なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

文字の大きさ
上 下
22 / 125

脱着

しおりを挟む
新人メイドとの挨拶も終わりようやく一息つく。
この後はお待ちかねの秘密の特訓。
はああ。ため息がでる。

「失礼します」
突然の訪問者。誰かと思いきや影のメイド。
辺りを警戒する慎重さと冷静さ。さすがは影のメイドだけはある。
「ほらここには誰もいません。その顔を見せなさい」
目元以外を隠した暑苦しい格好。夏ではないのでまだいいですが。
「ご主人様。ご勘弁を! 」
「駄目です! ほら早く」
つい意地悪をしたくなってしまう。
「もう仕方ありませんね」
ご主人様の命令は絶対。拒否などしようもない。

金髪の十代の女の子。ヴィーナよりも下。
比べようもないぐらいの美少女。
ヴィーナの嫉妬は免れない。
ボノだって黙っていない。
そんな美少女が存在するはずがない。

「しかしヴィーナ様に見つかっては私は殺されてしまいます」
よく分かってるじゃない。一応は私の娘なんですけど。
仮にそうだとしても言い方ってものがある。
「ほら軽口を叩かないの。その服も脱ぎなさい」
「ちょっとまさかご主人様にそのような趣味があるとは思いもしませんでした」
「ふふふ…… 早く脱ぎなさい」
「ではお言葉に甘えて」

「また随分大きくなりましたわね。何を飲んだらそんなに育つのかしら? 」
何も言えずに顔を赤らめる影のメイド。
これはあくまで体を見るためのもの。
誤解しないでほしい。
「では後ろを向いて」
「ああご主人様。これ以上は…… 」
「ほら馬鹿言ってないで早く」
ふざけてばかりの影のメイド。
「また傷が増えている。傷口もまだ…… かさぶたを掻いたでしょう?
背中は問題なさそうね」
まったくこんなこと本当はしたくない。
でもこの子ったら無茶ばかりするから放っておけない。
本当に手がかる。
こうして定期的に見てあげないと自分では何もしない。
もちろん大怪我は別。それ以外の切り傷や擦り傷などを放置するものだから。
熱が出たり悪化しないか心配でしょうがない。
未熟なメイドの面倒も私の役割。
服を着せて元通り。

「すぐに先生のところに行くのよ。それからアップね」
「うええ…… 分かりました」
別館の隣にはお医者様の家がある。
いつもお世話になっている。
それから怪我につき報酬アップの約束。
まあ我が一族の為に動いてくれるのですからこれくらい当然。

「それで用件は? 」
そろそろ本題に入ってもらわないと時間がない。
「実は大変申し上げにくいのですが…… 」
「あらまさかボノに捕まったとか? 」
「ご冗談を。一度たりとも捕まるようなへまは致しません」
プライドを傷つけられ気分を害したのかそっぽを向く。
「では何かしら? 」
「はい。今度新しく入ったメイドですが…… 怪しいんですよね」
察知したのか野生の勘なのか。
「怪しいとは具体的には? 」
「ボノ様と関わりがあるのではないかと思われます」
「まさか。ボノが愛人をメイドにしたとでも。
メイドならいくらでも手なずけてるんですから今さら…… 」
「いえボノ様はあくまで紹介。たぶんバックに誰かいるのではと思われます」
怪しげな輩がメイドとして潜り込んだと言うことらしい。
これは一大事。

「ふーむ。それで誰が? 」
「あの綺麗な方がそうかと思われます」
「へえ随分落ち着いてると思ったら何かあるのね? 」
「お気付きになられたのですね」
「ええ今メイド頭と彼女について話してたところ」
「さすがはご主人様」
「はいはい。あなたの考えは? 」
「用心に越したことはありません。監視をつけた方がよろしいかと」
「まだ具体的には何も分かってないんでしょう? 」
「はい。ただ間違いないかと。あの美しさですし」
強く意見する。
ボノったらどう言うつもりかしら。
問い詰めたって無駄よね。

「分かりました。これ以上なければ下がりなさい」
「では失礼します…… おっと言い忘れてましたがもう一人。
ヴィーナ様のお相手のセピユロス様にもお気を付けください。
何やら不穏な動きをされております。では」
影のメイドは去っていった。
セピユロスがまさかね。何かの間違いでしょう。
彼がそんな人には見えない。
あの子少々抜けたところがあるから勘違いしただけ。そうに決まってる。

ああもうこんな時間。
先生を待たせてはいけない。
気が進まないけど秘密の特訓へ。

                続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...