『第一村人』殺人事件

二廻歩

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二姫の策略

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三貴だけは三貴だけは巻き込むわけにはいかない。

たとえ最後の消失に協力してもらうとしてもそれはそれだ。

これから起きるであろう一連の消失事件。即ち殺人事件。

三姉妹の中で唯一まともで心優しい三貴。

三貴に詳細は伏せている。仮に捕まっても三貴に捜査の手が及ばなければいい。

「素直でいい。さあ大人しくしてね」

「いいでしょう。これはあなたにお渡しします」

ナイフを投げ捨てる。

「おおっとすみません二姫お嬢様」

「ふふふ…… それくらいじゃないと張り合いがないわ」

二姫は飛んできたナイフを拾い上げる。

「本当に信じていいのでしょうか? 」

「当たり前でしょう。これは私の計画でもあるんだから。

お前は次のターゲットのことでも考えてな。決して刃向おうとしないこと。

ナイフはこうやって使うの」

二姫は右手でもう片方の腕を刺す。

「うわああ」

「うるさい静かに」

血がどんどん滴れ落ちていく。

折角の儀式用の服が赤黒く染まる。

ついさっき犯人とターゲットだった二人の関係がいつの間にか犯人と脅迫者になり。

ついには協力者の関係にまでなった。

最終的には逃亡者と脅迫者の関係になる。

そんな日も遠くはない。

不思議なものだ。ガラガラと崩れていく日常。

自分の共犯と言えば三貴だが彼女にも告白すべきだろうか。

すべての計画が白紙に戻ってしまった。

二姫は協力すると言ったがどこまで信用していいやら。


二姫は急いで事前に用意していたであろう新たな衣を儀式の間に置く。

わざと証拠を残す。

そしてナイフについた血を拭き戻す。

続いて水辺へ移動。仕方なくついて行くことに。

これではいつもの人使いの荒い二姫様そのもの。

自分は一生下僕のままなのかもしれない。

ポトポトこぼれる血を水辺にばらまく。

もはや何が何だから良く分からない。

ボーっといかれた女の狂気を目の当たりにする。

「いい言う通りにするのよ」

命令通りに動くのは慣れている。

船に乗せ荷物と共に二姫を覆い隠す。

警戒されることなく通過。

二姫を残し船を離れる。

儀式の完了を報告。

うまくいった。後は逃がすのみ。


翌晩。

コウ。コウ。

すべてを済まして船に戻る。

「二姫様お静かに。誰かに見つかってはことです。慎重にお願いします」

「いつまで私を待たせるつもり? 」

「こちらにも計画が…… 抜けられない事情もありまして」

闇に紛れて東の館へ。

「もう殺してしまったの? 」

「ええ。後始末が残っていますが問題ありません。ゆっくり処理します」


東の館。

闇夜に逃れ姿を消し、見張りが離れるのを待つ。

昨日とまったく同じ動き。

このまま十分は戻ってこないはず。何度も何度も確認したので間違いない。

完全に見張りが姿を消したのを見計らい二姫を連れ館の中へ。

「ふふふ…… これで完全犯罪の成立ね。

余計なことは言わないで。他言無用よ。いいわねコウ? 」

念を押されなくてもそれくらい心得ている。

三貴を人質に取られているようなもの。従わざるを得ない。

さっそく行動開始。

サライちゃんを動かす。

簡単に動かせるようにそのままにしていた。

隠し穴へ。

秘密の抜け道を這う。

アリバイトリックのためとは言え二姫お嬢様ともあろう者が夜中に薄暗い穴を這う。

あってはならない下品な振る舞い。


秘密のトンネルを抜けるとそこは西湖村でした。

「緊張する。コウ付いてきてる? サポートするのよ。狭い穴に入るなんて初めて。

まさか自分自身がこの抜け道を使うなんて夢にも思わなかった」

二姫は完全に自分を信じている。この隙に…… いや不可能か。

果たしてこのままこの女を逃していいのか?

言われるまま行動する自分が情けなくなる。

「コウ。おかしな考えを持つのは止めなさい。言ったでしょう?

私の従順な下僕が黙っていないわ。お前も三貴も捕まるわよ。絶対ダメ。

下僕は私の帰りを今か今かと待ち望んでいるのよ。

お前に選択肢などある訳がない。常に保険は掛けておくものよ」

ここまで来て裏切るつもりなど毛頭ない。しかし困らせてやるのは悪くない。

だが三貴を持ち出されると動きが鈍る。

「言われなくても心得ています二姫お嬢様。それでこの後は? 」

「ここでお別れ。私は下僕のところで事件が収まるのを、嵐が過ぎ去るのを待つわ。

大丈夫心配しないで。頃合いを見計らって奇跡の生還を演じて見せるわ」

自信満々の二姫。

確かにここを抜ければもう危険はない。

「分かりました。ではとっとと行ってください」

    
                   続く


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