なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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ボノとの関係

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姉のアーフリーが久しぶり戻って来た。
お婆様が亡くなって以来だから何年ぶり?
「元気にしていたディーテ? 」
抱擁し再会を喜びあう。
「はい。お姉様こそお元気でしたか? 」
「ええ。そうだヴィーナは? 」
やはりヴィーナのことが気になるらしい。
私の代わりにヴィーナの世話を引き受けてくれていた。
だからお姉様は未だにヴィーナを気にかけている。

「あらヴィーナ」
後からはしたなくも駆け寄り抱き着くヴィーナ。まだまだ淑女には程遠い。
「アーフリー! 」
大胆に名前で呼ぶヴィーナは抱き着いて離そうとしない。
「もうヴィーナったら子供なんだから」
「お話を…… 」
お姉様のコートを脱がせ早く座るよう促す。
こんなにも嬉しそうなヴィーナは久しぶり。
出来たら家に来た時もそう振る舞って欲しかった。
そうしたら私だって…… 
お気に入りの真珠のドレス。今度のは随分ゴージャス。
またボノが甘やかして。
初めて見るドレスを見せびらかすように舞うヴィーナ。
まだまだ子供。

「お嬢様。そのよなことはメイドにお任せください」
見かねたメイドがコートを奪い取る。
「いいじゃない。これくらい」
「なりません。品位が下がります」
このメイドは昔からヴィーナ付きで厳しい。
私が出来ないことを代わりにしてもらっている。

「アーフリー! 」
セピユロスが姿を見せる。
まったく初めて会う年上女性。しかも恋人のおばに呼び捨てとは本当にいい度胸。
まあ私にも同様に接してくれますけど。
「紹介するわねアーフリー。彼はセピユロス。私の恋人。どう良いでしょう? 」
自慢を始める。
あれ確かまだ喧嘩中だったような。
さっきまで口も利いてなかったのに。まったくヴィーナったらいい加減なんだから。

「セピユロスです。よろしくお願いします」
「あら素敵な方。お相手してもよろしくてよ」
冗談にもならない冗談を披露するお姉様。
「ちょっとお姉様…… 」
もうハラハラさせないで欲しい。
「どうしたんだい? 」
ボノも姿を見せた。
お姉様は三日ほど滞在するそう。

「今日は君の為に晩餐会を開こうと思うんだが」
ボノはお姉様とは一つ違い。
実はボノはお姉様からの紹介。
誠実な人柄に最初は惹かれていたそう。
でもある理由から二人は別れてしまった。
そんなことも知らず私は姉の紹介を受けボノと親しくなった。
私だって姉に負けず劣らず娘時代は男性から言い寄られたもの。
でも私と真剣に付き合う者は現れなかった。
一見誠実そうに見えてただの遊び人。そんなタイプの方ばかり。

いえ真実はそうではない。実は受け入れがたい条件が。だから皆離れて行った。
そうボノは受け入れてくれたけど婿養子として迎え入れる必要があった。
それは本来お姉様の役割だった。
でも自由なお姉様には合わなかった。
勝手に家を飛び出してしまい残ったのは私だけ。
今は都会で普通の生活を送っている。
憧れの生活。

お姉様が積極的なのに対して私は消極的で性格が正反対。
お婆様からこの家を継ぐように言われた時は別に何とも思わなかった。
事実楽でいいとさえ思った。
だってここは私にとって住みやすく唯一の居場所。
誰がこんな生活をなげうってまで外へ憧れるの?
それに決して好きでもない方と結婚することもない。
ここで威張ってられる。
それってメリットであってデメリット何かじゃない。
屋敷の主人として皆を見守るのも楽しいもの。
私は望外な望みなど持たない。
ただ一族の発展の為に生きていく。

ただここにきて問題が発生。
セピユロスの件は放っておけばどうにでもなる。
滞在期間中は顔を合わせなくてもいい。
それが出来るか出来ないかは別として。
ただ問題はボノの方。
離婚を申し込まれた。
しかしその離婚も実に面倒。
この地域の伝統では男から離婚を申し込めない。
男から簡単に出来てしまうとまずいから。
どの時代でも女は弱い。
離婚を申し込まれた時点で生活が成り立たなくなっていく。
だから女から離婚を申し込まない限り離婚は正式には認められない。
認めようにも認める者がいない。
ボノもそれが嫌で今まで離婚を言い渡さずにいた。より慎重になっていた訳。

さあどうするつもりかしら?
ボノの気持ち次第。
離婚には相当な負担があることは間違いない。
そして一番の問題点はすべてを国王に申し開くこと。
屈辱であり地獄である。
だからこそ離婚の選択肢はない。
申し開きなどしようもない。
でもボノはそれでも離婚を選んだ。
それが私にとってどれだけ屈辱的だったか。

                   続く
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