なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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特訓

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「おかしいですよご主人様」
ムッとする。自分でおかしいと言うのは構わない。
でも人に言われる筋合いはない。
「ちょっと…… 」
「それからいつもにも増して興奮なさっています。
お気を付けください」
また言った。もうはっきりものを言うのも考えものね。

「それで私は何をすれば言いのかしら? 」
「読書でもなさいませ」
「もう飽きました」
屋敷にある本はすべて読み尽した。
何万冊あろうと幼き頃から読んでいるので頭に入っている。
新しいのを揃えるのも面倒。どうしましょう?

「いつまでも子供みたいにまったく困ったお方」
「ほほほ…… 若く見えるかしら」
「はいはい。他の方よりそれは若く見えますよ。何と言っても苦労されてない。
私から言うのもおかしいですがもう少し年相応な振る舞いを期待しております」
あーあ。本気で怒らせたかしら。
冗談なのにネーバったらもう。

「それで私は何をすれば」
「そうですね。でしたら特訓をなさればよろしいかと」
暇だからと言ってまだ暗くもなってないのに。
秘密の特訓を誰かに見られでもしたらどうするつもり?
私は嫌よ。恥ずかしくて恥ずかしくて。
家ではなくせめてお庭でやれたらいいがもちろんそれは認められてない。
不思議よね。誰が認めないと言うの?
ここの屋敷は私の所有物。
何と言っても女主人。
逆らう者など存在しないはず。
なぜこうなったのかもう訳が分からない。

「では使用人を数名用意します。彼らに手伝ってもらってそれから先生も」
またあの方? 熱心だとは思います。
でも教え方が大雑把で複雑なところはまったく理解できない。
本来でしたら変えてもらいたいが秘密を知られては恥ずかしくて外を歩けません。
だから嫌でも専属になってもらわなくてはならない。

「では失礼します。ワガママはほどほどにお願いします」
もうまったく。失礼しちゃう。誰がワガママ娘よ。
昔からのあだ名が定着して密かに呼ばれているのは知っている。
私がお母様からこの屋敷を引き継いだものだから。

そう私の父は婿養子。ボノも同様。
だから私に頭が上がらない。
もしあの可愛らしい坊やが本気なら彼もそう言う運命になる。

あーもうそれにしてもヴィーナはまだ?
到着したら知らせるように言ってるのに。
とりあえず暇つぶしに例の特訓をするとしましょう。
しかしどうやって集めたのかしら。
まだ夕方だと言うのに忙しいでしょうに。
本当に使用人かしら?
村の貧しい者ってことないわよね?

お付の者を追い払ったので一人で行くしかなくなった。
まさか主人が自分の家で迷うなんて有り得ない。
「どうしましたご主人様」
私が迷っているとは誰も知らずに挨拶するのみ。
またはただ伏せるのみ。
立派ね。教育が行き届いている。
でも誰か私を助けてくださらない?
どこへ行けばいいの?

「ご主人様どこへ行かれるのですか。こちらです」
もう一人のお付のメイドに出会えた。
「あらそうでしたわね。少々メイドたちの仕事ぶりを見てみようかと」
「それは構いませんが本来メイド頭の役割。出来ればお控えください」
下手な言い訳せずに黙ればよかった。
今怒鳴り着けたら逆効果。

「それでヴィーナはまだ? 」
「はい…… いえ今しがたお着きになりました。お着替え中かと」
ふう一安心。なんだかんだ言っても一人娘。
親の言う事はまったく聞かない誰に似たか困った子。
だけどそれでも娘が、ヴィーナが可愛くない訳がない。
そう自分に言い聞かせてる節もあるが自分では何ともよく分からない。

「そう。ではお食事の前に…… あーっダメだわ。今から特訓が」
「どういたしましょう? 」
「放っておきましょう。それよりもセピユロスさんはどうしております」
「はい旦那様とお会いしています」
そうだったボノも抜け目がない。
見定めようとするとは。できればその役目私が代わってあげたかった。
「では参りましょうか」

部屋と言うよりは大きな廊下のイメージ。
私も小さい頃よく遊んだ覚えがある。
広いからつい大はしゃぎ。
よくお母さまに叱られた記憶がある。
でもそんなことどうでも良くなるほどここの者と遊んだ。
今もある意味遊んでいるのだから不思議なもの。

                   続く
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