なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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来客

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午後五時過ぎ。
「ご主人様。お客様がお越しになりましたよ」
続々と招待客がやって来る。

一人ずつ丁寧に挨拶を交わす。
「ようこそおいで下さいました。主人のディーテです」
続けて主役のお姉様を紹介する。
「あらアーフリー。お久しぶり」
「おおアーフリーじゃないか。何年ぶりだ? 」
お姉様の為にと多くのお客様が。
さあ何事もなく無事乗り切れるといいんですけどね。
「奥さん。お招きありがとうございます」
「アーフリー? こんなに立派になって…… 」
昔からの付き合いの者は当然お姉様を知っている。
近所の奥様方はこの際セピユロスにでも任せておけばいい。
ボノがサポートするでしょう。

問題は伯爵夫妻と卿だ。
まず失礼のないように挨拶。
「いや一杯だけだよ」
卿は忙しいそうですぐに帰るとのこと。
本当かどうか疑わしい。厄介な爺であることは間違いない。
「実は急な用事が出来てしまって。妻が帰って来ると言うんだよ」
「ほほほ…… どうしましょう」
だからどうしたのかと尋ねたいが笑ってごまかす。
「うんうん。困ってるのさ。ははは…… 」
「それは大変ですね。愛妻家でいらっしゃる」
どうにか話を合わせる。
この人はいつもそう。前回もそうだった。何かしら理由をつけて帰ろうとする。
帰りたいと言いながら結局帰らずに最後まで。困ったお方。
無類の女好きであり無類のパーティ―好き。
そうでもなければ遠くから馬車を使ってまでやって気はしない。

「ぜひ国王様のお話をしていただきたいのですが」
卿の扱いは慣れている。
国王に一番可愛がられていると自慢するならまだいい。
姑息な手段を使い観衆の注目を集めようとする。
「いや昨日も国王が会いたいと言うがそれはダメではないか。
用もなく国王が訪ねて来るのはいかかがなものかと言ってやった。
ははは…… 本当に困った国王。私を何だと思っているのだろう」
あーあ本当に面倒な方。お帰りになってもらおうか。
「ではそろそろお時間のようですし…… 」
「いやそれでは悪い。もう少し居るとする」
予定を変更してまでここにいると言う。恩着せがましいにも程がある。
「あの今日は私などの為にお越しいただきありがとうございます」
お姉様も戸惑い気味に挨拶を。
「ではごゆっくり」
卿は意地でも帰る気はないようだ。初めから余計なことを言わなければいいのに。
この人はまったく。本当に困った方。

続いて伯爵夫妻。
「久しぶりだね。アーフリー」
今回わざわざお二人で来られたのはお姉様との繋がりが深いから。
私はこのおじさん苦手なのよね。
がみがみうるさいし。いちいち上から物を言うから。
伯爵様ですからね。それも仕方ないことかもしれませんが。
でもそれは昔の話。
私も今は立派な主人。女主人だからって舐めないで。
でも事実は違う。どんなことがあっても私は子爵夫人。
子爵は男の称号だから。
この家を継ぐ時にどうしても男が必要なのはこれがすべて。
男でなければ子爵は名乗れない。
だけどボノはそんな柄じゃないと私を立ててくれた。
そこがボノの一番の魅力。
拘らない。気にしない。どうでもいい。
そんな言葉がボノを表している。

「ヴィーナも大きくなったね」
そうお姉様に懐いていたヴィーナも気に入られている。
私はどう言う訳かあまり気にいられていない。
それが言葉の端々から伝わってくる。
「いやはやこの屋敷も大きくなりましたな」

つい対等を意識するあまりへりくだった物言いが出来ずに生意気だと誤解される。
そして口癖のようにこちらの方が格上だと騒ぎ立てる器の小さい方。
「あんたも随分偉くなったものだ」
酔うと嫌味を言って雰囲気を悪くする。
「ほらおじ様。酔っぱらわれてはいけません」
すかさずお姉様が止めに入る。
メイドに渡し客室でおやすみになってもらう。
これでうるさいのが居なくなった。

今度は伯爵夫人。
夫と違い寡黙で何を考えてるか分からない人だ。
奥さんは本当に笑わない。
いつも無表情。
こんなおめでたい席でも決してぶれない。
そこは見習うべきところ。
でもやっぱり何を考えてるのか分からない。
良い人だけど場を暗くしてしまう欠点がある。
さあおもてなしをしましょう。

                続く
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