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行動開始!
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第六世界では十日以内に住処を決めそれから十日以内に婚姻しなければならない。
それが第六世界に足を踏み入れる条件。
ほぼ強制だからアンも条件を呑んだのだろう。
パワポの話では遅くても十日がタイムリミットだと。
一日でも早く第六世界へ。
「まさかリナも知ってたの? 」
「ごめんなさいゲン。妖精だから当然その手の情報には精通してるわ。
ごく当たり前の基本的なこと」
リナも知っていた。まるで裏切られたような気分。
「ほらゲン。気を落とさずに消えた門番の行方を探るのよ」
「分かってるって。でもさ…… 」
どうもやる気が出ない。もはや諦めモード。
あの門番が見つかっても手遅れかもしれない。
だって婚姻するとなると相手は恐らく仲間。
言の葉村の者でなくても旅を共にした流浪の民。
俺で本当に勝てるのか?
「まずどうする? 」
パワポは積極的だ。彼女にとっても大事なこと。
「ほらゲンも落ち込んでないでしっかりしなさい! 」
リナに励まされる。意外といい奴? でもちょっと怖いな。
じっくり話し合ってから行動開始。
まずは男の家族から。
町外れの墓場近くにぽつぽつと点在する家の一つにお邪魔する。
「ハイどのようなご用件でしょうか? 」
「実は…… あれ何だっけ? 」
つい度忘れ。せっかく代表して話を聞こうとしたのに。
ここはリナに任せるとしよう。慣れないことはしないものだ。
「実は失踪したご主人の件なんですが」
「はい。見つかったんですねあの人? 」
勝手に誤解して胸を撫でおろす。いくら何でも展開が早過ぎるだろう?
「いえまだです。失踪前日に不審な点は? 」
「まったく。何でいなくなったのか見当もつきません」
「あれパパ? 」
勝手に俺のことをパパだと。それはさすがに無理があるよ。
「ホラご挨拶! 」
「イブだよ。へへへ…… 」
あーあ可愛いなこの子。人懐っこいからつい抱きしめたくなる。
「心当たりは? 」
「それが全然。なぜこうなったのか…… 」
疲れた表情の奥さん。まだ子供も幼いし若いのに老けて見える。
いきなりいなくなったからな。
ただの失踪ならゆっくり待てばいいが鍵を持っての失踪。
第六世界へ繋がる扉の鍵。町中を騒がす大問題なのは間違いない。
この鍵を悪用して何か企んでいる可能性もあるのだから。
とにかく疑われてもいる訳で。まずは男はただの被害者なのか巻き込まれたのか?
仲間なのか? 立場がはっきりしないと先に進まない。
「家では不満は? 」
「そんなことありません! 夫婦円満ですから」
強く主張すればするほど疑わしく見える。
ただ奥さんの反応を見ると思い当たる節はなさそうだ。
ではやはり巻き込まれたか? それだと何らかの手がかりがあってもおかしくない。
「お酒は? 」
「はい。どこで飲むんだか。よく酔っぱらって帰ってきてました。
酔うと人に絡んでいたみたいですよ。酔うと気が大きくなるのか。
だから飲まないでって言ってるんですが…… 」
どうやら酒癖が相当悪かったようだ
念のためにすべての部屋を見て回るが異常なし。
男が潜んでもいないし手がかりだって見つからない。
「ではまた…… 」
続けて隣の家へ。
「何だお前たちは? いや見覚えがあるぞ」
事情を説明し協力してもらう。
「おい。一か月ぐらい待てないのかよ? 迷惑な奴らだな」
男はすることもなく自宅で暇を持て余している様子。
「あいつね? さあねえ。酒? よく飲んでいたみたいだぜ」
一応部屋を見せてもらう。
異常なし。隠してる様子も見られない。当然だが誰もいない。
「ではまたご協力ください」
「そうだ。最後に一つだけ。どこで飲んでいたか分かりますか? 」
家で飲んでなくてバーだってないのにどこで?
もちろんここにも酒を販売するところはあるが店が提供してるのとでは違う。
出来るならお店でゆっくりと飲みたいはずだ。
「いや…… その…… 」
思ってもみなかった質問を投げかけられたからか動揺する。
「俺は知らない。関係ない! 」
そう言って口を割ろうとしない。一体何を隠してると言うんだろう?
