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アンを知る者

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変態人間の協力を得てどうにかダンジョンを脱出。
どれだけ時間が経過したのか辺りはもう真っ暗。
ダンジョンを抜けるとすぐに一軒の家が。
見回しても他に家も建物も見当たらない。
ぽつんと一軒家。
おそらくここが話にあった家。
アンたち流浪の民がお世話になっているのであろう。

さあようやくたどり着いたぞ。
緊張するな。
ノックすると女性の声が。
期待に胸を膨らますがそう甘くはない。
「どちら様? 」
ドアが開く。
もう夕暮れだから今日は勘弁してよと不機嫌な家主は取り合わない。
せっかくここまで来たのに門前払いされてしまう。
そもそもまだ寝場所を確保してないんだぞ。まさかダンジョンで一夜を明かせと?
冗談じゃない。何とか話だけでもと無理矢理頼み込む。

「早くしてよね。こっちは晩飯の支度に忙しいんだからさ」
相手にする気はなさそうだ。
勧誘か何かだと思ってる様子。
「実は…… ある女性を探してるんです」
最初が肝心なので丁寧に笑顔で。
「どうしたんだい? 気持ち悪い顔してさ」
くそ…… 偏屈な人だ。まあこんな山奥ではまともな人はいないだろうさ。
それでも笑顔で続ける。
「人を探しておりまして。アンをご存じありませんか? 」
「いきなり何だい? 人に頼むんなら礼儀を弁えなきゃね」
用件を言えば文句ばかり。本当にこの人信用できるの?

「お願い! 」
アプリンが間に入る。
「まあいいや。アン…… アンって言えば確か家に同じ名前の子が居たね」
ついに手掛かりを掴む。ようやくアンを知る者に出会えた。
「ちょっと待って下さい。今居たねと言いましたが現在は? 」
エクセルが話に割り込む。
「ああ妖精さんかい。初めて見るよ。珍しい。もう絶滅したって聞いたけどね。
あれは噂に過ぎなかったのかい? 気をつけな。嫉妬だけはするんじゃないよ」
女性は誰に対しても失礼な態度を取り続ける。助言のつもりか?
余計な一言で傷つけている。自覚がないのが厄介なところ。
これはもう言葉の暴力。警告ものだろう。
妖精について詳しいのだろうが肝心のそのエクセルが下を向く。
あれ様子が変だ? 嫉妬深いって言われたのが堪えたのかな。
エクセルは常に嫉妬深い。アプリンが入ってからは特に。
それを見抜くこの女性の眼力は相当なもの。

「なあ婆さん。アンを見なかったか? ついでに流浪の民もよ」
ハックは堪えきれずに失礼な態度で迫る。
「誰が婆だって? まったく仕方ないねこの子たちは。
年配者の言うことは何でも聞くもんだよ」
いきなり説教を始める女性。
「うわ止めてくれ! 婆とは言ってない」
ハックが拒否反応を示す。
それもそのはずハックも俺もさっきまで正座させられていた。
その嫌な記憶が蘇る。どうしても反応する。

「まあいいや。どうせあんたら泊まるところがないんだろ? 」
好意で泊めてもらうことに。
確かにまだ宿を確保していなかった。ちょっと図々しいかな。
「それでアンがどうしたって? 」
お茶が供される。
「こちらにいると伺ったものですから」
アプリンに任せる。
またはぐらかされては困るので慎重に。
「ああアンね。あの働き者の彼女。あんたたちのお友だち? 」
「ちょっと違う。俺の幼馴染で婚約者だ! 」
「はーん。追いかけてきたって訳ね。それはすごい」
ようやくこれでアンに会える。
「ふざけてないで早く会わせてくれよ! 」
つい捲し立てるが気にしてない様子。

「夕飯食べて行く? 寝床は離れで良いだろ? 」
「いいから早くアンを! 」
「慌てない。これから言うことをよく聞くんだ」
引き延ばすつもりはないのだろうがまどろっこしい。
教える気あるのか?

「アンは仲間と共に旅立ったよ。それも朝早く。すれ違わなかったのかい? 」
とんでもないおばさんに会ってしまった。
時間稼ぎのつもりか?
「おかしいね。本当に見なかったのかい? だって今日旅立ったんだよ。
洞窟以外に道がない。ならばどこかで会ってて不思議はない」
「そう言えば入り口付近に集団がいたような…… 」
「もしかしてそれじゃないゲンちゃん? 」
「お邪魔しました! 」
「待ちな! もう夜だよ。夜は物騒。今夜一晩は泊まった方がいい」
懸命な判断。迷う余地はない。

お言葉に甘え一泊することに。

                続く
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