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アトリ 私の大切な思い出

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マウントマンの協力もあってどうにかロープウェイで頂上付近まで。
そのおかげで体力も温存できた。

「見えてきましたよご主人様」
「うおおお! 着いたぞ! ほれ一番乗り! 」
「はいそうですね」
騒ぐかと思いきや意外にも大人しいアトリ。
うん? 変だな。頂上だと言うのに嬉しくないのか?
感情が乏しいのはいつものことだが何か違和感があるんだよな。
ようやく頂上。これで後は下るのみだがその前に……

お食事休憩。
ハイマウンテンから見える絶景をバックにアトリの愛情弁当を食す。
「うんうん。これ美味いね」
「はい。ご主人様の好きな卵焼きを多めに作りました」
「へへへ…… では有難く」
アトリと二人幸せな時間を過ごす。
ちょっと照れるけど仲良くイチャイチャ。誰も見ていないからいいよね。
「ああご主人様。水をどうぞ。その勢いでは詰まってしまいますよ」

アトリは俺の為に弁当を作ってくれた。
「今度はこれちょうだい」
「もうご主人様ったら。では大きく口を開けてください」
唐揚げを一つ。
「うんうん。もう一つお願い」
「はいどうぞ」
そうやって二個、三個と口に放り込んでもらう。
「あの…… もう少しゆっくりで」
「ハイハイ! ハイハイ! 」
「うおおお! ダメだアトリ…… 」
「ハイハイ。ハイハイ」
「助けて…… 」
「ハイハイって…… ああ! 申し訳ありませんご主人様! 」

急いでお水を持って来るかと思いきや古びた小屋に。ここってもしかして山小屋?
もう水はなくなったそう。爺さんの余りだとか。
そう言えば爺さんとノコタンの決闘はどうなったんだろうか?

五分我慢してようやく水を飲むことが出来た。
ふう危うく昇天するところだった。
「アトリ! 」
「申し訳ございませんご主人様! 」
「いやいいよ。さあ続けてくれ」
合わせて四人分を平らげる。元々四人分を作っていたからな。
まさか二人が決闘することになるとは夢にも思わなかった。
俺が三人分でアトリが残りを片付ける。

「ふうお腹一杯だな」
「そうですね。もうそろそろ…… 」
「寝るか」
「ご主人様! 」
「ははは…… 冗談だって。さあ行こう」
手を繋ごうとした時だった。なぜか嫌がる素振りを見せる。

「ご主人様…… 」
「どうした? アトリの好きにしていいよ」
「ではご主人様。そこを動かないでください」
そう言うアトリはなぜかいつもより真剣だ。
これはまさか……
「おいまさか俺を突き落とす気か? 」
再びのダイブ・トゥ・ブルー? それはちょっと遠慮したいな。
「ご主人様…… 」
そう言うと近づいてくる。

「待ってアトリ…… 」
「では遠慮なく」
「だから俺は…… しかも食ったばかりだし…… 」
アトリは命令に従うことなく自分の考えで気持ちを伝える。
強引なアトリ。俺はただ受け入れるしかない。

「アトリ…… 」
「ご主人様…… 申し訳ありません。ここでお別れです。これ以上は辛すぎます」
山を下ればもう目の前に第五世界が広がってるはず。
アトリの気持ちもよく分かる。
確かに最後の思い出がマウントマン二匹とロープウェイではさすがに辛いか。
頂上で一緒にお昼だけでは物足りないよな。
アトリを想うと胸が苦しい。

「ではこれでご主人様。ありがとうございました」
そう言って勝手に行こうとする。
本当に急展開で考えが追いつかない。
ハイマウンテン駅では爺さんとノコタンと別れて今ここでアトリと別れる羽目に。
俺はどうしてこうついてないのだろう。
アトリの複雑な気持ちも理解してやれずに俺と来たら…… 酷いご主人様だな。
アトリは第五世界には行けない。だから自ら身を引いた。
俺を信じろと言っても無理だろうな。

やっぱり俺って人望ないのかな?
へへへ…… これで二回目なんだぜ。
チーム・スターフィッシュはこれにて解散。

アトリは決意してしまったらしい。止めるのは不可能。
「おいアトリ! 待ってくれアトリ! 」
そう言って無理矢理腕を掴む。
「もうこれ以上はお止めくださいご主人様! 惨めになるばかりです。
それに我慢出来なくなってしまいます」
アトリは急いでこの場を離れようとしている。
せめて最後の思い出に一緒に下山しようと思ったのにその余裕さえないようだ。
残念だ。実に残念だよ。

「最後にもう一度」
アトリに想いをぶつける。
つい勢いで俺から。
これが別れのキスになるとはな。

「ありがとうございましたご主人様。ではどうかお元気で」
アトリは姿を消した。

呆然自失。
一歩を踏み出すことさえままならない状況。
だが切り替えるしかない。
送り出してくれたアトリの為にも今こそ目的を達成しよう。
さあ歩き出すか。

ハイマウンテンを下る。

                   続く
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