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家族の問題
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セピユロスが旅立ちヴィーナは塞ぎこんでしまった。
私にはよく分かりませんが二、三日離れたぐらいでどうにかなるもの?
この際ボノも追い出して女三人楽しく……
それは無理そうですけど少なくてもヴィーナを元気づけなくては。
今お姉様が寄り添っている。私は見守るしかない。
お姉様は昔からそうだった。
優しいと言うか甘いと言うか。
私が泣いて帰ってくると慰めてくれた。
それだけにとどまらず原因を突き止め心強い味方になってくれた。
いつだったか相手の男の子を大泣きさせて騒動になったことも。
小さい頃の私はさほど強い人間ではなかった。
ちょっとからかえば泣いてしまうそんな子。
今でも強いのはこの屋敷の中だけ。
メイドを叱りつけるものだから強烈に印象に残るのでしょう。
噂だって立つ。
そうすると私の及ばないところで大げさな虚像が出来上がる。
私は見せかけの強さしか持っていない。
だから本当に強い訳ではない。
一歩領地を出ればただの女。
若くもなく尊敬されるほど年を重ねてもいない。
それに人は自慢だと言うけれど年よりも若く見られる。
ただ舐められてるだけ。
あら下品だったかしら。でも私は女だからや若そうだからと舐められたくない。
ご主人様としてのプライドがある。
「ねえヴィーナそんなに泣かないで。いつも喧嘩ばかりしてたじゃない。
セピユロスさんとは上手く行ってないんでしょう? だったら…… 」
まずい。つい本当のことを指摘してしまう。ヴィーナが気にしてるであろうこと。
もし上手く行っていたらセピユロスが私にちょっかい出すはずがない。
だからそんな風に言ってしまったけど失言だった。
「お母様…… 」
はっとするヴィーナ。
ヴィーナのせいじゃない。私がそう断言するのはセピユロスの言動。
彼があまりにも私に執着するものだからつい。
何も見透かした訳ではない。知ってしまったのセピユロスと言う男の正体を。
ヴィーナだって真実を知れば傷つくどころか苦しむ。いえ苦しみ続ける。
ああ、私は母失格ね。塞ぎこむヴィーナに止めを刺そうとしているのだから。
でも分かって欲しい。あなたがしっかりしないからセピユロスが私に手を出す。
ボノのようになって良いの? セピユロスを繋ぎ止めておけるのはあなただけ。
今あなたがしっかりしなければ彼は離れて行く。
「ディーテ。それはあまりにも酷すぎます。ヴィーナの何が分かると言うのです?
彼女の苦しみも分かってあげなさい」
お姉様からお叱りを受ける。
ですが私はヴィーナの母なのですよ。
「放っておいてくださいお姉様。これは家族の問題です」
つい口答えをしてしまう。
お姉様が悪いんですよ。こちらの立場を考えないで叱るものですから。
メイドに示しがつかなくなってしまう。そうなればどうなるか分かるでしょう。
威厳を失った主人から人が離れて行く。爵位を失うことにもつながりかねない。
この家を継がず自由を求め出て行ったあなたがまさか邪魔をするつもりですか?
喉元まで出かかっていた言葉を飲み込み、ムッとするに留める。
「ではお姉様。ヴィーナをお願いします」
これがやっと。お姉様ったら自分勝手なんだから。
自室に戻る。
ふう。失敗失敗。
窓を全開にし空気を入れる。
少々風はあるが気分転換にはちょうどいい。
天気は悪くどんよりした空ですがまあそれでも締め切るよりは全然。
ヴィーナはお姉様に任せておけば安心。
私が今更相談に乗る必要もない。
ただもしセピユロスのことであれば私が適任。
彼の気持ちだって手に取るように分かる。
内情を知っている私以上に適任な者など存在しない。
うーん。やっぱり謝る方がいいのかしら?
雰囲気を悪くしてしまったのは事実。
でも私は正論しか言ってないし……
それどころかその辺の占い師なんかよりもよっぽど当たる。
だって答えを知ってるんですもの。それはそれでインチキですけどね。
まあセピユロスの件だけでないならどうにもならないでしょうけど。
続く
私にはよく分かりませんが二、三日離れたぐらいでどうにかなるもの?