これ以上は無駄。時間がもったいない。次だ。次に行こう。
次は思い切って国境警備隊に話を聞くことに。
「いや誰も通ってないさ。ここ一週間は誰も…… 人間はね」
多少含みを持たせてるが正直に答えてるので問題ないだろう。
まあ今回はただの挨拶と言うか確認。
通らなかったことさえ証明できればそれでいい。
こうして日が暮れる。
ほぼ話を聞いただけで終わってしまった。
タイムリミットまでにはまだ時間があるがゆっくりはしてられないな。
一日でも早いアンとの再会を夢見て大人しく寝ることに。
続く
それが第六世界に足を踏み入れる条件。
ほぼ強制だからアンも条件を呑んだのだろう。
パワポの話では遅くても十日がタイムリミットだと。
一日でも早く第六世界へ。
「まさかリナも知ってたの? 」
「ごめんなさいゲン。妖精だから当然その手の情報には精通してるわ。
ごく当たり前の基本的なこと」
リナも知っていた。まるで裏切られたような気分。
「ほらゲン。気を落とさずに消えた門番の行方を探るのよ」
「分かってるって。でもさ…… 」
どうもやる気が出ない。もはや諦めモード。
あの門番が見つかっても手遅れかもしれない。
だって婚姻するとなると相手は恐らく仲間。
言の葉村の者でなくても旅を共にした流浪の民。
俺で本当に勝てるのか?
「まずどうする? 」
パワポは積極的だ。彼女にとっても大事なこと。
「ほらゲンも落ち込んでないでしっかりしなさい! 」
リナに励まされる。意外といい奴? でもちょっと怖いな。
じっくり話し合ってから行動開始。
まずは男の家族から。
町外れの墓場近くにぽつぽつと点在する家の一つにお邪魔する。
「ハイどのようなご用件でしょうか? 」
「実は…… あれ何だっけ? 」
つい度忘れ。せっかく代表して話を聞こうとしたのに。
ここはリナに任せるとしよう。慣れないことはしないものだ。
「実は失踪したご主人の件なんですが」
「はい。見つかったんですねあの人? 」
勝手に誤解して胸を撫でおろす。いくら何でも展開が早過ぎるだろう?
「いえまだです。失踪前日に不審な点は? 」
「まったく。何でいなくなったのか見当もつきません」
「あれパパ? 」
勝手に俺のことをパパだと。それはさすがに無理があるよ。
「ホラご挨拶! 」
「イブだよ。へへへ…… 」
あーあ可愛いなこの子。人懐っこいからつい抱きしめたくなる。
「心当たりは? 」
「それが全然。なぜこうなったのか…… 」
疲れた表情の奥さん。まだ子供も幼いし若いのに老けて見える。
いきなりいなくなったからな。
ただの失踪ならゆっくり待てばいいが鍵を持っての失踪。
第六世界へ繋がる扉の鍵。町中を騒がす大問題なのは間違いない。
この鍵を悪用して何か企んでいる可能性もあるのだから。
とにかく疑われてもいる訳で。まずは男はただの被害者なのか巻き込まれたのか?
仲間なのか? 立場がはっきりしないと先に進まない。
「家では不満は? 」
「そんなことありません! 夫婦円満ですから」
強く主張すればするほど疑わしく見える。
ただ奥さんの反応を見ると思い当たる節はなさそうだ。
ではやはり巻き込まれたか? それだと何らかの手がかりがあってもおかしくない。
「お酒は? 」
「はい。どこで飲むんだか。よく酔っぱらって帰ってきてました。
酔うと人に絡んでいたみたいですよ。酔うと気が大きくなるのか。
だから飲まないでって言ってるんですが…… 」
どうやら酒癖が相当悪かったようだ
念のためにすべての部屋を見て回るが異常なし。
男が潜んでもいないし手がかりだって見つからない。
「ではまた…… 」
続けて隣の家へ。
「何だお前たちは? いや見覚えがあるぞ」
事情を説明し協力してもらう。
「おい。一か月ぐらい待てないのかよ? 迷惑な奴らだな」
男はすることもなく自宅で暇を持て余している様子。
「あいつね? さあねえ。酒? よく飲んでいたみたいだぜ」
一応部屋を見せてもらう。
異常なし。隠してる様子も見られない。当然だが誰もいない。
「ではまたご協力ください」
「そうだ。最後に一つだけ。どこで飲んでいたか分かりますか? 」
家で飲んでなくてバーだってないのにどこで?
もちろんここにも酒を販売するところはあるが店が提供してるのとでは違う。
出来るならお店でゆっくりと飲みたいはずだ。
「いや…… その…… 」
思ってもみなかった質問を投げかけられたからか動揺する。
「俺は知らない。関係ない! 」
そう言って口を割ろうとしない。一体何を隠してると言うんだろう?
これ以上は無駄。時間がもったいない。次だ。次に行こう。
次は思い切って国境警備隊に話を聞くことに。
「いや誰も通ってないさ。ここ一週間は誰も…… 人間はね」
多少含みを持たせてるが正直に答えてるので問題ないだろう。
まあ今回はただの挨拶と言うか確認。
通らなかったことさえ証明できればそれでいい。
こうして日が暮れる。
ほぼ話を聞いただけで終わってしまった。
タイムリミットまでにはまだ時間があるがゆっくりはしてられないな。
一日でも早いアンとの再会を夢見て大人しく寝ることに。
続く
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