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囚われ人

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呑気にモンスターミートの話をしてる時ではないのは分かっている。
でももう少しだけでも耳を傾けるのも悪くないだろう。
「奴らは何でハニードロップが必要なんだ? 」
「おそらく光沢をつけるため。神々しい感じになるんだと思う。
実物を見たからよく分かる。ついでに匂い付けにもなる。
はちみつの甘みを加えることで食欲も増すって訳」
これが要するに偽モンスターミート。偽造肉って奴らしい。
危険性が叫ばれるようになって取り締まりが強化されている偽造肉。
だがそんなことは金の魔力に取りつかれた者には通用しない。
危険な砂漠地帯の一角が偽装モンスターミート密造工場と化す。

モンスターは俺の持ってる暴言カードで一発。
だがそれを所持してない輩はどう頑張ってもモンスターを倒せない。
もちろん俺だって消滅させるだけだから実際そんな悪事に手を染められない。
可能性は低いが何らかの偶然で瀕死のモンスターが転がっている場合も。
しかしそれならその辺の金塊や宝探しをした方がまだ効率的。

「どうする? 」
「突入すれば捕まるだけよ」
「だが暴言カードの力を使えば簡単に」
「待って! 聞いてなかったの? 相手は人間よ。その力は人間には通用しない。
モンスターしか倒せない。使えば逆に警告を受けることに」
暴言カードは異国の地からやって来た者をモンスターから守る為に作られたもの。
モンスターとの共存には欠かせない。モンスターに人間は無力。
人間相手では暴言カードは無効化されてしまう。そして警告を受けることに。
それがこの世界の決まりごと。
「寝るまで待ちましょう」
テントから離れチャンスを窺う。

うん誰かいるぞ? 
敵か味方か?
おーい! おーい!
やはり誰かいる。そして助けを求めている。
ただ俺たちには関係のないこと。助ける義理もない。だから放っておくに限る。
悪いが相手してる暇はない。ここは非情に徹する。
どれだけ呼びかけようとも聞こえない振り。

「おーい聞こえてるんだろお前? ふざけやがって! 助けてくれよ」
言葉の悪い厄介な者が懇願する。
「静かにしろ! 気づかれる! 」
どうせやることもなく暇だし助けるかな。面倒だけど。
「どうしたのあなた? 」
男は磔されており両手両足を縛られている上に口まで塞がれ絶体絶命の状況。
俺たちに気づいた彼は自分でどうにかずらしたらしい。
物凄い根性と精神力。見習うべきだな。
ここで息が詰まったら終わり。よくやるよ。

どうにか生き長らえている。
捕まったと言うより裏切ったか何かで処刑されるのではとエクセル。
やはりこのまま放っておく訳にいかない。

「おい! おーい! おーい! 」
必死に呼びかける哀れな男。
気づかれないように細心の注意を払う。
大丈夫。恐らく仲間はテントの中にいる。
逃げる出すことは一切頭になく見張りをつけてない。
縄を振りほどき拘束を解く。
これでもう自由の身だ。

「ありがとうございます! ありがとうございます! 」
逃げ切るまで行動を共にすることに。
「急いでこっち! 」
テントで寛いでる奴らが気づかないかハラハラするばかり。
「どうするエクセル? 」
妖精さんに任せる。少々情けないが暴走するよりはいいだろう。
俺では間違った選択をするかもしれない。
「物理的に追いつけないようにダッシュ! 」
エクセルの提案は単純ではあるがその分理解しやすい。
おバカさんには持って来い。でも俺はバカではないが。

ハアハア
ハアハア
砂漠を抜ける。ここまで来ればもう安心だろう。
あれから一時間は経った。
妖精の帰巣能力と地図のお陰。それに新入りのアドバイスにも助けられた。

「俺ハック。よろしくな」
勝手に自己紹介を始めるお茶目なハック。
果たして恩人として俺たちを、特に俺を敬うだろうか?
「ハック。私は妖精のエクセル。こちらは異人の言右衛門」
「助けたお礼がしたい」
意外にも律儀な奴だ。
「とにかく一旦戻りましょう」
エクセルの後についてどうにか宿屋まで戻って来た。
これでもう危険はないだろう。

今夜は団体客も少なく洋室が一部屋開いていた。
ハニードロップも失った今俺たちを狙う者などいないだろう。
これでエクセルも心置きなく泊まれるはずだ。
風呂を済ませ一息つく。
「ふう疲れたな! 」
勝手にベットを占領する新入り。
まだ正式に仲間にしてやるとは言ってないんだけどな。

図々しいハックと一夜を共にする。

                  続く
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