言葉の暴力で世界最強! 消えたヒロインを追い求めて世界へ! 幼馴染に告白するつもりがなぜかモンスターに愛の告白を

二廻歩

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船酔い

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逃走中イン第三世界港町。
追いすがるハンターを振り切って船を目指せ。

「待て! ふざけるな! 」
「金払え! ボケ! 」
「見つけたぞ! こっちだ! 皆集まれ! 」
下品な言葉が飛び交う。うん実に騒々しい。
被害者の会は全員集合を果たす。
だがその気の緩みが逃走者を逃す結果に。

ハアハア
ハアハア
冗談じゃない。なぜ俺が逃げ回るような目に遭わねばならない。
「もうすぐだ。行こうアトリ! 」
「ご主人様! 」

汽笛が鳴る。出発の時刻。
「乗りまーす! 」
「だったらほら早くして! チケットは? 」
二人分のチケットを渡す。これで文句ないだろう?
「はい。ではお通り下さい! 」
これでようやく逃げ切れるか?
しつこかったからなあいつら。
もちろんお金を払わないのが悪いと思うけどね。
でも俺は知らなかった訳で…… 今さら払うにしてもお金はない。
仕方がないんだ。仕方が。不可抗力さ。

「おい待て! その船ストップ! 」
まずい。見つかっては一大事。
奥に行く。そして人混みに紛れる。
これで大丈夫。もう安心だ。
ところでこれって主人公って言えるのかな?
ただの悪党なのではないかと心配になってくる。
どうしても罪悪感がある。

出入り口付近ではまだ揉めている。
「だから犯罪者が! あいつは詐欺師で…… 聞いてくれよ! 」
とんでもない言いがかりをつける追跡者。しかも一人や二人じゃない。
ドンテの店員もいるしドラストキヨシのお姉さんもいる。
バーのママの声も。バーと言ってもドリンクバーだけどね。
あれ図々しいな。フリーマーケットのおばちゃんまで。
うん? なぜマリンスポーツ関係までいるんだ?
まだ二十四金の効力は切れてないはずだが。
からくりに気づかれたか? 
とは言えもう安心。俺たちはチケットがある。
それに対して奴らは持っていない。
この違いが分かるか? ははは……

「申し訳ありませんが出港の時刻です。チケットはお持ちではないですね? 」
「ああ、俺たちは奴を追いかけて来たんだからよ! 」
「でしたらお引き取り下さい。出港の時刻です」
当然のことながら締め切られた。
「それでは出発です! 」
船は夜の海へ消えて行った。

船が動き追跡者が姿を消したのを確認してからこちらも動く。
「お主ら悪者であったか」
昨日のお爺さんが近寄って来た。
そう言えば同じ船に乗るようなことを言ってたような。
「誤解しないでください。これは単なる行き違いですよ」
「しかし支払ってないのだろう? 」
「ですから行き違いがあっただけで俺たちは悪くない。
何とか悪い印象をごまかす。

「儂は五味屋敷バズと申す。バグ爺で通っている。以後よろしく」
「はあ…… ハーフか何かで? 」
「まあな。その辺のことは後で話したくなったらな」
「申し遅れました。俺は…… 誰だっけ? 」
ズッコケる爺さん。まあ当然か。最近物忘れが激しくて。
ただこの場合名前を忘れるのは爺さんの方だろうが。
そうは行かない。俺は一歩先に行くのさ。

「ご主人様は救世主様でございます」
「救世主だって」
「もちろん違うであろう? ふざけるでない! 」
えらい剣幕に圧倒される。さすがは爺さん。威厳がある。

「失礼しました。俺は言右衛門。ゲンって呼んでくれると嬉しいな」
「それで言右衛門よ。そちらの物体は何じゃ? 」
ゲンって言わない。困った人だな。
「はい最新型のロボットでございます」
「ちょっとご主人様! 妖精。妖精でしょう? 」
「そうだった。自称同い年の妖精さん」
「アトリです。可愛いからって襲わないでくださいね」
「ほっほほほ…… 面白いのう。では…… 」
そう言って格好つけるが無理が祟る。

おえええ!
爺が産気づいた。
船内放送を流してもらうことに。
『この中にお医者様はいませんか? 』 
すぐに船医が駆けつける。
「ほらこれを飲んで! 」
酔い止めをもらい落ち着いた様子のお爺さん。
「ありがとうございます。どうですかじっちゃんは? 」
「はいあなたのお爺様は苦しんでるようですがもう問題ありません。
ただの吐き気ですのでご心配なさらずに」
とりあえずトラブル臭のする爺を俺たちの部屋へ連れて行くことにした。

               続く
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