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アンの行方

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ベルがアンと手紙のやり取りをしてるそう。
彼女が毎回兄やハックに手紙を見せるのでハックは詳しい。
「俺も手紙を何度か読んでるからな」
隊が別れたのは約三か月前。
多すぎると食糧も寝床も確保しづらいのだとか。
だからこれも運命だとハックは言う。

アンのグループは社交的で村人に頼み込んで住まわせてもらっている。
だから必要最低限の人数しか連れて行けない。
特にトラブルを起こしそうなタイプのハックは問題外。
ハックたちも同じだが人の住むまなくなった空き家が中心。勝手に使ってるそう。

「まだかよ? 」
生意気な態度のハック。
同年代か年下の子供が中心のグループ。
そこに大人が数名。お年寄りもいる。
だからなのかやたら態度のでかいハック。
「さあね。いつ戻るやら…… おっと噂をすれば帰って来たみたいだよ」
ブーリンとベルの兄妹が姿を見せる。
随分大きい。ガッチリした体つきの方が兄のブーリン。
その陰に隠れて大人しいのが妹のベル。

「ただいま戻ったよ…… おいおい! 何でハックがいるんだよ? 」
親友の帰還に驚きを隠せない。
「ほら二人ともこっちにおいで」
おばさんが話を通してくれた。
「ああ、あいつらか。俺には関係ないね」
まだ根に持ってるらしいブーリン。一体何があったんだ?
本人もハックも些細なことだと言うがどうもこの二人は当てにならない。
まあ今はそんなことよりもアンの行方だ。
一日でも早くアンを見つけ出さなければ。

「ベルは何か知ってるんだろ? 」
ベルは人見知りなのかさっきから兄の陰に隠れている。
俺が挨拶をしても視線を合わせてくれない。
別にいいんだけどさ。俺がまるで嫌われてるみたいじゃないか。
俺なんかよりも睨みつける妖精に恐怖してるはずなのに俺が代表で恐れられる。
なぜそうなる? 気分が悪いよ。

「うん…… アンとは手紙のやり取りをしてるよ。一昨日も手紙が来た」
十日に一度の割合で手紙のやり取りをしてるそう。
しかしどうやって? 
ハックが言うにはこの辺りにもポストがありまだ機能してるのだとか。
恐らくアンのところにも近くにポストがあるか誰かに頼んで出してもらってるか。

「それを見せて! 」
エクセルが手紙を奪い取る。
さあこれでアンの居場所が知れるぞ。
ドキドキしてきたな。

~親愛なるベルへ~

この字は間違いない。アンだ。懐かしい。
「どう本物? 芋っ子? 」
「ちょっと失礼なこと言わないでよあんた! アンは私の大切なお友だち」
エクセルに突っかかる大人しいはずのベル。
「ああこの個性的な字はアンだ。俺のアンだ! 」
「だからあんたじゃない。私のアンでしょう? 」
ベルは対抗心むき出し。
兄が宥めるが言うことを聞かない。
もう恐れることもなくなったベル。でも俺を馬鹿にしてないか?

「この下手くそな字に見覚えがあるのね? 」
エクセルの追及を受ける。
「ああ癖のある方だからね。でも失礼だよ妖精さん」
どうにかしてアンの名誉を守る。
これではイメージダウンは避けられない。
美しい踊り子像が薄れてしまう。
アンは幼い時より踊りの練習を欠かさなかった。
だから伝統文化の舞も踊りもそつなくこなす自慢の幼馴染。

手紙にはまだ第一世界に留まってると書かれていた。
これは上手く行けばすぐにでも告白出来るかもしれない。
そしてついでに村人を連れ戻せるかもしれない。
ミッションコンプリートの予感。

「ふう興奮してきたぜ。アン待ってろよ! 今助けに行くからな! 」
「だから囚われの身ではなく自由意思で旅を続けてるだけ。あなたを忘れてね」
強烈な一言を忘れずに添える。俺の精神を破壊しようとするつもりか?
「おいおい! どこにいるか詳細はないのかよ」
ハックも興味を示す。
「残念だが詳しくは書かれてない」
ブーリンが手紙を取り上げ妹に戻す。
「しょうがねえな。探すしかないか」
ハックは一見いい加減でやる気がないようだがこれでも闘志を燃やしてるらしい。

「それでどれくらい滞在するの? 」
エクセルは移動を恐れている。
俺も早く告白したい。
出来れば他所に行かれる前に探し出したい。
これは急がなくてはならないな。

                続く
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