116 / 200
出港!
しおりを挟む
無人島生活何日目か。
あれ…… 俺たち何をやってるんだ?
無人島生活にも馴染み我々は目標を見失っていた。
目標…… 目標って何? 目標ね……
もちろん一つには無人島から脱出すること。
それから忘れてはならないのはアンを探し出し告白すること。
その為にはレアアイテムの愛の言霊が必要。
ただ第三世界のどこかにあると噂されているだけで正確な位置など誰も知らない。
そうそうまだ目標があった。
チーム・スターフィッシュのリーダーとして仲間の手助けをすること。
爺さんだってただ船に乗っていた訳ではないだろう。
ノコタンにしても何か目的があったに違いない。
ただ優先すべきはアンだろうが。
その為にはやはりこの島を脱出するしかない。
「お待たせしました。さっそく海へ参りましょう」
アトリの力作。その名もスターフィッシュ号。
ただのイカダだけどね。
「よし急ぐぞ! 」
「ああ早く行っちまおうぜ! 速力全開! 」
もう間もなく夕暮れ。はっきり言って急ぐ旅だが一日ぐらいどうってことはない。
それなのに爺さんもノコタンもすぐに漕ぎ出そうと急かす。
焦る気持ちも分かるが爺さんはともかくノコタンまでどうしてしまったのだろう?
「いかが致しますかご主人様? 」
「いや待て! もう遅い。夜は暗くて見辛い上に危険が伴う。
明日一番で出港するのが良いだろう」
リーダーとして当然の意見を述べる。
「しかし早ければ早いほど良かろう。違うか? 」
「そうだよ爺さんの言う通り。もう行っちまおうぜ! あーもうイライラする! 」
二人はここでの生活に飽きてしまっている。
だからって一日ぐらい待てないはずない。
特に爺さんがせっかちだからノコタンまで。
「では多数決を採るぞ」
「ああそれ良いね」
「今すぐ行きたい者? 」
そう言って手を挙げる爺さん。ノコタンも手を。
もちろん俺は反対なので黙って見てる。
だがアトリが切り崩されてしまう。
「妖精はどっちじゃ? 急いだ方が良かろう? 」
アトリは決めかねている。
「明日が良いと思う者? 」
手を挙げるもアトリの反応がない。
まだ悩んでるらしい。困ったな。俺と一緒で優柔不断。流されてしまう。
「では今すぐ出港で決定! 」
ノコタンが騒ぐ。
「待ってくれ! リーダーの意見に従ってくれ! 」
だが二人は決してうんとは言わない。
「とにかく多数決の結果今すぐ出港だ! 」
「リーダーの意見! 」
「多数決! 」
意見が割れてしまい重たい空気が漂う。
これはまずいな。二人の意見を尊重するか。
「分かった。二人がどうしてもと言うのなら俺は何も言わない。出発だ! 」
「オウ! 」
こうしてチーム・スターフィッシュは夜の海へと消えていった。
夜とは言え波は穏やか。これなら心配は無用だったかな。
「なあアトリ。結局あの島は無人島だったんだろ? 」
島探索と食糧調達と船作りを並行してやっていた。
もう島の全容は見えたはずだ。
「はい。ご主人様のおっしゃる通り無人島です。
もちろん動植物はいるでしょうが所謂モンスターはいません。
仮にいても害をなすようなモンスターはおりません」
そうか無人島に漂着して一週間以上が経った。
願ってはいないが恐らく我々以外は存在しないのだろう。
とするとここから自力で脱出しない限り助けは来ない。
残酷な現実だがそれでも俺たちは生きて行かなければならない。
それが運命。
朝を迎えようやく島が見えて来た。
昨夜は二人ずつの交代制だったのだがどうもまたアトリの調子が良くない。
最初俺とノコタンで様子を見ていた。
だから仕方なく詳しいと豪語する爺さん一人にすべてを任せた。
「ご主人様。おはようございます」
アトリ復活。
ロボットだから錆びついたか? 水で制御不能にでもなったか?
それとも可愛らしく長いこと水に浸っていたせいで羽根が傷ついて体調を崩したか?
どの道酷使し過ぎたな。
「アトリ無理するな。これは命令だぞ」
「大丈夫ですご主人様。完全回復しましたから」
「しかし…… 錆びついてしまったろ? かわいそうに」
「だからロボットじゃありません! 」
「アトリ…… ごめん」
「私こそご主人様…… 」
「うっとうしいのう! 早く支度せい! 」
爺さんがキレる。
さあ新しい島に着いた。ここが有人島であればいいのだが。
「ノルマンディー上陸じゃ! 」
興奮する爺さん。まったくこれだから爺さんの世話は大変なんだよな。
「ほらほら落ち着けって爺さん! 」
ノコタンが抑える。
「フォフォフォ…… 財宝じゃ! ザックザック! 」
もうダメだ。完全にイカれてる。ただの島なのにある訳ないだろうが。
仮にあっても脱出出来なければ意味がない。
続く
あれ…… 俺たち何をやってるんだ?
