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哀れな犠牲者キャルム。
キャルムごめんなさい。情けない主人で本当に申し訳ない。
セピユロスが居なくなったことが堪えてる。
それを認められないまだ未熟で情けない自分がいる。
どうしたと言うの? 賑やかだったあの日々が忘れられない。
たかが数日。居なくて平和。大したことじゃない。
そう思えたらどれだけいいか。
正直に言えたらどれだけ心が楽になるか。
おお! 愛しのセピユロス!
最近見た三文芝居のようで恥ずかしい。
私にはボノがいる。ただそのボノが問題。
ボノが私をどう思ってようが勝手。でもプライドを傷つけていいはずがない。
すべて悪いのはボノ。ボノがすべてを壊した。
悪い夫でありどうしようもない旦那様。
女にだらしなくメイドにちょっかいを出してばかり。
私が必死に堪えていた感情を逆にボノが持つなど許せない。
「あの…… 」
キャルムが顔を見上げる。
おかしくなった主人を見て何を思ったのでしょう?
まさか支配できるとでも?
「まだいたのですか。早く出て行きなさい」
「はいご主人様」
「ヴィーナのことは頼みましたよ」
彼女の役目はヴィーナを慰め立ち直らせることにある。
もしそれが出来るのならいくらでも出そう。
ヴィーナが落ち込んだままでは関係が悪化する一方。
私にはもうどうすることもできないがそれでも最善を尽くす。
「ボーっとしてどうしたんです? 」
お茶会では終始上の空。
もちろんヴィーナが心配で心配で堪らない。
これは表向き。だから包み隠さずに話してみる。
まあ所詮は他人事ですけどね。
せっかくのお茶会の雰囲気を台無しにしたくない。
「あら…… それはお可哀想に」
「そう言えばエイドリアス村で火事があったって言ってましたわね」
「そうそう。怖いわ本当に」
「山火事でしょう。ここも大丈夫かしら? 」
そう言いながら寛いでいる。まるで緊張感がない。
「ほら気を落とさないで」
なぜか私が落ち込んでるように見えたらしい。
落ち込んでなんか……
「素敵でしたものね」
「そうそう誰に対しても優しい方」
女性には常に優しい紳士的なセピユロス。
評判は上々。決して評判通りとは限らないですが。
皆がセピユロスを褒めるのは紳士的で若々しく素敵だから。
彼の甘いマスクに虜になっている。
それは私も同じ。
娘の相手として鼻が高い。大いに自慢が出来る。
でも本当はもっと近い存在。
私に夢中になってるセピユロスを皆さんに知ってもらいたい。
そう彼は私の物。誰にも渡さない。
もちろんセピユロスは完璧じゃない。否定的な意見の持ち主も。
「あのような方は結局女性にだらしない。
そっちにフラフラ。こっちにフラフラ。
婚姻を結ぶとなれば何か目的があるに違いないわ」
適当なことを言って話を盛り上げる新入り。
みすぼらしい格好の女。新入りのデレーラでしたっけ。
「それに彼ったら私に色目を使ってもう嫌らしい」
冗談じゃない。この女、好き勝手抜かすものだから頭に来る。
最近お茶会に入ったばかりの新参者。若さも美貌も兼ね備えてるメス。
私の唯一の取り柄だった若さに美しさが奪われる非常事態。
ここでもトラブル発生だなんて本当についてない。
「あなたどこの方ですの? 」
出身を聞く。
「ウッテンベルク」
ああ穀物の取れる農村。
だったら問題ないでしょうね。
「大変為になりました。ですがこれ以上彼を侮辱するとただではおきませんよ。
いい加減なことを言い触らさずにできれば大人しくしていただくと助かりますわね」
「ですがこれは事実です。気を付けるに越したことはありません」
根拠もなく噂だけで断定しようとする噂好きの女。
彼女にはぴったりだ。
「私は悪くありません」
意地を張るまだ幼き頑固者。
相手してるほど暇ではない。
「ごきげんよう」
そう言って逃げ帰る。
無益な争いは避けたい。評判にも関わる。
新人の発掘と色々あったがボロが出ずに済んだ。
ああセピユロス! なぜかこんなにも心が晴れないの?
