なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

文字の大きさ
上 下
38 / 125

真実の愛

しおりを挟む
それでもいいと言うなら……
やっぱりだめ。セピユロスの求めには応じられない。
皆不幸になってしまう。
今断ち切らなければ。何としても自分の手で関係を断ち切る。
それがベストな選択。
彼だってヴィーナとのことを真剣に考えたからこそ挨拶に来たのだし。
これ以上ずるずる関係を続けてはいけない。
ましてやこれ以上深い関係に陥ってはいけない。
しかし興奮状態のセピユロスには何を言っても効果がない。

「ディーテ! おおディーテ! なぜ邪険に扱うのですか?
どうかどうか愛に応えて欲しい」
まだ続けてる。一体どう言う神経をしてるのでしょう。
その情熱をどうしてヴィーナに向けてあげないの?
私が嬉しいと本気でお思いですか?
有り得ません。どうしてこんな単純なことも理解できないのです?

「お願いセピユロスさん。これ以上はお止めになって。
分かりました。あなたの深い愛を知り感動しております。
ですがそれは真実ですか? 真実の愛ですか? 」
もうやり方を変えるしかない。彼の強い意志を感じ切り替える。
真実の愛ならば確かに応える価値はある。
「こんな言い方はしたくありませんでした。
ですがどうしても私を求めると言うなら真実の愛を見せてください」
ついさっきの三文芝居に影響を受ける。
きっとセピユロスもそうなのだろう。
この人はいつも軽いが。

「ではヴィーナこれをお受け取りください」
そう言うとポケットから光り輝くダイヤを取り出す。
これはまさかね…… なぜセピユロスさんがこのようなものを持っているのか?
ヴィーナに渡すつもりだとしたら許さない。
「ヴィーナの? 」
「いえまったく違います。これはあなたへのプレゼントです」
まさかここまで考えてるとは呆れる。
ただその行動力だけは見習うべきでしょう。
もちろん嬉しい。でも受け取れない。
「私へのプレゼント? まさか夫のいる身に贈り物など非常識にも程があります。
見損ないましたよセピユロスさん」
「いやちょっと…… 」
何も言えずに項垂れるセピユロス。
これでもうしつこく迫ってはこないだろう。
少々残念ですがこれも彼の為。
早く目を覚ましなさい。私に向ける時間があるならヴィーナをもっと大切に。
それが本来彼に対する言葉。もう甘やかしてはいけない。

「どうして分かってくれないんだいディーテ。僕はあなたを嫌いになりそうだ」
強く感情に訴えかけてくるセピユロス。
それは困る。ヴィーナの母として関わっていくのだから勝手は許しませんよ。
「無理に関係を築く必要はありません。ヴィーナを通して深めて行けばいいのです。
それが私たちの距離感。絶妙な距離感」
セピユロスは納得いかない様子。
私だってセピユロスに迫られて嫌な気持ちは芽生えません。
でも分かって欲しい。そして気付いて欲しい。
私は理解のある夫してあなたを求めるのではありません。
ただ義理の息子として見守っていきたい。
「分かりました。今日のところはこれで引き下がります」
まだ諦めてないの? 嘘でしょう?
これだけ言って無理ならもう私にはどうすることもできない。

「ではディーテ失礼します」
勝手に訪問して勝手に帰ろうとするから注意を与える。
「いいですか。これ以上逢瀬を重ねるのは良くありません。
それに変な誤解を生みかねない。できればこれ以上近づかないで頂きたい」
「しかしディーテ。僕には耐えらえそうにありません」
「そこですよセピユロスさん。甘えてはいけない。
あなたはヴィーナのことだけを思って生きればいいのです。
これ以上余計なことは考えずに大人しく従いなさい」
こうして密会を重ねないように諭す。
私自身の為でありセピユロスの為でもある。
もう許しません。

「そうですか…… 残念です。ではディーテおやすみなさい」
どうにか納得してくれたようだ。
私に夢中なセピユロス。本当に可愛い。
愛おしい方。でもその思いを封印。胸にしまうことにする。

二人は新たなステージへ。

                  続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ
恋愛
番(つがい)の物語。 ※短編集となります。時代背景や国が違うこともあります。 ※定期的に番(つがい)の話を書きたくなるのですが、 どうしても溺愛ハッピーエンドにはならないことが多いです。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

処理中です...