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最後の手段

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最後の一枚。
チケット探しは難航を極める。
仮に所持していたとしても当然用があるのだから譲ってはくれない。
分かり切っていたことだがそれでも粘り強く交渉。
そうすればきっと道が切り開けるはずだ。

宿に戻り爺さんたちと情報交換。
「ダメじゃ! 誰も首を縦に振らん」
悔しそうに唇を噛む。己の無力さを嘆く。
「ああゲン。この分だと明日も難しいかもな」
ノコタンも何だか弱気。

「リーダーは何か掴んだじゃろ? 」
爺さんは人任せ。これではチケット探しを真面目にやったのか疑わしい。
「それが…… フロイテンが持ってたんだけど…… 」
フロイテンの最低行為にノコタンがブチキレ。
「あいつの思い通りにさせてなるものか! 」
「まあ。ものは考えようじゃ」
爺さんはアトリが我慢すればいい思ってるらしい。
何て非情なのだろう?

「こら爺さん! それはないだろ? 」
「そうだ! 俺のアトリを何だと思ってる? 」
「しかしのう…… ではどうするつもりじゃ? 」
結局解決策はない。残り一枚を譲り受けるしか方法はない。

「よしもういい。寝るぞ! 」
明日があるさ。チケット探しは明日頑張ればいい。
ただあと一枚確保できなかったとしても手はある。
爺さんをバックに無理矢理詰め込んで持ち込めばいい。
爺さんには窮屈だろうが我慢してもらう。
乗り込んでしまえばこちらのもの。
またはアトリを高性能なロボットだと言い張る手もある。
或いはノコタンをペットだと言い張ればいい。
そもそもシカとのハーフだからどこもおかしくない。
エクスプレス側が認めてくれれば問題解決だ。
どれも最悪の場合を想定しての最終手段。出来るなら騙すようなことはしたくない。

翌日。
ゴールドエクスプレスの出発時刻が迫ってきた。
明日の朝までに用意すれば何とかなるがそんな呑気なこと言ってられない。
何としても今日中に手に入れなれば。
昨日に引き続きフォレストバレーで聞き込み。

「あれ…… どうされたんですか? 」
気安く呼びかけて来たのは初日に出会った男。
モンスターでも半モンスターでもないただの町のゴミに絡まれる。
鬱陶しかったので成敗したがその時に出会ったのが彼。
町で悪さをするゴミはこれでいなくなったと喜んでくれた。
ぜひ我が家にとお呼ばれされてたのを忘れていた。

「お茶です」
フォレストバレー名産で木の枝を粉末状にしたものが振る舞われた。
当然だがお茶菓子がなくてはこれだけではね。
「それで何じゃ? 儂らは忙しい」
爺さんは遠慮することなくバリバリと音を立てる。
「はい。最近つけられてる気がするんです。そのせいでよく眠れなくて」
おかしな影が付きまとっていると真剣だ。

「勘違いじゃろ。お前にそんな価値はない! 」
何て酷いことを言うんだろこの爺さん?
これだけ歓迎されたのに単なる悪口。
「ですが…… 怖いんです」
めげずに続ける健気な男。
これで二件目か。まさか犯人は……

「心当たりはないの? 」
「心当たりは一つだけ。先日グッドバッド博士に招かれて屋敷へ」
「ほうほう。そこで関係を持ったとそう言うことじゃな? 」
飛躍し過ぎの爺さん。まさかそんなこと……
「いえ…… ぜひ協力して欲しいと頼まれました。
詳しい内容は口外しないよう言われたんで伏せますが実験に付き合わされたんです。

そこで博士の屋敷に泊まることになって…… トイレで迷って屋敷を彷徨いました。
それでも気付かれることなく一時間もしないで寝室へ。
博士には報告しなかったですが彷徨った形跡がバッチリあるからばれてるでしょう。
その日の夜からつけられてる気がして……
ローム氏とよく似ている。
二人とも単なる間抜けに思えるが。

「うむうむ。そろそろ終わったかの? 」
爺さんは聞く耳を持たずにただ聞き流していた。
「お願いです何とかしてください! 」
懇願する依頼人。
さすがに放っておく訳には行かない。

「分かったよ。今夜招かれてるから様子を探ってみるつもりだ。
それで博士について何か情報ある? 」
「はい。他所からの人間をよく招待してましたね。
この町に詳しくない旅人を招待して交流を図ってるそうです」
この男の言ってることが本当でもよそ者に興味を抱くのは不思議じゃない。
「それに関して悪い噂が。博士は旅人を帰したと言ってるが誰も見てない。
もしかしたら閉じ込めてるのではないかとの憶測もありました。
ここに初めて来た旅人がほとんどですから失踪していても誰も気づかない。
博士が嘘を吐いてれば最悪な事態も」
これは危険な香りがしてきた。
博士に会うのは止すべきだろうか?


                 続く
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