私を諦めて。
そして心を乱そうともしないで。
ざわついてざわついて仕方がない。
あー罪なセピユロス様。
居なくなってまでも話題はセピユロス様のことばかり。
良いんだか悪いんだか。
お茶会を抜け屋敷に戻る。
続く
キャルムごめんなさい。情けない主人で本当に申し訳ない。
セピユロスが居なくなったことが堪えてる。
それを認められないまだ未熟で情けない自分がいる。
どうしたと言うの? 賑やかだったあの日々が忘れられない。
たかが数日。居なくて平和。大したことじゃない。
そう思えたらどれだけいいか。
正直に言えたらどれだけ心が楽になるか。
おお! 愛しのセピユロス!
最近見た三文芝居のようで恥ずかしい。
私にはボノがいる。ただそのボノが問題。
ボノが私をどう思ってようが勝手。でもプライドを傷つけていいはずがない。
すべて悪いのはボノ。ボノがすべてを壊した。
悪い夫でありどうしようもない旦那様。
女にだらしなくメイドにちょっかいを出してばかり。
私が必死に堪えていた感情を逆にボノが持つなど許せない。
「あの…… 」
キャルムが顔を見上げる。
おかしくなった主人を見て何を思ったのでしょう?
まさか支配できるとでも?
「まだいたのですか。早く出て行きなさい」
「はいご主人様」
「ヴィーナのことは頼みましたよ」
彼女の役目はヴィーナを慰め立ち直らせることにある。
もしそれが出来るのならいくらでも出そう。
ヴィーナが落ち込んだままでは関係が悪化する一方。
私にはもうどうすることもできないがそれでも最善を尽くす。
「ボーっとしてどうしたんです? 」
お茶会では終始上の空。
もちろんヴィーナが心配で心配で堪らない。
これは表向き。だから包み隠さずに話してみる。
まあ所詮は他人事ですけどね。
せっかくのお茶会の雰囲気を台無しにしたくない。
「あら…… それはお可哀想に」
「そう言えばエイドリアス村で火事があったって言ってましたわね」
「そうそう。怖いわ本当に」
「山火事でしょう。ここも大丈夫かしら? 」
そう言いながら寛いでいる。まるで緊張感がない。
「ほら気を落とさないで」
なぜか私が落ち込んでるように見えたらしい。
落ち込んでなんか……
「素敵でしたものね」
「そうそう誰に対しても優しい方」
女性には常に優しい紳士的なセピユロス。
評判は上々。決して評判通りとは限らないですが。
皆がセピユロスを褒めるのは紳士的で若々しく素敵だから。
彼の甘いマスクに虜になっている。
それは私も同じ。
娘の相手として鼻が高い。大いに自慢が出来る。
でも本当はもっと近い存在。
私に夢中になってるセピユロスを皆さんに知ってもらいたい。
そう彼は私の物。誰にも渡さない。
もちろんセピユロスは完璧じゃない。否定的な意見の持ち主も。
「あのような方は結局女性にだらしない。
そっちにフラフラ。こっちにフラフラ。
婚姻を結ぶとなれば何か目的があるに違いないわ」
適当なことを言って話を盛り上げる新入り。
みすぼらしい格好の女。新入りのデレーラでしたっけ。
「それに彼ったら私に色目を使ってもう嫌らしい」
冗談じゃない。この女、好き勝手抜かすものだから頭に来る。
最近お茶会に入ったばかりの新参者。若さも美貌も兼ね備えてるメス。
私の唯一の取り柄だった若さに美しさが奪われる非常事態。
ここでもトラブル発生だなんて本当についてない。
「あなたどこの方ですの? 」
出身を聞く。
「ウッテンベルク」
ああ穀物の取れる農村。
だったら問題ないでしょうね。
「大変為になりました。ですがこれ以上彼を侮辱するとただではおきませんよ。
いい加減なことを言い触らさずにできれば大人しくしていただくと助かりますわね」
「ですがこれは事実です。気を付けるに越したことはありません」
根拠もなく噂だけで断定しようとする噂好きの女。
彼女にはぴったりだ。
「私は悪くありません」
意地を張るまだ幼き頑固者。
相手してるほど暇ではない。
「ごきげんよう」
そう言って逃げ帰る。
無益な争いは避けたい。評判にも関わる。
新人の発掘と色々あったがボロが出ずに済んだ。
ああセピユロス! なぜかこんなにも心が晴れないの?
私を諦めて。
そして心を乱そうともしないで。
ざわついてざわついて仕方がない。
あー罪なセピユロス様。
居なくなってまでも話題はセピユロス様のことばかり。
良いんだか悪いんだか。
お茶会を抜け屋敷に戻る。
続く
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