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地図は必需品

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昨日行きそびれたレストランに向かう。
エンゼルカードがあるので好きなだけ頼める。
この店で一番高い品を頼むことだって可能。
もちろん俺はそんな酷い人間じゃないからエクセルを困らせはしない。
エクセルに任せればいいさ。案内役だけあって有能。体と健康を考え選んでくれる。

うぐぐ…… くっそ硬いな!
「ちょっとこれ焼き過ぎだよ! 」
文句を言うと慌ててシェフが飛んできた。
うんいい気分だ。俺は偉いんだぞ。
「それからこのシチューは熱すぎる。急いで食べたらやけどするじゃないか! 」
「申し訳ありません。誠に申し訳ありません」
お客の言うことを何でも素直に受け入れてくれるシェフ。
「それから…… 」
どこからか警報音が鳴る。
まずいこれは抑えなければ警告を受ける。
残り時間を考えればここで退場できない。
そもそも俺は主人公なんだからさ。頼むよ。
「ありがとう。味はまあまあだったよ。また頼むよ」
どうにか褒めてかわす。
これも相当なテクニックだろう。

やり取りを横で涼しそうに眺める妖精。
意外にも大飯ぐらいでライスのお替りまでする。
こんな妖精は見たことがない。
口元を拭きさっそうとレストランを歩く。
妖精なんだから飛べばいいのだがどうも人間の真似をしたがるお年頃。
もう二百歳だけどね。

「ほらこっちに! 」
飯を終え一休みしてるところで呼びつけられる。
人使いの荒い妖精さんだこと。
まあこれくらいどってことはないけどさ。
怒らないぞ。こんなことで怒っては警告を受けることになる。
そうなれば今のような豪華な食事にありつけない。
贅沢三昧が出来なくなる。
あれ? 当初の目的を忘れつつある。
何で俺はこんなところに? そうだ思い出したぞ。
アンに愛の告白をする。そして村人を連れ戻す。
これが俺の最終目標。
その為には流浪の民を見つけ出す。
見つけるにはバニードロップを探すしかない。

「ほらボケっとしない! 」
エクセルの後について行くことに。
レストランの地下に一軒のお店が。
お洒落な外観から期待が持てる。
俺たちの目を惹きつける何かがここにはある。
そうだろエクセル?

「いらっしゃい」
ひげを生やした年齢不詳の痩せ男。
うわあ…… 雰囲気ぶち壊し。
またしてもお洒落なバーはお預けらしい。
「あのすみません。地図ありますか? 」
エクセルはここで地図をゲットするつもりらしい。
「ああ好きに選んでね」
そう言うと席を外してしまった。

「よしエクセル! 今のうちに金になりそうなものを。へへへ…… 」
もう何の反応もしてくれなくなった。
疲れたのだろう。まあ俺も動くのがやっと。
冗談も通用しなくなった妖精さん。
話も聞かず目もくれず黙々と作業に。

「これは? 」
「この辺りの地図。でも安いといい加減だから気をつけて。
地図は一番高いのを選ぶべきよ」
エクセルのアドバイスは為になる。
だが高級なのには一つだけ欠点がある。
大きいのだ。さすがに持ち運ぶのだからもう少し体に合ったものがいい。
ほらやっぱり。
物凄いデカいのがある。どうやって持てと言うのだろう?
一人では絶対に無理。
まあ想定してないだろうが。
これはたぶん貼って見るタイプ。
いくら細かくて精巧でも持ち運びが出来なければただの紙切れ。
俺たちは地図マニアじゃない。

エクセルは妖精用虫眼鏡で細かく見て行く。
三十分が経ち店主が姿を見せた時に何を思ったのか大声を出す。
「これください! 」
中ぐらいのバックに丸めれば入るかなと言う大きさの地図を購入。
「それとこれも」
店主は苦笑い。
「重いだろう? 」
呆れる店主。まさかこれを俺が? 冗談じゃない!
アンに会う前に朽ち果てるわ。

「これを空間屋に」
「ああそうか。君は賢いね」
店主に褒められる。満更でもない様子のエクセル。
もしかしてこの妖精さんは褒められるのに弱い?
だったら俺も真似して…… 出来るかそんな痒いこと!
どうせ褒めたって不機嫌に『別に』と返されるだけ。

エンゼルカードでお支払い。
見てはいないが相当な金額だろう。
まあ自分を守る為のものだからこれくらいは当然か。
常にそう思えるぐらいお金に困ってなければいいのだが。

「さあ行こう! 」
この後は寝るだけ。
ああ疲れたな。
「ああちょっと君たち。これはブラックマップと言って夜にでも見える優れもの。
いちいち照らさなくていい。サービスだよ」
三つもいらないんですけど。まあいいか。荷物がかさばるのはいつものこと。

ではそろそろ寝るとしよう。
ツリーハウスでは風邪を引くので宿屋で一泊。

                  続く
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