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ウサギ耳の少女

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第二世界はとにかく暑い。
おかしい…… この世界も第一世界同様徹底的に温度管理されているはずなのに。
なぜか暑い。第一世界では冬だったのか体が凍えていた。
しかし時間が過ぎるとその凍えも収まり寒さを感じなくなっていた。
それは果たして良いことなのかは疑問の余地がある。
とは言え俺たちは世界に受け入れられたことになる。

では第二世界ではどうかと言うとそうではない。
俺たちは正規のルートで入国せず船を使い密入国した。
だから決して歓迎されることも受け入れられることもない。
その結果ムシムシした真夏の暑さにさらされることになる。
これも脱獄、いや警告五枚喰らったことが原因。
元を辿ればヤジを飛ばした言の葉村の奴らが悪い。

暑い! 暑すぎる! なぜか異常に暑い。これもすべてモンスターによるもの。
この暑さはモンスターが引き起こしてるに違いない。
高い体温で全体を温めてしまう。ただいるだけで迷惑な存在。

モンスターと人間の区別をつけることは難しくないとエクセルは言う。
エクセルによればモンスターの方が体温が高い。
人間が大体四十度ならモンスターは五十度あるそうだ。
人間だって進化してるからその内五十度に達するかもしれないが今は十度は違う。
触れれば耐えられないほど。だからエクセルは簡単に見分けがつくと言う。
だがそれは一度戦ってから分かること。あまりにも無意味。
俺がカードを使えば一発でモンスターは消滅。人間なら言葉の暴力で警告。
少々暴力的ではあるがこれ以上簡単な見分け方はない。

「すみません。あなた方も異人ですよね」
突然見知らぬ女性から話し掛けられる。
見た目や雰囲気からか妖精が案内してるからかただの勘なのか。
「俺ハックね。こっちはお供の者」
調子のいい男ハックが勝手に話を進める。
この世界の者ではないからと言って仲間、同じ異人仲間とは限らない。
女性の方から近づくのもいかにも不自然だ。何か裏があるのでは?

「あなたは誰? なぜここに? 」
警戒するエクセル。
身長は俺よりも高くすらっとしている。
ロングスカートからちらりと見える足が妙に色っぽい。
まるで何かを隠してるかのようにきっちりした身なり。旅の者だろうか?
「その耳は何? 」
エクセルが質問攻めにする。ただ警戒するのではなくライバル心を燃やして。
彼女はきれいなお姉さんって感じ。どこかのお嬢様かな。耳が個性的。
俺にはこれが何なのか予想がつく。
「これはお土産で可愛かったから…… ウサギの耳。可愛いでしょう? 」
いきなり言い訳を始めるお姉さん。
「ウサギの耳ってまさか? 」
どこかで…… そう俺が売り払ったレアアイテム。ウサギの耳だ。
これがあれば俺でも可愛いバニーガールになれる反則級の超優れもの。
だとすればこの女は…… いやこれ以上は追及できないか。

「どうしたんだよゲン? 」
「だからさあ……」
ハックに小声で伝える。
「どうしました皆さん? 」
不審に思われてると悟られたか?
「そこで大人しくしてろ! 」
ハックは暴走を始める。
「待って二人とも。その人は…… 」
エクセルが止めるもハックは振り切ってしまう。
思い込みとは激しいもので止めようがない。
女の正体を暴こうとロングスカートに手を入れる。
何て大胆な奴なんだハックは。
「ほら大人しくしろ! 俺がお前の正体を暴いてやる! 」
太ももに手が触れる。
「きゃああ! 何するのよ! 」
悲鳴を上げハックの頬を目がけ往復ビンタ。

ハックも黙ってない。強引に服を脱がせようとする。
「待てハック! それ以上は止めろ! 」
ハックは興奮して冷静な判断ができない。
仕方なくハックと女性との間に入る。
「やっぱり…… 」
エクセルが大げさに驚いて頭を抱える。
「その人は怪しい者ではない。ただの可愛らしい女性よ。
見た目通りのきれいなお嬢さん」
「嘘を吐け! ただの男だろこいつ? モンスターかもしれない」
ハックがまだ疑いの目で見る。
俺はただ見守るしかなかった。
俺が余計なことをハックに吹き込まなければこんなことにはならなかった。

「もうどうやって勘違いするんです? これはお洒落耳」
当たり前だが女性だってこのウサギ耳を使えば多少変化する。
肌が真っ白でモチモチに。身長も伸び髪だってサラサラ。
上品な服装に出立も変化する。
「ごめんなさい。ほらあなたたちも謝りなさい」
エクセルが怒るので仕方なく二人で謝罪。
「納得できない! この女はかなり怪しいぞ」
ハックはきれいなお姉さんを受け入れようとしない。もう頑固なんだから。
これではいつまで経っても自己紹介出来ないよ。
ハックには大人しくしててもらう。

「ほらゲン」
交渉役はエクセルでいいのになぜか俺が代表することに。

                続く
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