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誠実
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あらやっぱり一匹も獲れてない。
朝から糸を垂らしてもさっぱり。
おかわいそうな二人。
どう慰めて差し上げましょうか。
「仕掛けに時間が掛ったようですね。午後からは本格的に行くのでしょう? 」
殿方のプライドを傷つけないようにとよくお婆様に言われましたっけ。
本当に情けないんだから。
お酒も呑む。タバコも吸う。何でもするんですけど何でも中途半端。
セピユロスさんにはこの我が一族の伝統だけは受け継いでほしくありません。
ヴィーナの苦労する姿が目に浮かぶよう。
「いやディーテも詳しいね。色々と仕掛けがね。ははは…… 」
笑ってごまかすボノ。
いいですよ。それくらいなら可愛いじゃありませんか。
釣りが下手でもいいんです。狩猟が下手でもいいんです。
毎日誠実に我が一族の恥にならないよう行動するなら構わないんです。
仕掛は罠でしょう? 釣りには使いませんよ。
たかが個人で楽しむフィッシングに大掛かりな仕掛けも罠も必要ありませんよね。
私がいくら女だからってそれくらい何度もご一緒しましたから分かります。
最近誘ってくれなくなりましたね。別に興味もありませんからいいんですけどね。
ヴィーナと三人家族水入らずと考えるのは私がこの陽気で頭をおかしくしたから?
ほらセピユロスさん見ててくださいね。これがあなたたちの何年後かの未来ですよ。
「ではそろそろ。お邪魔しては悪いですからね」
二人が呑気に釣りをしてる間に鉱山の状況を見回るとしましょう。
まさか荒らされてないでしょうね。
もし本気で発掘場所を探そうとするなら私をつけるか随行メイドと仲良くなるか。
管理人が気づくこともあるがそんな大胆なことの出来ない小心者を選んでますから。
問題は発掘チームの誰かが漏らすかボノが嗅ぎつけて女に漏らすかした場合。
だからボノが必ずどこにいるか確認してから行動している。
それは今回のような見回りの時も同様。
ボノにはやはり教えられない。
出会った当初は信頼の置ける立派な方だった。
でも今は違う。最も信頼の置けない旦那様になってしまった。
残念。早く誠実なボノに戻って欲しい。
それで行くとセピユロス様は素晴らしい。
どうであれヴィーナを心配し一番に考えている。
昨夜のようにふざける可愛らしいセピユロス様も悪くない。
いい大人をからかうお茶目な方。
私が本気にしたらどうするつもりなんでしょう。
はいもちろん心得ています。
ボノに教わったんでしょう。
これも一種のお遊び。
楽しければそれでいいと言う考え方は刹那的で決してよろしくありません。
ただここは都会に比べても娯楽が少なく長い夜にはお話だけではさぞかし退屈。
お相手差し上げればよかったと後悔してるんですよ。少々大人げない対応。
では我が一族の繁栄を支える宝を見て回りましょう。
他の者に任せてもいいですがやはり自分の目で確かめておきたい。
いくら信用のおける者でもお宝に目が眩むことはありますから。
「ご主人様いかがでしょう? 」
「ええ問題ないわ。次に行きましょう」
盗掘の跡があればすぐに分かる。
何と言っても盗掘して元に戻す奇特な者はいない。
時間もかかるし手間。第一に無意味。
カモフラージュするだけ時間の無駄。
我が一族またはその後も関係を続けようとする者しか当てはまらない。
「ちょっとこれは? 」
メイドが光を照らす。
「ああ大丈夫です。これは小動物によるもの。決して盗掘された跡ではありません」
細かいところは無視しても問題ない。
ただそう見せかけて準備を進めてる盗掘団もいる。
「怪しくありませんか? 」
「うふふふ…… ネズミかウサギか確認しましょうか? 」
近くに巣があるはずだと言い張るメイド。
「もう充分。今回はこれで調査を終えましょう」
