上 下
29 / 200

復活のゲン

しおりを挟む
エクセルの強気の交渉術に根負けした男たちから例のハニードロップをゲット。
見た目は普通のはちみつ入りの飴。
まろやかでほっぺが落ちるほどの美味だとか。
一口味見してみたいが取引の道具。
それに一個でもいくらするやら。これでは怖くて口に入れられない。
そう言う意味では毒に近いかな。
口に入れれば最後。吐きだすことも不可能。
その価値を失ってしまうのだ。
汚い話だが飴玉のように舐めて包んで取っておく芸当は出来ない。
俺はもう大人だからそんな真似はしないが……

「もういいだろ? 邪魔だから早く消えろ! 」
随分な言われようで頭に来る。でもエクセルは冷静だ。
「ありがとう。もらって行くわね」
お礼を言いトラブルを回避する。
さすがは俺の一番弟子……  などと言えばぶっ飛ばされかねないが。
目的の品は手に入れた。もうこんな山に興味はない。
下山することに。

奴らは密かにハニードロップを作っていた。
村人には知らせずにハニードロップを独占していたのだ。
これは由々しき問題。
果たしてこのまま見逃すのか?
いや…… 奴らの悪だくみを放置は出来ない。
うーん悩みが尽きない。俺はどうしたらいい?
だがもちろん今はそんな時ではない。
ハニードロップを持ち帰るのが先決。
そうすれば運転手からアイテムと引き換えに流浪の民の居場所を聞き出せる。

ただ一つ引っかかることがある。
ハニードロップは果たしてバニードロップなのかどうか?
その違いは何なのかさえも分からない。
仮にこのまま持って行っても価値の分からぬ者にはただのはちみつ味の飴。
これではないと突き返され取引が反故に。
そうなれば盛大な時間の無駄遣いに。

ならばこのハニードロップを支配者に献上するか? お返しはかなり期待できる。
そこでアンたちの居場所を聞き出せば…… いや無理か。
冷静に考えれば支配者様が放浪の民を知ってるはずがない。
やはりあのおじさんに頼るしかない。
さあまだ取引まで時間がある。とりあえず調べてみるか。

翌日。
「ふあーあ…… おはよう。もう明日ね」
「ああそれまでに解明できるといいんだけどね…… 」
昨日は二人でツリーハウスに寝泊まりした。
どうも狙われてる気が…… 宿屋でしかも何人もと一緒には寝てられない。
誰かが俺たちの動きを監視してる。
思い過ごしだろうけれどハニードロップの価値を知れば誰しも狙ってくる。
たとえあの人のよさそうなおじさんでも。豹変しないとも限らない。
取り扱いは厳重に。慎重にも慎重に行動すべきだろう。
まったく何てものを持ち運んでるんだろうか俺たち?

「それより女体化はどう? 」
「ああ一日できれいさっぱり」
眠るまでエクセルには付き添ってもらった。
彼女がかなり眠そうにしてるのはずっと見てくれていた証拠。
これほど一生懸命なのは初めてじゃないかな。
まさか俺のこと研究対象だとか思ってないよな?
そう…… 俺も怖いんだ。自分の体がどうかなってしまう気がしてならない。
一番はもう二度とシンの実を口にしないこと。
ただいくら気をつけていても間違って混ざれば防ぎようがない。
そこには悪意が見え隠れする。
旅を続けるにはシンの実の存在が邪魔になるだろう。

「そう。昨日のあなたは変だった。まさか目的を忘れてないでしょうね? 」
エクセルは俺の心変わりは本物だと思ってるらしい。だが俺にはアンしかいない。
もしかしたら熱に浮かされ戯言をほざいていたかもしれない。
でもそれはあくまでシンの実の影響から来るもの。
俺にはやはりアンしかいない。
幼馴染で将来を約束したアン。俺は彼女に告白するんだ。
ついでに村人も。これは村長代理のダスケとの約束でもある。
だから彼女に告白をしてついでに村の民を連れ戻す。
それがミッション。
誘惑に負けてたまるものか。

「聞いてるの? 」
「ああ分かってるって。だがその為にもバニードロップの謎を調べるんだろ。
誰か詳しい奴は居ないかな? 」
俺にはこれ以上は無理。やはりこの世界を知り尽くしたエクセルが適任だろう。
「だったら神父さんにもう一度会ってみましょう。
それから図書館を当たるといいわ」
「神父? 牧師じゃないのか? 」
「どっちでもいいから懺悔するの! 」
エクセルはその辺は適当なんだよな。モンスター側だからな。
俺だって知らないけれど。
まずはエクセルの言うように神父の元へ。


                  続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...