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チャウチャウ
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「ご主人様! 急用でございます」
部屋を出るとすぐに呼び止められる。
「何を騒々しい! 落ち着きなさい! 」
「怪しい人影を見たと噂が」
「噂? 噂程度で私の手を煩わすつもりですか?
いつも言ってるでしょう。きちんと確認しなさいと」
「はあ…… しかし…… 」
ただ畏まるだけではっきりしない。
「分かりました。分かりました」
怪しい男ね。まさかボノが手引きしたの?
取り敢えず現場に向かうことに。
随行メイドと外へ。
「ご主人様はお待ちください。私が見てきます」
随行メイドは基本一人。
ただ屋敷の周りにはメイドたちが目を光らせているのだから問題ないでしょう。
危険はないと言っていい。
まったくたかが噂程度で駆り出される身にもなって欲しい。
ここの主人は私。当然責任を取るのが当たり前。でも損な役割な気もする。
もうさすがにうろついてはいないでしょう。不審者さん。
「ちょっとあなた何をしてるんですか」
日が暮れようと言う時に怪しげな人影。
「怪しい者ではないだ。ただ一目娘を見たくなったでな」
何と雇入れたばかりのメイドの父親が心配して訪ねて来た。
さすがにお客扱いはできない。
不審者が彼なら一件落着するはず。
大事にならず即解決できたのはある意味良かったとも言える。
「娘さ元気してるだか」
「もう恥ずかしいんだから」
娘が駆けつけてきた。
後は二人でどうぞ。
さすがに追い返す訳にはいかない。
満足いくまで好きにしてちょうだい。
トラブルなんてだいたいこんなもの。
メイドが色々言ってたけど私の手を煩わすまでもなかった。
一騒動を終えて屋敷に戻る。
あーあ。まずい予定が狂ってしまった。
今日は秘密の特訓は中止しましょう。
先生には悪いけどサボらせていただきますわ。
ヴィーナの部屋に。
「何か用? 」
機嫌は良い方だ。悪ければ口も利かずにただ黙っている。
「あらセピユロスさんはどうしたんです? 」
「知らないあんな奴! 」
どうやら喧嘩したらしい。
またですか。我が娘ながらよくやる。
どうやらボノと二人で朝早くから出かけるものだから構ってもらえずにご機嫌斜め。
それでも私と話すと言うことは良いことでもあったのかしら。
意外なヴィーナの心境の変化に驚いている。
「ヴィーナ。ご機嫌ね? 」
「別に。チャウチャウが癒してくれるから」
チャウチャウとは我が家のペット。
国王様のようにブクブク太った締まりのない腹をした猫。
誰に似たのやら。飼い主に似るとは言いますけどね。
特に可愛い女の子に目がないおじさん猫。
チャウチャウは気まぐれですぐにどっかに行ってしまう。
メイドに屋敷中を探させたこともあった。
その時は別館で日向ぼっぽしていたっけ。
メイドが世話をするのですぐ屋敷を抜け出してしまう。
脱走猫だ。
チャウチャウは二年前の秋に我が家へやって来た。
国王様からの贈り物。
元々国王様のペットで理由があって譲り受けた。
そう言った事情もあり大切にお世話している。
今ヴィーナに夢中らしい。
すぐに飽きるでしょうけどね。
チャウチャウは男の子。
だからメイドに弱い。そしてヴィーナにも。
なぜか私には寄り付かないが。
恐れているのでしょうね。猫の分際で生意気。
おっと国王様のペットの悪口を言ってはいけない。
「それでチャウチャウは? 」
「今パパのところ」
また良からぬことを考えてるな。
ボノはたぶんチャウチャウを使ってメイドを手なずける気だ。
それに協力させられるチャウチャウは可哀想。
チャウチャウは元々国王様のペット。
かなり変わった名前だったので相応しい名前に変更。
いつも食事をするときに不満そうにお皿を動かす。
もっと旨い物をだせと要求するグルメ猫。
その時の鳴き声がまるでチャウチャウと言っているところからそう名付けられた。
チャウチャウも気に入ったのか嬉しそうに返事をする。
チャウチャウ以外にももちろん動物は居るが屋敷の中で飼っているのはこの子だけ。
さすがに国王様からの頂き物。外で飼う選択肢はない。
外で飼うのはあまりに危険。危険と言うより命がけですけどね。
大型の狩猟犬やワニに蛇などが屋敷の広大な庭に生息している。
チャウチャウは馬鹿ではないのでそのエリアには近づこうとしない。
たまにこの屋敷に忍び込もうとする間抜けな方がいてすぐに餌となる。
ですからなるべく夜には庭に出ないようにメイドたちにもきつく言い聞かせている。
続く
部屋を出るとすぐに呼び止められる。
「何を騒々しい! 落ち着きなさい! 」
「怪しい人影を見たと噂が」
「噂? 噂程度で私の手を煩わすつもりですか?
