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禁断の果実

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現在バニードロップがどこにあるのかは不明。
代わりにハニードロップ探しをすることに。
雲の上を目指し果てしない登山の旅開始。
もちろん当てもなくただ歩いてるのではない。
エクセルが言うにはハチの巣を探してるのだとか。
ただ闇雲に探していてはあっと言う間に日暮れ。
三日の猶予はないにも等しい。
ならどうするかと言えば専門家に尋ねるか地元の者に頼るかぐらい。

慣れない登山ですぐに疲れが。もう俺もダメかな。
あれ……
下山客とすれ違う。
登山ではすれ違ったら挨拶すると言う決まりがある。
ただ俺は口下手だからエクセルに任せている。

「どうも…… 」
挨拶をするフリをして攻撃を仕掛ける極悪モンスター。
「うわわわ…… 何をしやがる! 」
「ほら気をつけて! いつも通りやれば問題ない」
さっそくワードフォルダーから適当なカードを取り出し投げる。
ぎゃああ!
悪さをするモンスターにはお仕置き。
こうしてモンスター消滅。
一撃で倒せるので爽快な気分になれる。
ついでに万能感にも浸れるので止められない。

偽装登山客モンスターは「ぶっ飛ばすぞ! 」のカードを隠し持っていた。
「俺これいらないんだけどな…… 」
アイテムは選択できるがこの世界では暴言カードは拒否も処分も出来ない。
「ほら文句言ってないでフォルダーに収める! 」
フォルダーをバックに戻して完了。

「さあ行きましょう」
挨拶するのも一苦労。
これでまだ続けるんだからよくやるよエクセルも。
「なあ本当にこっちでいいのか? 」
「大丈夫。おそらくこの辺りにハチの巣があると思うの。
巨大なハチの巣のあるところが目的地」
「ちょっと待ってくれよ…… 」
自分ばかり先に行く。
妖精は飛べるから疲れることもない。
だが俺は普通の人間。歩けば歩くほど足がどうにかなりそうだ。
まったく少しは気にしてくれよな。

「エクセル待ってくれよ! 」
駄目だ。地図に夢中で周りが見えてない。特に後方が疎かに。
勝手にこっちと言って先に行ってしまう。
もう限界。疲れたよ。足が動かない。
ああ何か飲み物でもあれば少しは回復するのだが。いや食い物だって構わない。
疲れたから食べやすいものがいい。

あれは……
木もないのに果物の実が落ちている。
これは危険? いや神の思し召しだろう。ありがたく頂くとしよう。
「どうしたの早く来てよね! 」
エクセルは本当に薄情なんだから。もうお腹空いたから勝手に休憩っと。

赤にピンクが混じった丸い果実。
見た目は桃に近いかな。
でも大きさは小ぶり。
甘い香りがする。ここは思い切って一口食ってみる。
うんちょっとだけ甘い。でもほぼ味がない。
サラサラした食感。種の周りにうまみが凝縮しているのが分かる。
ついでに種もかじってみる。
ワイルドだろ? うん甘いのは最初だけで苦味が口全体に広がる。
見たこともない変わった果物。
食えないこともないが種はやはり吐き捨てるのがいい。
でもやっぱり食べちゃおう。
まあ腹が減ってれば何でもいいさ。

「ちょっと! 」
血相を変えて走って来たエクセル。
「ははは…… 残念でしたもうないよ」
もう一個あればエクセルにやろうと思っていたが見回しても何もない。
草ばっかり。嫌になるぐらいの緑。
「馬鹿! 何やってるのよ? ほら早く吐き出しなさい! 」
「いくら何でもそれはないだろう? 食いたいなら新しいのを探せっての」
当然のことなんだけどな。それでもなぜか怒りの収まらないエクセル。
「それは食べてはいけないものなのよ」
「いや美味かったよ。毒はないと思うぞ」
遅効性なら危険だが一応は舌で確認した。
だから毒性はないはず。これも村の植物博士に教わったから自信がある。

「あのねえ…… 早く吐き出しなさい! 毒でなくてもあなたの体には影響あるの」
禁断の実を食べたらしい。
「ほら吐き出しなさい! 早く! 」
「触るな! もう食っちまったよ。もう遅いのさ」
「嘘でしょう? ああ何てことなの? 」
そのまま崩れ落ちる妖精。飛ぶ力も残ってないかのよう。
そこまでされるとかなり酷い仕打ちをした気がしてくる。

「おいこれは一体なんだ? 」
「もういい。このことは忘れて! 」
エクセルは答えようとはしない。
「だからこれは一体何なんだよ? 」
「知りたい? 」
「ああ早く教えろ! 」

「そう。これはねシンの実と言って己の欲望を解放してしまう恐ろしい果実。
これを食べたらいつ正常に戻るか分からない。
元の人間に戻ることは二度とないかもしれない。それだけ恐ろしいもの。
それを勝手に食べて…… でも種さえ食べなければ重症化しない。
もうそれに賭けるしかない」
諦め気味のエクセル。
「へへへ…… どうだったかな…… 」
僅かな希望も種まで美味しく頂いたのだからもう手遅れ。

                 続く
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