか心配。
たぶん大丈夫などと楽観視する気にもなれない。
とにかくお食事の時間に間に合わせなければ。さあ急ぎましょう。
「ははは…… 」
一人だけマイペースの我が不肖の夫ボノ。
ボノはヴィーナが悲しんでいるにも関わらず笑っている。
自然体と言えばいいのかどうかしてると呆れればいいのか。
「ふふふ…… 」
誰も反応しないので仕方なく私が付き合ってあげる。
まったく呑気なボノ。
お食事も一人だけ残さず完食。再びワインを飲みだした。
本当に自由なボノ。
お姉様も呆れて何も言えず苦笑い。
若い頃は運動で鍛えた肉体にギラギラした目つきが堪らなく素敵だった。
でも今はどうでしょう? 筋肉も落ち若いメイドに現を抜かす哀れなボノ。
まだ国王様のように醜く太っていないのでメイドに相手されてますが。
それはそれで頭に来ます。
お酒の飲み過ぎだと何度注意したか。
気にする素振りもなく食べる量も飲む量も増えはしても減ることはない。
もう少し若い頃のようであって欲しいと願うのはいけないことでしょうか?
ああどうしてこうも変わってしまったのか。我が夫ながら残念でなりません。
でも本当はそんな些細なことどうでもいいのです。
あの頃のように優しく思いやりのあるボノで。メイドに手を出しても我慢した。
それが自分から離婚を申し込むなんてどれだけ傷ついたか分からないでしょうね。
ああ、いつの間にかボノへの悪口になってしまった。今はそんな時ではない。
ヴィーナを立ち直らせること。それはお姉様にも難しいのか。
「ヴィーナ。セピユロスさんのことは忘れるのよ。それが一番。
忘れてればその内戻って来る」
まあ説得は無理でしょうね。あまりに無責任だと自分でも思う。
「ううう…… 」
声にもならずに顔を伏せたまま。落ち込み方が昼間よりも酷くなっている。
結局お姉様もヴィーナを持て余しているよう。
ここはきつく言ってあげるのも優しさ。
「いいヴィーナ? セピユロスさんが家を留守にすることもあるでしょう。
そんな時にあなたがしっかりしないでどうするの?
まさかメイドにでも慰めてもらうつもり? それは無理。雇うお金もない。
セピユロスさんの実家は裕福とは程遠い。
あなたが都会で二人で暮らすにしてもあちらの実家に住むにしても我慢が大切です」
「今は放っておいて」
泣きじゃくるヴィーナ。
それを見かねたボノが注意する。
「でもこれもヴィーナの為よ」
「ディーテそれは言い過ぎです」
お姉様が出しゃばる。
これは家族の問題。ボノが意見を言うのは歓迎する。
でもお姉様は部外者。それこそ放っておいて。
「どう私たちと暮らすのは嫌? 」
つい余計な一言を。
挨拶に来ただけ? 私たちを蔑ろにしていいはずがない。
出来ればここで二人で幸せになってもらいたい。
ボノだってそれを望んでいる。
もしその気があるなら戻って来て欲しい。
ここの主人になるのはヴィーナ以外いない。
ヴィーナが引き継がなければ誰が家を守れると言うの?