つい果敢な勇者の真似事を。
「はいご主人様」
これ以上の冒険は刺激が強すぎる。
続く
朝から糸を垂らしてもさっぱり。
おかわいそうな二人。
どう慰めて差し上げましょうか。
「仕掛けに時間が掛ったようですね。午後からは本格的に行くのでしょう? 」
殿方のプライドを傷つけないようにとよくお婆様に言われましたっけ。
本当に情けないんだから。
お酒も呑む。タバコも吸う。何でもするんですけど何でも中途半端。
セピユロスさんにはこの我が一族の伝統だけは受け継いでほしくありません。
ヴィーナの苦労する姿が目に浮かぶよう。
「いやディーテも詳しいね。色々と仕掛けがね。ははは…… 」
笑ってごまかすボノ。
いいですよ。それくらいなら可愛いじゃありませんか。
釣りが下手でもいいんです。狩猟が下手でもいいんです。
毎日誠実に我が一族の恥にならないよう行動するなら構わないんです。
仕掛は罠でしょう? 釣りには使いませんよ。
たかが個人で楽しむフィッシングに大掛かりな仕掛けも罠も必要ありませんよね。
私がいくら女だからってそれくらい何度もご一緒しましたから分かります。
最近誘ってくれなくなりましたね。別に興味もありませんからいいんですけどね。
ヴィーナと三人家族水入らずと考えるのは私がこの陽気で頭をおかしくしたから?
ほらセピユロスさん見ててくださいね。これがあなたたちの何年後かの未来ですよ。
「ではそろそろ。お邪魔しては悪いですからね」
二人が呑気に釣りをしてる間に鉱山の状況を見回るとしましょう。
まさか荒らされてないでしょうね。
もし本気で発掘場所を探そうとするなら私をつけるか随行メイドと仲良くなるか。
管理人が気づくこともあるがそんな大胆なことの出来ない小心者を選んでますから。
問題は発掘チームの誰かが漏らすかボノが嗅ぎつけて女に漏らすかした場合。
だからボノが必ずどこにいるか確認してから行動している。
それは今回のような見回りの時も同様。
ボノにはやはり教えられない。
出会った当初は信頼の置ける立派な方だった。
でも今は違う。最も信頼の置けない旦那様になってしまった。
残念。早く誠実なボノに戻って欲しい。
それで行くとセピユロス様は素晴らしい。
どうであれヴィーナを心配し一番に考えている。
昨夜のようにふざける可愛らしいセピユロス様も悪くない。
いい大人をからかうお茶目な方。
私が本気にしたらどうするつもりなんでしょう。
はいもちろん心得ています。
ボノに教わったんでしょう。
これも一種のお遊び。
楽しければそれでいいと言う考え方は刹那的で決してよろしくありません。
ただここは都会に比べても娯楽が少なく長い夜にはお話だけではさぞかし退屈。
お相手差し上げればよかったと後悔してるんですよ。少々大人げない対応。
では我が一族の繁栄を支える宝を見て回りましょう。
他の者に任せてもいいですがやはり自分の目で確かめておきたい。
いくら信用のおける者でもお宝に目が眩むことはありますから。
「ご主人様いかがでしょう? 」
「ええ問題ないわ。次に行きましょう」
盗掘の跡があればすぐに分かる。
何と言っても盗掘して元に戻す奇特な者はいない。
時間もかかるし手間。第一に無意味。
カモフラージュするだけ時間の無駄。
我が一族またはその後も関係を続けようとする者しか当てはまらない。
「ちょっとこれは? 」
メイドが光を照らす。
「ああ大丈夫です。これは小動物によるもの。決して盗掘された跡ではありません」
細かいところは無視しても問題ない。
ただそう見せかけて準備を進めてる盗掘団もいる。
「怪しくありませんか? 」
「うふふふ…… ネズミかウサギか確認しましょうか? 」
近くに巣があるはずだと言い張るメイド。
「もう充分。今回はこれで調査を終えましょう」
つい果敢な勇者の真似事を。
「はいご主人様」
これ以上の冒険は刺激が強すぎる。
続く
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