171 / 200
アトリ 私の大切な思い出
しおりを挟む
マウントマンの協力もあってどうにかロープウェイで頂上付近まで。
そのおかげで体力も温存できた。
「見えてきましたよご主人様」
「うおおお! 着いたぞ! ほれ一番乗り! 」
「はいそうですね」
騒ぐかと思いきや意外にも大人しいアトリ。
うん? 変だな。頂上だと言うのに嬉しくないのか?
感情が乏しいのはいつものことだが何か違和感があるんだよな。
ようやく頂上。これで後は下るのみだがその前に……
お食事休憩。
ハイマウンテンから見える絶景をバックにアトリの愛情弁当を食す。
「うんうん。これ美味いね」
「はい。ご主人様の好きな卵焼きを多めに作りました」
「へへへ…… では有難く」
アトリと二人幸せな時間を過ごす。
ちょっと照れるけど仲良くイチャイチャ。誰も見ていないからいいよね。
「ああご主人様。水をどうぞ。その勢いでは詰まってしまいますよ」
アトリは俺の為に弁当を作ってくれた。
「今度はこれちょうだい」
「もうご主人様ったら。では大きく口を開けてください」
唐揚げを一つ。
「うんうん。もう一つお願い」
「はいどうぞ」
そうやって二個、三個と口に放り込んでもらう。
「あの…… もう少しゆっくりで」
「ハイハイ! ハイハイ! 」
「うおおお! ダメだアトリ…… 」
「ハイハイ。ハイハイ」
「助けて…… 」
「ハイハイって…… ああ! 申し訳ありませんご主人様! 」
急いでお水を持って来るかと思いきや古びた小屋に。ここってもしかして山小屋?
もう水はなくなったそう。爺さんの余りだとか。
そう言えば爺さんとノコタンの決闘はどうなったんだろうか?
五分我慢してようやく水を飲むことが出来た。
ふう危うく昇天するところだった。
「アトリ! 」
「申し訳ございませんご主人様! 」
「いやいいよ。さあ続けてくれ」
合わせて四人分を平らげる。元々四人分を作っていたからな。
まさか二人が決闘することになるとは夢にも思わなかった。
俺が三人分でアトリが残りを片付ける。
「ふうお腹一杯だな」
「そうですね。もうそろそろ…… 」
「寝るか」
「ご主人様! 」
「ははは…… 冗談だって。さあ行こう」
手を繋ごうとした時だった。なぜか嫌がる素振りを見せる。
「ご主人様…… 」
「どうした? アトリの好きにしていいよ」
「ではご主人様。そこを動かないでください」
そう言うアトリはなぜかいつもより真剣だ。
これはまさか……
「おいまさか俺を突き落とす気か? 」
再びのダイブ・トゥ・ブルー? それはちょっと遠慮したいな。
「ご主人様…… 」
そう言うと近づいてくる。
「待ってアトリ…… 」
「では遠慮なく」
「だから俺は…… しかも食ったばかりだし…… 」
アトリは命令に従うことなく自分の考えで気持ちを伝える。
強引なアトリ。俺はただ受け入れるしかない。
「アトリ…… 」
「ご主人様…… 申し訳ありません。ここでお別れです。これ以上は辛すぎます」
山を下ればもう目の前に第五世界が広がってるはず。
アトリの気持ちもよく分かる。
確かに最後の思い出がマウントマン二匹とロープウェイではさすがに辛いか。
頂上で一緒にお昼だけでは物足りないよな。
アトリを想うと胸が苦しい。
「ではこれでご主人様。ありがとうございました」
そう言って勝手に行こうとする。
本当に急展開で考えが追いつかない。
ハイマウンテン駅では爺さんとノコタンと別れて今ここでアトリと別れる羽目に。
俺はどうしてこうついてないのだろう。
アトリの複雑な気持ちも理解してやれずに俺と来たら…… 酷いご主人様だな。
アトリは第五世界には行けない。だから自ら身を引いた。
俺を信じろと言っても無理だろうな。
やっぱり俺って人望ないのかな?
へへへ…… これで二回目なんだぜ。
チーム・スターフィッシュはこれにて解散。
アトリは決意してしまったらしい。止めるのは不可能。
「おいアトリ! 待ってくれアトリ! 」
そう言って無理矢理腕を掴む。
「もうこれ以上はお止めくださいご主人様! 惨めになるばかりです。
それに我慢出来なくなってしまいます」
アトリは急いでこの場を離れようとしている。
せめて最後の思い出に一緒に下山しようと思ったのにその余裕さえないようだ。
残念だ。実に残念だよ。
「最後にもう一度」
アトリに想いをぶつける。
つい勢いで俺から。
これが別れのキスになるとはな。
「ありがとうございましたご主人様。ではどうかお元気で」
アトリは姿を消した。
呆然自失。
一歩を踏み出すことさえままならない状況。
だが切り替えるしかない。
送り出してくれたアトリの為にも今こそ目的を達成しよう。
さあ歩き出すか。
ハイマウンテンを下る。
続く
そのおかげで体力も温存できた。
「見えてきましたよご主人様」
「うおおお! 着いたぞ! ほれ一番乗り! 」
「はいそうですね」
騒ぐかと思いきや意外にも大人しいアトリ。
うん? 変だな。頂上だと言うのに嬉しくないのか?