私がここの主人を退いた後のこと。ゆっくりでいい。時間の余裕はある。
ただ本人がそれを望むなら早い方がいい。
決意を固めて欲しい。それだけがヴィーナに求めるもの。
でも不思議。手紙が届くまで、二人がやってくるまでそんな気はさらさらなかった。
それがなぜか二人が来てから考え方が変わった。
ボノのこともあるだろう。
でもそれだけじゃない。私は誰かを待っている。
私を必要としてくれる者。
続く
キャルムはしっかり働いてるか? 至らぬ点は無いかとしつこい。
彼女には任務を与えてる。その関係でヴィーナの元へ。
どうもそのことが耳に入ったようで。追及を受ける。
「ご主人様。キャルムを甘やかさないでください。こちらの立場もお忘れなく」
普段よりもきつい口調。勝手なことをしてと不満を述べる。
そもそもヴィーナ付きに画策したのも気に入らなかったらしい。
「その今はヴィーナのところで…… 」
「聞いております。しかしですねご主人様」
「分かってます。甘やかすなと言いたいのでしょう? ですがこれもヴィーナの為」
「ご主人様」
「お願い。ヴィーナが元気を取り戻すまでだけ」
どうにかメイド頭を説得する。
また予定が狂った。
最近ちょっとしたことで時間を取られる。
そのせいで練習もできない。
これではダメ。日課をこなせずにイライラが募る。
いつ爆発してもおかしくない。もう限界。
日課の練習を何かにつけ休んでいるので罪悪感が。
今日もだと国王様にお見せするまでに完成させられるか心配。
たぶん大丈夫などと楽観視する気にもなれない。
とにかくお食事の時間に間に合わせなければ。さあ急ぎましょう。
「ははは…… 」
一人だけマイペースの我が不肖の夫ボノ。
ボノはヴィーナが悲しんでいるにも関わらず笑っている。
自然体と言えばいいのかどうかしてると呆れればいいのか。
「ふふふ…… 」
誰も反応しないので仕方なく私が付き合ってあげる。
まったく呑気なボノ。
お食事も一人だけ残さず完食。再びワインを飲みだした。
本当に自由なボノ。
お姉様も呆れて何も言えず苦笑い。
若い頃は運動で鍛えた肉体にギラギラした目つきが堪らなく素敵だった。
でも今はどうでしょう? 筋肉も落ち若いメイドに現を抜かす哀れなボノ。
まだ国王様のように醜く太っていないのでメイドに相手されてますが。
それはそれで頭に来ます。
お酒の飲み過ぎだと何度注意したか。
気にする素振りもなく食べる量も飲む量も増えはしても減ることはない。
もう少し若い頃のようであって欲しいと願うのはいけないことでしょうか?
ああどうしてこうも変わってしまったのか。我が夫ながら残念でなりません。
でも本当はそんな些細なことどうでもいいのです。
あの頃のように優しく思いやりのあるボノで。メイドに手を出しても我慢した。
それが自分から離婚を申し込むなんてどれだけ傷ついたか分からないでしょうね。
ああ、いつの間にかボノへの悪口になってしまった。今はそんな時ではない。
ヴィーナを立ち直らせること。それはお姉様にも難しいのか。
「ヴィーナ。セピユロスさんのことは忘れるのよ。それが一番。
忘れてればその内戻って来る」
まあ説得は無理でしょうね。あまりに無責任だと自分でも思う。
「ううう…… 」
声にもならずに顔を伏せたまま。落ち込み方が昼間よりも酷くなっている。
結局お姉様もヴィーナを持て余しているよう。
ここはきつく言ってあげるのも優しさ。
「いいヴィーナ? セピユロスさんが家を留守にすることもあるでしょう。
そんな時にあなたがしっかりしないでどうするの?
まさかメイドにでも慰めてもらうつもり? それは無理。雇うお金もない。
セピユロスさんの実家は裕福とは程遠い。
あなたが都会で二人で暮らすにしてもあちらの実家に住むにしても我慢が大切です」
「今は放っておいて」
泣きじゃくるヴィーナ。
それを見かねたボノが注意する。
「でもこれもヴィーナの為よ」
「ディーテそれは言い過ぎです」
お姉様が出しゃばる。
これは家族の問題。ボノが意見を言うのは歓迎する。
でもお姉様は部外者。それこそ放っておいて。
「どう私たちと暮らすのは嫌? 」
つい余計な一言を。
挨拶に来ただけ? 私たちを蔑ろにしていいはずがない。
出来ればここで二人で幸せになってもらいたい。
ボノだってそれを望んでいる。
もしその気があるなら戻って来て欲しい。
ここの主人になるのはヴィーナ以外いない。
ヴィーナが引き継がなければ誰が家を守れると言うの?
私がここの主人を退いた後のこと。ゆっくりでいい。時間の余裕はある。
ただ本人がそれを望むなら早い方がいい。
決意を固めて欲しい。それだけがヴィーナに求めるもの。
でも不思議。手紙が届くまで、二人がやってくるまでそんな気はさらさらなかった。
それがなぜか二人が来てから考え方が変わった。
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でもそれだけじゃない。私は誰かを待っている。
私を必要としてくれる者。
続く
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