いつも言ってるでしょう。きちんと確認しなさいと」
「はあ…… しかし…… 」
ただ畏まるだけではっきりしない。
「分かりました。分かりました」
怪しい男ね。まさかボノが手引きしたの?
取り敢えず現場に向かうことに。
随行メイドと外へ。
「ご主人様はお待ちください。私が見てきます」
随行メイドは基本一人。
ただ屋敷の周りにはメイドたちが目を光らせているのだから問題ないでしょう。
危険はないと言っていい。
まったくたかが噂程度で駆り出される身にもなって欲しい。
ここの主人は私。当然責任を取るのが当たり前。でも損な役割な気もする。
もうさすがにうろついてはいないでしょう。不審者さん。
「ちょっとあなた何をしてるんですか」
日が暮れようと言う時に怪しげな人影。
「怪しい者ではないだ。ただ一目娘を見たくなったでな」
何と雇入れたばかりのメイドの父親が心配して訪ねて来た。
さすがにお客扱いはできない。
不審者が彼なら一件落着するはず。
大事にならず即解決できたのはある意味良かったとも言える。
「娘さ元気してるだか」
「もう恥ずかしいんだから」
娘が駆けつけてきた。
後は二人でどうぞ。
さすがに追い返す訳にはいかない。
満足いくまで好きにしてちょうだい。
トラブルなんてだいたいこんなもの。
メイドが色々言ってたけど私の手を煩わすまでもなかった。
一騒動を終えて屋敷に戻る。
あーあ。まずい予定が狂ってしまった。
今日は秘密の特訓は中止しましょう。
先生には悪いけどサボらせていただきますわ。
ヴィーナの部屋に。
「何か用? 」
機嫌は良い方だ。悪ければ口も利かずにただ黙っている。
「あらセピユロスさんはどうしたんです? 」
「知らないあんな奴! 」
どうやら喧嘩したらしい。
またですか。我が娘ながらよくやる。
どうやらボノと二人で朝早くから出かけるものだから構ってもらえずにご機嫌斜め。
それでも私と話すと言うことは良いことでもあったのかしら。
意外なヴィーナの心境の変化に驚いている。
「ヴィーナ。ご機嫌ね? 」
「別に。チャウチャウが癒してくれるから」
チャウチャウとは我が家のペット。
国王様のようにブクブク太った締まりのない腹をした猫。
誰に似たのやら。飼い主に似るとは言いますけどね。
特に可愛い女の子に目がないおじさん猫。
チャウチャウは気まぐれですぐにどっかに行ってしまう。
メイドに屋敷中を探させたこともあった。
その時は別館で日向ぼっぽしていたっけ。
メイドが世話をするのですぐ屋敷を抜け出してしまう。
脱走猫だ。
チャウチャウは二年前の秋に我が家へやって来た。
国王様からの贈り物。
元々国王様のペットで理由があって譲り受けた。
そう言った事情もあり大切にお世話している。
今ヴィーナに夢中らしい。
すぐに飽きるでしょうけどね。
チャウチャウは男の子。
だからメイドに弱い。そしてヴィーナにも。
なぜか私には寄り付かないが。
恐れているのでしょうね。猫の分際で生意気。
おっと国王様のペットの悪口を言ってはいけない。
「それでチャウチャウは? 」
「今パパのところ」
また良からぬことを考えてるな。
ボノはたぶんチャウチャウを使ってメイドを手なずける気だ。
それに協力させられるチャウチャウは可哀想。
チャウチャウは元々国王様のペット。
かなり変わった名前だったので相応しい名前に変更。
いつも食事をするときに不満そうにお皿を動かす。
もっと旨い物をだせと要求するグルメ猫。
その時の鳴き声がまるでチャウチャウと言っているところからそう名付けられた。
チャウチャウも気に入ったのか嬉しそうに返事をする。
チャウチャウ以外にももちろん動物は居るが屋敷の中で飼っているのはこの子だけ。
さすがに国王様からの頂き物。外で飼う選択肢はない。
外で飼うのはあまりに危険。危険と言うより命がけですけどね。
大型の狩猟犬やワニに蛇などが屋敷の広大な庭に生息している。
チャウチャウは馬鹿ではないのでそのエリアには近づこうとしない。
たまにこの屋敷に忍び込もうとする間抜けな方がいてすぐに餌となる。
ですからなるべく夜には庭に出ないようにメイドたちにもきつく言い聞かせている。
続く
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