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着陸

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現在落下中。
高度は恐らく千メートルから二千メートルと言ったところ。
落下してるから正確な高度は不明。
あれ? 開かないぞ?
冷静に。冷静に。ここは深呼吸。深呼吸。
いや無理だ。落ち着いてなんかいられない。

ハアハア
ハアハア
まずい開かないぞ? 俺って不器用だから。
「ご主人様! それ反対です。早く! 」
「そんなこと言ってもアトリ…… あれ何で声がする? 」
ここはお空のはずだが? 違ったかな。そうか俺の心に話し掛けてるのか。
さすがは高性能。高度な通信技術を身につけたらしい。
「そんなことより早くご主人様! アトリに従ってください! 」
アトリが姿を見せる。
やっぱりいる。何でアトリが? 細かいことはこの際どうでもいいか。
こんな時パニックにならずに済むのはアトリのお陰。
そろそろパラシュートを開くとしよう。

パチ!
地面へ叩きつけられる直前でパラシュートが開く。
どうにか地上に戻って来られた。
ここからはジャンプしたっていい。
下は海でもなく柔らかそうな砂だから怪我の心配はないだろう。
これもすべてアトリのアドバイスあってのこと。
ただパラシュートが開かなかったのは俺が間違ったから。
それでもパニックにならずに諦めたり絡ませたりしなかったのが功を奏した。
本来人間はどうしようもなくなると焦ってチャンスを失う。
だが俺は仲間を、アトリを信じていたから冷静で居られた。

はい着陸!
すぐにアトリが飛んできた。
続けて爺さんとノコタップが駆けてくる。
「ゲンよくやったな! 」
ノコタップと抱き合う。アトリが嫉妬しないように軽く。
「うむ。儂も一時はどうなるかと思ったぞ。無事で何よりじゃ」
リーダーの生還に皆大喜び。
うう…… 爺さんはなぜか臭い。
これは大地にぶちまけたらしい。
俺も船酔いを克服してなければ同じ道を辿っていただろう。
だから爺さんを責められない。少しづつ距離を取るのがいいだろう。
それでも気持ちは一つ。

チーム・スターフィッシュの完全勝利だ。

「皆本当に良くやったよ。これで少しは成長したんじゃないかな」
「うんうんゲン。少しはリーダーらしくなったな」
ノコタンに褒められると照れくさいなあ。

最後の俺が飛び降り無人飛行となったプライベートジェットは遠くの空で大爆発。
いくらオートでもやはりパイロットがいなければこうなるよな。
危ない危ない。まさか飛び降りて一命を取り止めるとはまさしく九死に一生。

「あれ奴らは? 」
無人島から解放してくれた恩人ではなくもうただのイタズラ野郎に格下げ。
もう敬う必要も感謝もいらない。
「行っちまったよ。早いんだからあいつら」
ノコタンが指す方向には車が一台土煙を上げ遠ざかっていく。
おいおい俺たちを連れて行けよなまったく。
おいてけぼりを喰らったってか?

「そうだアトリ。お前よく助けに来てくれたな」
「はい妖精ですから。飛べるんです」
すっかりロボットだとばかり。飛べるならハイスペックだな。
「もうご主人様! また思ったでしょう? 」
だから思うのは自由じゃないのか? 言ってはダメかもしれないがさ。
本当に窮屈だぜ。

「ああ。アトリを思っていたんだ。ありがとういつも」
「ご主人様また…… 」
赤くなってしまうアトリ。可愛いな。
「アトリ! 」
「ご主人様! 」
こうして二人は愛を確かめ合った?

「フン! 見ておれんわ! 」
爺さんが得意の嫌味攻撃で邪魔をする。
大人げないと言うか爺過ぎると言うか。
爺さんが感動するには年を取り過ぎたらしい。
おえええ!
いい雰囲気を台無しにする不快な音と臭い。
わざとやってないか? 

「ちんたらしてないで行こうぜリーダー。日が暮れる」
ノコタンは元気が有り余ってるようだ。さすがは野生育ちなだけある。
「ねえここってどこなの? 」
船が転覆し無人島から脱出。たった今空から地上に。
改めて思い返せばスリル満点の旅。そろそろ平穏な旅がしたい。
「アトリには皆目見当がつきません。申し訳ありません」
アトリに聞いても分からない。
「さあね。気にしてないから。爺さんにでも聞いたら? 」
ノコタンに聞いても分からない。
「おえええ! 気持ち悪いわ! 」
爺に聞いても分からない。
取り敢えず歩くことにした。


               続く
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