上 下
81 / 200

お説教で真人間に

しおりを挟む
闇夜に待ち伏せる変態人間。
モンスターと人間のハーフだと言うが……
たとえ人間だったとしてそれはそれで気持ち悪く嫌なものだ。

「それではこれで」
「待ちなさい変態! 勝手に触って良いと思ってるの? 」
「いえ変態人間ですから。お間違いのないように」
変態人間は紳士に振る舞っている。
それもそのはず彼らの強みの暗闇が消え光に照らされれば抵抗する力はない。
「どっちだっていいからそこに座りなさい! 」
エクセルによる長い説教が始まった。

なぜか変態人間の隣にはハックが正座させられている。
「俺悪くないんだけどな…… 」
「ははは…… ハックは馬鹿だな。邪な心を見抜かれたか? 」
「いやだから俺は悪くないって! 」
「お静かにハックさん。ゲンさんもお座りなさい」
とばっちりを受ける。完全なとばっちりだよ。俺が何をした?
なぜ俺までこんなところで正座しなければいけないんだ?
あまりにも理不尽な扱い。
大体俺は主役だからいいところ取りするのが当然で……

ブツブツ
ブツブツ
「ほら文句言ってないでしっかり正座する」
容赦ないエクセル。
「どう? 反省した? 」
「けけけ…… 反省って何だよ? 馬鹿じゃねえか? 」
口も態度も悪い変態人間。
更生の道は閉ざされた?

「あんたが反省して真人間にならないと二人もこのままよ。連帯責任だからね! 」
だがもちろん反省の言葉を述べない。
このままでは俺たちもずっと正座させられることに。
一時間? 一日? 一週間? 想像するだけで涙が出てくる。
そろそろ足の感覚がないんですけど……

うおおお!
ハックが限界。喚き始めた。
それだけ過酷なお仕置きだということ。
「もうこれくらいでいいんじゃない? 」
お助けの女神アプリンが口を挟む。
「駄目よ! 甘やかすとロクなことにならないんだから! 」
エクセルは退かない。
アプリンも睨みつける。
「あんたやる気? 」
「ゲンちゃんは関係ないじゃない! 」
「それはハックも同じよ! 」
「分かってるなら解放してあげなさいよ! 」
ついに女同士の戦いが勃発。
まさか俺の為に戦うとはこれ以上見てられない。

「うわああ! 痛い! 」
足が痺れて立ち上がれない。
何て拷問をしやがるんだ。
だがハックはもっと症状が深刻。
変態人間も下を向いてしまった。
「ふう…… どうやら限界みたいね。どう反省した? 」
変態人間は首を縦に振る。
「だったらこのダンジョンからの脱出方法を教えなさい! 」
そうかこれがエクセルの狙いだったのか。
とんでもない妖精さんだ。俺たちは巻き込まれた形。
反省損のお仕置きされ損。
「それは…… 言えないんだ」
反省したかと思ったらそうでもなかった。
「続行する気? ふふふ…… 別にいいのよ楽しみましょうか」
明らかにおかしいエクセル。どうしてしまったのだろう?
「冗談です。お教えします! 」
ついに変態人間は折れる。とは言え真人間になったかは不明。

「それで? 」
「よく雑魚キャラが落としていくようなカードを十枚集め一か所に置く。
そうすると言葉の暴力により壁に穴があく。今ここは行き止まりだろ?
この向こうは出口だ。だからここに置けば一気に出口へ」
痛みに耐えかね嘘など吐く余裕はないらしい。
「ちょっとそれ本当? 」
エクセルは訝しむ。あまりに素直だから疑ってる様子。
俺だって信じられないが拷問を受ければ誰だってこうなるさ。
たとえまともな人間でなかったとしても。
俺たちは拷問から解放されて転がってる状態。
もう少し休息が欲しいな。
「ああ本当だ。でも気をつけろレアカードが一枚でもあると無効になる。
レアカードはそれだけで役に立つから相性が悪いのさ」
「ありがとう。真人間になったみたいで嬉しいわ」
変態人間から真人間への道のりはそれは険しいものだった。
正座はそれほど人を変えてしまうもの。

「へへへ…… 感謝の気持ちにキスぐらい? 」
駄目だちっとも懲りてない。
エクセルの好意を踏みにじる暴挙。
「消えな! 」
エクセルの怒りは頂点に。
そそくさと逃げて行く元変態人間。
これでいい。これで。

「ほら出しなさいよゲン! 」
やっぱりダメだ。
最悪の雰囲気にしやがってあの変態! 俺たちが被害を被るじゃないか。
こうしてカード十枚を消費。
言葉の暴力で壁に穴が空く。

「おい! 出口だ! 光が見える! 」
エクセルはまだ機嫌が悪くアプリンもそんな気分じゃないのでハックと抱き合う。
ダンジョンを抜けると目の前には一軒の家が。

                  続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...