無人島生活にも馴染み我々は目標を見失っていた。
目標…… 目標って何? 目標ね……
もちろん一つには無人島から脱出すること。
それから忘れてはならないのはアンを探し出し告白すること。
その為にはレアアイテムの愛の言霊が必要。
ただ第三世界のどこかにあると噂されているだけで正確な位置など誰も知らない。
そうそうまだ目標があった。
チーム・スターフィッシュのリーダーとして仲間の手助けをすること。
爺さんだってただ船に乗っていた訳ではないだろう。
ノコタンにしても何か目的があったに違いない。
ただ優先すべきはアンだろうが。
その為にはやはりこの島を脱出するしかない。
「お待たせしました。さっそく海へ参りましょう」
アトリの力作。その名もスターフィッシュ号。
ただのイカダだけどね。
「よし急ぐぞ! 」
「ああ早く行っちまおうぜ! 速力全開! 」
もう間もなく夕暮れ。はっきり言って急ぐ旅だが一日ぐらいどうってことはない。
それなのに爺さんもノコタンもすぐに漕ぎ出そうと急かす。
焦る気持ちも分かるが爺さんはともかくノコタンまでどうしてしまったのだろう?
「いかが致しますかご主人様? 」
「いや待て! もう遅い。夜は暗くて見辛い上に危険が伴う。
明日一番で出港するのが良いだろう」
リーダーとして当然の意見を述べる。
「しかし早ければ早いほど良かろう。違うか? 」
「そうだよ爺さんの言う通り。もう行っちまおうぜ! あーもうイライラする! 」
二人はここでの生活に飽きてしまっている。
だからって一日ぐらい待てないはずない。
特に爺さんがせっかちだからノコタンまで。
「では多数決を採るぞ」
「ああそれ良いね」
「今すぐ行きたい者? 」
そう言って手を挙げる爺さん。ノコタンも手を。
もちろん俺は反対なので黙って見てる。
だがアトリが切り崩されてしまう。
「妖精はどっちじゃ? 急いだ方が良かろう? 」
アトリは決めかねている。
「明日が良いと思う者? 」
手を挙げるもアトリの反応がない。
まだ悩んでるらしい。困ったな。俺と一緒で優柔不断。流されてしまう。
「では今すぐ出港で決定! 」
ノコタンが騒ぐ。
「待ってくれ! リーダーの意見に従ってくれ! 」
だが二人は決してうんとは言わない。
「とにかく多数決の結果今すぐ出港だ! 」
「リーダーの意見! 」
「多数決! 」
意見が割れてしまい重たい空気が漂う。
これはまずいな。二人の意見を尊重するか。
「分かった。二人がどうしてもと言うのなら俺は何も言わない。出発だ! 」
「オウ! 」
こうしてチーム・スターフィッシュは夜の海へと消えていった。
夜とは言え波は穏やか。これなら心配は無用だったかな。
「なあアトリ。結局あの島は無人島だったんだろ? 」
島探索と食糧調達と船作りを並行してやっていた。
もう島の全容は見えたはずだ。
「はい。ご主人様のおっしゃる通り無人島です。
もちろん動植物はいるでしょうが所謂モンスターはいません。
仮にいても害をなすようなモンスターはおりません」
そうか無人島に漂着して一週間以上が経った。
願ってはいないが恐らく我々以外は存在しないのだろう。
とするとここから自力で脱出しない限り助けは来ない。
残酷な現実だがそれでも俺たちは生きて行かなければならない。
それが運命。
朝を迎えようやく島が見えて来た。
昨夜は二人ずつの交代制だったのだがどうもまたアトリの調子が良くない。
最初俺とノコタンで様子を見ていた。
だから仕方なく詳しいと豪語する爺さん一人にすべてを任せた。
「ご主人様。おはようございます」
アトリ復活。
ロボットだから錆びついたか? 水で制御不能にでもなったか?
それとも可愛らしく長いこと水に浸っていたせいで羽根が傷ついて体調を崩したか?
どの道酷使し過ぎたな。
「アトリ無理するな。これは命令だぞ」
「大丈夫ですご主人様。完全回復しましたから」
「しかし…… 錆びついてしまったろ? かわいそうに」
「だからロボットじゃありません! 」
「アトリ…… ごめん」
「私こそご主人様…… 」
「うっとうしいのう! 早く支度せい! 」
爺さんがキレる。
さあ新しい島に着いた。ここが有人島であればいいのだが。
「ノルマンディー上陸じゃ! 」
興奮する爺さん。まったくこれだから爺さんの世話は大変なんだよな。
「ほらほら落ち着けって爺さん! 」
ノコタンが抑える。
「フォフォフォ…… 財宝じゃ! ザックザック! 」
もうダメだ。完全にイカれてる。ただの島なのにある訳ないだろうが。
仮にあっても脱出出来なければ意味がない。
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる