言葉の暴力で世界最強! 消えたヒロインを追い求めて世界へ! 幼馴染に告白するつもりがなぜかモンスターに愛の告白を

二廻歩

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囚人生活一日目

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アンへの告白も失敗し当然暴言カードも手元にない状態。
没収される前にハックに預けたが大丈夫だったかな?
後はどうにかしてここを抜け出す方法を考えるしかないが何も思いつかない。

「これ以上盾突くならこちらにも考えがある。そこのところよく考えるんだな」
看守は常に冷静だ。挑発にも乗ってこない。
お馴染のセリフを吐く。ここで何万回繰り返したことか。
「そんな脅しに屈するかよ! 早く俺をここから出しやがれ! 」
「ははは! 威勢がいいな。だがお前は生きてここから出れるかな? 」
「俺が何をした? 確かに警告はもらったがそれがどうしたと言うんだ? 」
どうにかして誤解を解こうとするが相手にしてくれない。
このままではアンに告白する前に朽ち果てちまう。

「止めておけ! 冷静になるんだ新入り」
同房の男に諭される。毛むくじゃらの大男。
恐らく強盗でもしたのだろう。目つきが鋭い。とても同じ人間とは思えない。
これはもう従うしかない。
「ははは…… イキがるのも最初だけ。お前も身に染みるはずだ」
そう言うと看守は薄ら笑いを浮かべ行ってしまった。

俺一人の相手してられない。暇になったら好きなだけ相手してやると。
「おい! ふざけるな! おい! 」
いくら叫んでも戻っては来なかった。
「止めておけって。逆らっても酷い目に遭うだけだぞ」
先輩囚人に説得される始末。

「あんた一体何なんだよ? 」
「俺はアルトって者だ。よろしくな」
どんな時でも自己紹介は大切。相手に自分を理解してもらう必要がある。
「俺は源右衛門。ゲンって呼んでくれ。ここを出て行くつもりだからよろしく」
気に喰わないが俺も名乗る。
「お前女の尻を追いかけて来たんだろ? ははは…… 情けない奴だな」
「そんな言い方はないよ。俺は命がけでアンを助けに来たんだから」
「はっはは! 冗談だ。冗談。だがなあの看守の言うことも事実だ。
問題を起こせば別の刑務所に移送される。
そこはモンスターが看守をする。それがどう言う意味か分かるか?
人間ではなくただのゴミ扱いだ。そこだけは肝に銘じるんだな。
今の看守は確かに人間性に問題がある。でもそれでも人間だ。
モンスターは奴ほど優しくも甘くもないぞ。脱獄のチャンスは一切ない。
悪いが俺はあんなところ行きたくねえ。お前だって行きたくないだろ? 」
アルトの話は本当っぽく聞こえる。
脅かす意味はないが俺をからかうつもりなのかもしれないな。

「それであんたは何者? 」
舐められたくないので素っ気なく。
「俺は破壊の神さ」
表情一つ変えずに語る。
駄目だイカレテやがる。何が破壊の神だよ。
「そうするとあんたも言葉の暴力で捕まったクチ? 」
「馬鹿! 聞いてなかったのか? 破壊の神だからここに繋がれてるんだ」
やはりおかしな人だ。どこかで頭を打ったかこの囚人生活で狂ったか?
たぶん後者だろうな。これが俺の近い未来? うわ…… 絶望的だ。

「それであんたはここにはどれくらい? まさかずっとじゃないよな? 」
「この世界が乗っ取られてすぐだ。俺が居たら何かと邪魔だからな」
「ははは…… 随分大げさな」
「本当だ。邪魔者は閉じ込めるに限る」
まだそんな嘘を吐く。
「それでアルトさん。どうすればこの世界を破壊出来るんですか? 」
まったく信じてない。ただの戯言と受け取ってる。でも聞いてあげるのが優しさ。
「俺たち破戒の三神が揃えばすぐにでもこの世界を破壊し元の世界に戻る。
だが恐らくそれは今じゃない。お前にそんな力はない。もっと別の誰か」
随分と下に見られたものだ。俺は勇者だぞ。

「いいかよく聞け…… 」
男の話をまとめるとこうだ。
俺にはまったく期待してないがこの話を伝えることが使命らしい。
いつかその日が来たら伝えておくようにとのこと。
どうせただの妄想だから適当に返事する。
こうして破壊神との奇妙な同居生活が始まった。

「ほら好き嫌いはするな! 口答えもするな! 」
まったくいくら先輩囚人だとしてもこの態度はない。
朝は掃除、昼間はモノづくり、夕方は写経。夜は読書。
そんな生活が一ヶ月続いたある日の晩、新入りがやって来た。

大人しい奴でロクに顔を見てないが恐らく異人。
言葉の暴力を繰り返した挙句、警告を受け五枚目に達した間抜けだろう。
「どうも」
顔がよく見えないので適当に挨拶を交わす。
あれ…… どこかで見たような気が…… 気のせいかな。
 
夜になり辺りが急に騒がしくなりだした。

                     続く
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