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某所

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店主お薦めのモンスター尽くしを注文。
モンスターの腸。
一品目からグロテスクなものを。
紫色の血が垂れている。
一気に食欲を失くさせるようなことをしてくれるぜ。

「美味いシンよ」
不気味な笑顔で迫る。
「いや…… これは焼けてないのでは? 」
あまり聞きたくもないし出来るなら指摘もしたくない。
「美味しいだしんよ! 」
店主お薦めの一品らしい。

美味しい訳ねえだろうが。
喉元まで出かかっている言葉を呑み込んだ。
これ以上言葉の暴力を振るいたくない。
まだ仮に警告に余裕があったとしてもだ。

「結構だシンよ」
まずい…… つい口調がうつってしまう。
「これ食べてくれないと怒るシンよ! 」
だめだこれ以上は機嫌を損ねてしまう。
「申し訳ないが焼けてないと食べれないんだ。きちんと火を通してくれ」
たとえ焼けたとしても食えるか!
まずい爆発しそうだ。

「では続いてモンスターエッグだシン」
モンスターに卵を添えただけのシンプルなもの。
しっかり焦げているので食えるだろうと迫る。
おいおい! それはただの強要。俺は一応はお客なんだぜ。
「どうしたシンよ? 」
だからその不気味な顔を急に近づけるな。怖いんだよ。
うわ…… 口が臭い。どうにかしてくれよ。
これはもう一口食べるしかないな。

卵を食べる。
うん問題ない。普通のエッグだ。
それではこちらの焦げたモンスターを一口。
ピカピカのナイフとフォークでも切り刻むのに苦労する。
そろそろこれくらいで勘弁してよね。

「うまいシンか? 」
「あーあれは何だ! 」
店主の後方を指す。
男が後ろを向いてる瞬間に肉を切り床下へ。

「ごめん見間違えだったみたい。それにしてもこれは美味しいね」
もう限界だ。モンスター尽くしなど頼まなければよかった。
今非常に後悔してる。
これなら大嫌いなゲテモノ丼を食った方がマシだった。
そうどこの川で取れたか分からない巨大魚で作ったクレイジーな一品。
秘境に住む部族の伝統料理だそうだが臭いも味もきつい。
だからもう食べないと決めたトラウマ級の料理。
それでもまだ魚だと言う事実がある。

モンスター尽くしはそれがない。
まったくの別物。味も臭いもまったく違うし食えたものではない。
食べたら天国へ旅立ってしまう。そうなればゲームオーバー。
アンに告白出来なくなってしまう。それだけは何としても阻止せねば。

「ごちそうさま。もう充分です」
下げてもらうように頼む。
贅沢でもったいなかったかな? でもお口に合わない料理もある。
無理して気持ち悪くなるよりはいいだろう。いやすでに気持ち悪いが。

「食べるシンよ! 」
興奮した男は無理矢理迫る。
「いや…… だからもう充分なんだよ」
やはりこの手は通用しなかったか。
「喰い残し禁止シン! 」
「だから…… 」
男は脂肪だらけの締まりのない腹と毛深い太い手で抑え込む。
俺は一応客だが…… 手加減はしてくれなさそうだ。
「天罰だシンよ! 」
そう言って絞めあげる。
すぐに目の前が暗くなる。
これはまずい。ゲームオーバーか?

某所。
目を覚ますと見知らぬ場所に来ていた。
お店の中ではない。
俺は捕まってしまったのか?
これで支払いはしなくて済みそうだ。

「お前は俺が食ってやるシンよ! 」
いきなり猛獣へと変化した。
嘘…… 冗談でしょう? 急展開過ぎる。
「止めろ! 」
どうやら縛られてはいないようだ。
急いで脱出しなければ。

「天罰だシンよ! 」
「うわ! 止めろ! 俺が何をした!
ぶっ飛ばすぞ! いいからそこを退けこの化け物! 」
つい悪口を言ってしまう。
「もう勘弁ならんシンよ! 」
怒り狂うモンスターのような男。

なぜ俺はこんな目に遭ってるのだろう?
アンが懐かしい。今どこにいるんだ?
ああ村の皆。元気だったかい。
まるで走馬灯のように駆け巡る思い出。
もう残された時間はなさそうだ。
まさかモンスターにやられずにモンスター料理専門店の親父に殺されるとは。
これでは勇者失格。
モンスターではないから言葉の暴力にも屈しない。タフな男。

うおおお!
男は何のためらいもなく突っ込んでくる。
もはや逃げようもない。
ここは潔くやられるしかない。

「アーメン」
ついにすべてを天に任せることにした。


                  続く
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