感情が乏しいのはいつものことだが何か違和感があるんだよな。
ようやく頂上。これで後は下るのみだがその前に……
お食事休憩。
ハイマウンテンから見える絶景をバックにアトリの愛情弁当を食す。
「うんうん。これ美味いね」
「はい。ご主人様の好きな卵焼きを多めに作りました」
「へへへ…… では有難く」
アトリと二人幸せな時間を過ごす。
ちょっと照れるけど仲良くイチャイチャ。誰も見ていないからいいよね。
「ああご主人様。水をどうぞ。その勢いでは詰まってしまいますよ」
アトリは俺の為に弁当を作ってくれた。
「今度はこれちょうだい」
「もうご主人様ったら。では大きく口を開けてください」
唐揚げを一つ。
「うんうん。もう一つお願い」
「はいどうぞ」
そうやって二個、三個と口に放り込んでもらう。
「あの…… もう少しゆっくりで」
「ハイハイ! ハイハイ! 」
「うおおお! ダメだアトリ…… 」
「ハイハイ。ハイハイ」
「助けて…… 」
「ハイハイって…… ああ! 申し訳ありませんご主人様! 」
急いでお水を持って来るかと思いきや古びた小屋に。ここってもしかして山小屋?
もう水はなくなったそう。爺さんの余りだとか。
そう言えば爺さんとノコタンの決闘はどうなったんだろうか?
五分我慢してようやく水を飲むことが出来た。
ふう危うく昇天するところだった。
「アトリ! 」
「申し訳ございませんご主人様! 」
「いやいいよ。さあ続けてくれ」
合わせて四人分を平らげる。元々四人分を作っていたからな。
まさか二人が決闘することになるとは夢にも思わなかった。
俺が三人分でアトリが残りを片付ける。
「ふうお腹一杯だな」
「そうですね。もうそろそろ…… 」
「寝るか」
「ご主人様! 」
「ははは…… 冗談だって。さあ行こう」
手を繋ごうとした時だった。なぜか嫌がる素振りを見せる。
「ご主人様…… 」
「どうした? アトリの好きにしていいよ」
「ではご主人様。そこを動かないでください」
そう言うアトリはなぜかいつもより真剣だ。
これはまさか……
「おいまさか俺を突き落とす気か? 」
再びのダイブ・トゥ・ブルー? それはちょっと遠慮したいな。
「ご主人様…… 」
そう言うと近づいてくる。
「待ってアトリ…… 」
「では遠慮なく」
「だから俺は…… しかも食ったばかりだし…… 」
アトリは命令に従うことなく自分の考えで気持ちを伝える。
強引なアトリ。俺はただ受け入れるしかない。
「アトリ…… 」
「ご主人様…… 申し訳ありません。ここでお別れです。これ以上は辛すぎます」
山を下ればもう目の前に第五世界が広がってるはず。
アトリの気持ちもよく分かる。
確かに最後の思い出がマウントマン二匹とロープウェイではさすがに辛いか。
頂上で一緒にお昼だけでは物足りないよな。
アトリを想うと胸が苦しい。
「ではこれでご主人様。ありがとうございました」
そう言って勝手に行こうとする。
本当に急展開で考えが追いつかない。
ハイマウンテン駅では爺さんとノコタンと別れて今ここでアトリと別れる羽目に。
俺はどうしてこうついてないのだろう。
アトリの複雑な気持ちも理解してやれずに俺と来たら…… 酷いご主人様だな。
アトリは第五世界には行けない。だから自ら身を引いた。
俺を信じろと言っても無理だろうな。
やっぱり俺って人望ないのかな?
へへへ…… これで二回目なんだぜ。
チーム・スターフィッシュはこれにて解散。
アトリは決意してしまったらしい。止めるのは不可能。
「おいアトリ! 待ってくれアトリ! 」
そう言って無理矢理腕を掴む。
「もうこれ以上はお止めくださいご主人様! 惨めになるばかりです。
それに我慢出来なくなってしまいます」
アトリは急いでこの場を離れようとしている。
せめて最後の思い出に一緒に下山しようと思ったのにその余裕さえないようだ。
残念だ。実に残念だよ。
「最後にもう一度」
アトリに想いをぶつける。
つい勢いで俺から。
これが別れのキスになるとはな。
「ありがとうございましたご主人様。ではどうかお元気で」
アトリは姿を消した。
呆然自失。
一歩を踏み出すことさえままならない状況。
だが切り替えるしかない。
送り出してくれたアトリの為にも今こそ目的を達成しよう。
さあ歩き出すか。
ハイマウンテンを下る。
続く
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニートの幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……
佐々木直也
ファンタジー
交通事故で死んだオレが授かった特殊能力は──『怠け者でもラクして最強になれる、わずか3つの裏ワザ』だった。
まるで、くっそ怪しい情報商材か何かの煽り文句のようだったが、これがまったくもって本当だった。
特に、自分を無制限に複製できる【残機無限】によって、転生後、オレはとてつもない成長を遂げる。
だがそれを間近で見ていた幼馴染みは、才能の違いを感じてヤル気をなくしたらしく、怠け者で引きこもりで、学校卒業後は間違いなくニートになるであろう性格になってしまった……美少女だというのに。
しかも、将来有望なオレに「わたしを養って?」とその身を差し出してくる有様……!
ということでオレは、そんなニート幼馴染みに頭を悩ませながらも、最強の冒険者として、ダンジョン攻略もしなくちゃならなくて……まるで戦闘しながら子育てをしているような気分になり、なかなかに困った生活を送っています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる