言葉の暴力で世界最強! 消えたヒロインを追い求めて世界へ! 幼馴染に告白するつもりがなぜかモンスターに愛の告白を

二廻歩

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アンを襲う嫉妬竜

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さあそろそろ歩き出すか。
ハイマウンテンを下る。
アトリがついてきてるようなそんな感覚がする。
ははは…… そんな訳ないよな。
全然切り替えられてないや俺。忘れようと思ったけど無理みたいだな。

アトリ! アトリ! アトリ!
声の限り叫び続ける。だがちっとも気持ちが晴れやしない。
こうして傷心のまま下山は完了。
あとは第五世界に通じる道を探るだけ。

アン? アンはどこだ? どこにいる?
せっかくアトリが作ってくれたチャンス。
この機を逃してなるものか。
どこだ? どこにいる?
ダメだ…… まったく見当たらない。
やっぱりもうすでに行ってしまったか?

心が折れる。
結局アンに会えなかった……
悲嘆に暮れているといきなり女性の悲鳴が聞こえてくる。
どこだ? どこにいる?

きゃああ!
いやああ!
ぎゃああ!
悲鳴は一人だけではなかった。何人もの叫び声がこだまする。
これはただごとではないな。
叫び声のする方へ。

近い。近いぞ。こっちだ! こっちだ!
叫び声を頼りに場所を特定する。
アンが危ない。急げ!
どこだ? どこにいるアン?
うん? 第五世界?

目の前には第五世界が広がっていた。
声の主はやはり流浪の民だった。
その一人にアンが。アンの姿がある。
アンの存在を確認出来た。
叫び声のする方へ突っ込む。
一体何が起きてるんだ?
ここはまだ第四世界?
と言うことはアンはまだ通り抜けていないのか?

うわあああ!
頭を抱えて助けを請う一人の男。
怪我をしたのか腕に包帯を巻いてる。
パン屋で女性が言っていた情報はどうやら正確だったらしい。

「おいどうした? 」
「ああ助けて! 化け物が襲って来たんだ! 」
「化け物? 」
「そうだ。龍の化け物だ。お願いだから助けてくれ! 」
そうやって足を掴んでくるから始末が悪い。
「それで化け物は今どこに? 」
「だからあっちに…… 女の子を追い駆け回してる」
嘘だろ? これはまさか……

きゃああ!
アンの叫び声が聞こえた。
いたぞ。今にもアンに襲い掛かろうとしている竜と言うかドラゴン。
「待ってくれ! アトリ! 」
さっきまで行動を共にしていたアトリの成れの果て。
嫉妬竜。

アトリは嫉妬竜になってしまった。
あれほど自分は大丈夫だと言ったのに……
竜は俺に気づきアンを放す。
そして訳も分からずにこちらに向かって来る。
これは愛情をこめてなどではなく嫉妬に狂って訳が分からなくなってるのだ。
ただこれでアンが解放された。

「おいアトリ聞いてくれ! 俺はお前のことが…… 」
嫉妬竜はストップ。
まだ多少アトリとしての記憶が残ってる。それがストップをかけたのだろう。
しかしどうすれば? どうすればいいんだ!
俺には暴言カードと名刀・辛水ぐらいしかない。
これでは嫉妬竜になったアトリを止めることは出来ない。
どうすればいい? 本当にどうすればいいんだ?
うん? 何か聞こえる。
こんな時に幻聴。しかし今は幻聴を相手していられない。
どうにかしてアトリを…… 葬る!

「ご主人様! もうダメなんです。自分では決して抑えられない。
どうしてもあの女を八つ裂きにしなくてはいけないんです」
「アトリ? まだお前は意識が保ててるのか? 」
信じられない。嫉妬竜になった者は意識になどないのかと思っていたが。
そしてなぜ会話が出来る?
これは一体? やはり俺のただの妄想なのか?

それにしても口調に落ち着いた態度。従順なところはまったく変わってない。
ただ言ってることは不穏ではあるけどね。
「いえ意識はあるんですがただ自分がコントロール出来ないだけなんです。
ご主人様を想えばこんなことしたくない。
でもこのままあの女を見逃す訳にはいかない」
言ってることは理性的なんだけどなそれでも怒りがあるって言うのか? 
嫉妬竜の真実に迫る。

「お願いご主人様! どうか醜い嫉妬竜に堕ちたアトリをお救いください」
懇願するアトリ。俺も何とかしてやりたがいが打つ手がない。
うん…… そうか。なぜ言葉を交わせるかと思ったらノコタンから継承した能力か。
シカだけでなく大型動物に爬虫類まで会話が可能になった。
そして引き継いでレベルアップしてマウントマンなどのモンスターをも自由自在。
そんな今なら嫉妬竜とだって語りあえる訳だ。
よく考えれば難しいことではない。納得。納得。
おっと…… 今は呑気に納得してる時じゃない。


                 続く
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