この際ボノも追い出して女三人楽しく……
それは無理そうですけど少なくてもヴィーナを元気づけなくては。
今お姉様が寄り添っている。私は見守るしかない。
お姉様は昔からそうだった。
優しいと言うか甘いと言うか。
私が泣いて帰ってくると慰めてくれた。
それだけにとどまらず原因を突き止め心強い味方になってくれた。
いつだったか相手の男の子を大泣きさせて騒動になったことも。
小さい頃の私はさほど強い人間ではなかった。
ちょっとからかえば泣いてしまうそんな子。
今でも強いのはこの屋敷の中だけ。
メイドを叱りつけるものだから強烈に印象に残るのでしょう。
噂だって立つ。
そうすると私の及ばないところで大げさな虚像が出来上がる。
私は見せかけの強さしか持っていない。
だから本当に強い訳ではない。
一歩領地を出ればただの女。
若くもなく尊敬されるほど年を重ねてもいない。
それに人は自慢だと言うけれど年よりも若く見られる。
ただ舐められてるだけ。
あら下品だったかしら。でも私は女だからや若そうだからと舐められたくない。
ご主人様としてのプライドがある。
「ねえヴィーナそんなに泣かないで。いつも喧嘩ばかりしてたじゃない。
セピユロスさんとは上手く行ってないんでしょう? だったら…… 」
まずい。つい本当のことを指摘してしまう。ヴィーナが気にしてるであろうこと。
もし上手く行っていたらセピユロスが私にちょっかい出すはずがない。
だからそんな風に言ってしまったけど失言だった。
「お母様…… 」
はっとするヴィーナ。
ヴィーナのせいじゃない。私がそう断言するのはセピユロスの言動。
彼があまりにも私に執着するものだからつい。
何も見透かした訳ではない。知ってしまったのセピユロスと言う男の正体を。
ヴィーナだって真実を知れば傷つくどころか苦しむ。いえ苦しみ続ける。
ああ、私は母失格ね。塞ぎこむヴィーナに止めを刺そうとしているのだから。
でも分かって欲しい。あなたがしっかりしないからセピユロスが私に手を出す。
ボノのようになって良いの? セピユロスを繋ぎ止めておけるのはあなただけ。
今あなたがしっかりしなければ彼は離れて行く。
「ディーテ。それはあまりにも酷すぎます。ヴィーナの何が分かると言うのです?
彼女の苦しみも分かってあげなさい」
お姉様からお叱りを受ける。
ですが私はヴィーナの母なのですよ。
「放っておいてくださいお姉様。これは家族の問題です」
つい口答えをしてしまう。
お姉様が悪いんですよ。こちらの立場を考えないで叱るものですから。
メイドに示しがつかなくなってしまう。そうなればどうなるか分かるでしょう。
威厳を失った主人から人が離れて行く。爵位を失うことにもつながりかねない。
この家を継がず自由を求め出て行ったあなたがまさか邪魔をするつもりですか?
喉元まで出かかっていた言葉を飲み込み、ムッとするに留める。
「ではお姉様。ヴィーナをお願いします」
これがやっと。お姉様ったら自分勝手なんだから。
自室に戻る。
ふう。失敗失敗。
窓を全開にし空気を入れる。
少々風はあるが気分転換にはちょうどいい。
天気は悪くどんよりした空ですがまあそれでも締め切るよりは全然。
ヴィーナはお姉様に任せておけば安心。
私が今更相談に乗る必要もない。
ただもしセピユロスのことであれば私が適任。
彼の気持ちだって手に取るように分かる。
内情を知っている私以上に適任な者など存在しない。
うーん。やっぱり謝る方がいいのかしら?
雰囲気を悪くしてしまったのは事実。
でも私は正論しか言ってないし……
それどころかその辺の占い師なんかよりもよっぽど当たる。
だって答えを知ってるんですもの。それはそれでインチキですけどね。
まあセピユロスの件だけでないならどうにもならないでしょうけど。
続く
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